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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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次の大統領は私腹を増やし国を滅ぼすか?

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 日々、その表情を変えながら、ダイナミックに成長し続けるアジア。突っ込んだ取材をしているからこそ、注目を集めるニュースの裏に隠れた独特なお国柄が見えてくる。人々の熱い息づかいを、歴史的に抱えている背景を、現地の事情に通じた海外駐在記者が、一歩踏み込んだ視点でわかりやすく伝える。
 
 高い経済成長を謳歌するフィリピンには、かつて政治の混乱により経済が停滞し「アジアの病人」といわれた時期があった。1986年にマルコス長期独裁政権から民主化を果たしてから現在のアキノ大統領就任までの20年あまり。周辺国に追い抜かれ続けた「暗黒の時代」に、逆戻りするのではという懸念が広がっている。フィリピン大統領は任期6年で再選できないため、成長をけん引するアキノ大統領は2016年5月の大統領選挙で退任せざるを得ないからだ。
 
 「ビナイ副大統領が次の大統領になったら、この国の経済はもうダメだ」。日本人駐在員の間で、こんな囁きが漏れる。
 
 アキノ大統領は2010年の就任以降、汚職撲滅を掲げて財政を再建。日本を含む外国の投資を呼び込んだ。ところが、次期大統領候補の世論調査で最近までトップを走り続けてきたビナイ副大統領は野党側。フィリピンは大統領が閣僚交代など強大な権限を握るため、仮に次期大統領が閣僚らを一新すれば、これまで築いた成果は水の泡となりかねない。
 
 こんな意見は有権者にも根強い。「ストップ・ビナイ」。1990年代に人気を集めた歌手のジム・パレデスさんは6月10日、ビジネス街のマカティ市でこんなデモを起こした。
 
 マカティ市は、かつてビナイ副大統領が市長を経験し、現在も息子が市長を務める。この親子に、市庁舎建設費の水増しなどの汚職へ関与した疑惑が浮上。裁判所は5月に副大統領一家の資産6億ペソ(約16億円)を凍結した。
 
 ビナイ副大統領はマニラの貧しい家庭に育ち、苦学して最高学府のフィリピン大学を卒業した。人権派弁護士として活躍しコラソン・アキノ大統領も支えたが、評判は必ずしも芳しくない。2010年の副大統領選挙で当選する前、マカティ市長時代はマンション建設許可の権限を握り、「すべてのマンションには一室、ビナイ氏の部屋がある」との噂もあるほどだ。
 
 ただ、貧民層出身で苦学して上り詰めたというイメージが共感を呼び、疑惑まみれでも高い支持率を得ている。

 フィリピンでは、過去の大統領を見ると、直前の政権で副大統領を経験した人が目立つ。「大統領ほど激務でないため、地方に足を運んで票を集めやすい。いま選挙すればビナイの圧勝だよ」と、地元紙のベテラン記者は解説する。

             大統領                副大統領
  1986~92年 コラソン・アキノ           サルバドル・ラウエル
  1992~98年 フィデル・ラモス           ジョセフ・エストラダ
  1998~01年 ジョセフ・エストラダ(途中辞任) グロリア・アロヨ
  2001~10年 グロリア・アロヨ           テオフィスト・ギンゴナ
                               ノリ・デ・カストロ
  2010~16年 ベニグノ・アキノ           ジェジョマル・ビナイ
 *アロヨは、エストラダ大統領退陣に伴い副大統領から昇格。2004年大統領に当選。
 
 特に、都市部との格差が広がるなか、地方の住民はアキノ政権の成長という恩恵を受けづらい。アキノ派以外の政治家が人気を得やすくなっている。
 
 選挙まで1年を切り、アキノ陣営は地方のこうした状況に業を煮やす。アキノ政権は汚職撲滅を掲げ、外国人投資家のフィリピンへのイメージを変えた。2013年には、大手格付け会社が比国債を投資適格に引き上げるという「念願」もかなった。
 
 ただ、国民全体が豊かさを享受するには至っていない。政権中枢はこう考える。改革を継続して成長を維持しなければ都市との格差を縮めるのは難しい。まして、改革が後退して「投資しやすい」イメージが失われれば元も子もない。
 
 6月に訪日したアキノ大統領は、「現政権の経済改革により国民は成長を実感している。多くの国民は改革の継続を望んでいる」と自信を見せた。次期大統領選では「継続を第一に掲げる」と強調した。
 
 アキノ大統領が所属する自由党で後継者の最有力と目されるのは、同党首のロハス内務自治相だ。終戦直後の元大統領を祖父に持つ政治エリートで、前回大統領選にも出馬を取り沙汰されたが、アキノ大統領が母コラソン・アキノ氏の死後に出馬を決めたため道を譲った。「アキノ大統領はロハス氏に借りがある」とみられる。
 
 ところが、ロハス氏の人気はいまひとつ。それでも、自由党内に他の有力候補が見当たらない。大統領選は直接選挙だから、人気がものを言う。
 
 最近、アキノ大統領がしきりに秋波を送るのが、無所属のグレース・ポー上院議員だ。孤児から人気俳優の養女となり、米ボストン・カレッジを卒業。ルックスの良さもあって人気は高く、最新の世論調査でビナイ副大統領を抜いて1位になった。
 
 アキノ大統領は5月と6月、立て続けにポー上院議員と会った。会談の中身は不明だが、地元メディアでは、アキノ大統領がポー氏の自由党入党や副大統領選への出馬を要請をしたなどの説や、ポー氏が「無所属で大統領選に出たい」と相談したという観測が浮かんでいる。いずれにせよ、アキノ大統領が「ポー人気」を利用したいと考えているのは確かなようだ。
 
 大統領選は10月にも候補が出そろい、事実上の選挙戦がスタートする。アキノ路線を引き継ぐ候補が当選すれば、高い成長を維持できるだろうという読みが多い。
 
 アジア太平洋大学のベルナルド・ビリエガス教授は「だれが大統領になっても民間主導で6~7%の成長を持続できる。インフラ整備を加速すれば10%成長も可能だ」と楽観的な見方を示す。フィリピンの成長は、年3兆円を超える海外出稼ぎ労働者の送金が個人消費を活性化して支える。政治が機能不全に陥っても経済への打撃は少なく、うまく政治が回れば成長が一段と高まるとの見立てだ。
 
 とはいえ、世論には「反対勢力が大統領に就けば『暗黒の時代』に逆戻りする」との懸念がくすぶる。次期大統領選が成長を引き継ぐ一里塚となるか、それとも「病人」に逆戻りする契機となるか。今後のフィリピン経済に重要な意味を持つことは間違いない。
 
 マルコス政権が続いていたら、もっと経済成長していただろう――。こう話すフィリピン人に会ったことが何度かある。マルコス大統領は、長期独裁政権を敷いて1986年の民主革命に倒れた。有権者は独裁を許さなかったが、シンガポールやマレーシアなど強力なリーダーシップで成長をなし遂げた国には置いていかれた。フィリピンの民主化が残したものは、皮肉にも経済の停滞だった。独裁を教訓に大統領の再選を禁じたことが、結果として政策を継続できない一因になったとの見方も根強い。
 
 ようやく成長軌道に乗ったいま。たしかにベルナルド・ビリエガス教授が指摘したように、よほど無理な政策を打ち出す大統領でなければ、成長の持続は可能かもしれない。だが、問題となるのは日本企業をはじめ外資の動向だ。過去のように賄賂を頻繁に要求されば、海外企業は進出をためらう。
 

 年2%という高いペースの人口増加や、深刻な格差の問題を考えれば、積極的な外資受け入れにより産業と雇用を創出する政策は欠かせない。その点で、汚職を撲滅して投資を促して成長につなげたアキノ大統領の功績は大きい。次期大統領には、ようやく回り始めた時計の針を元に戻さない強い指導力が求められる。(日経新聞等より)





 フィリピン経済がやっと好調になってきている。これを維持しないとまた「アジアの病人」になりかねない。地方まで発展させるのはこれからなので、成長を継続させられる人を大統領に選んで欲しいものだが、この国の大統領選挙は人気投票なのでどうなるか解らない。












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