フィリピン中央銀行(BSP)は、2014年第2四半期(14年6月末)及び、上半期(1~6月)の国際総合収支(BOP)を発表した。
フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)からの送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、景気の押し上げ要因となっている。また、フィリピン格付引き上げラッシュの大きな要素ともなってきた。
[2014年第2四半期]
2014年第2四半期の経常収支の黒字額は、前年同期比41.5%増の31億2,200万米ドルに拡大した。経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は3.7%、4.4%で、 ともに前年同期の2.7%、3.2%を上回った。海外フィリピン人就労者(OFW)送金など第二次所得収支の堅調な成長と、貿易収支赤字削減の相乗効果が経常収支の黒字を継続させた。 OFWの送金は5.9%増の65億8,900万米ドルであった。
[2014年上半期]
2014年上半期の経常収支の黒字額は、前年同期比10.3%減の39億1,800万米ドルに縮小した。経常収支黒字額対GNI比、対GDP比は2.4%、2.9%で、 ともに前年同期の2.7%、3.3%を下回った。OFWの送金は6.2%増の126億7,400万米ドルであった。
一方、国際総合収支は、41億4,400万米ドルの赤字に転落(前年同期25億7,700万米ドルの黒字)。新統計表示ではマイナス勘定となる金融収支が46億0,700万米ドルと前年同期から6.5倍に膨らみ、経常収支の39億1,800万米ドルの黒字を大きく上回ったことによる。
世界経済成長は、日米など先進諸国の景気回復が順調なペースで進んでいるが、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融緩和縮小などにより、金融市場の不安定さが増し、新興市場資産に対するリスク選好度が低下。フィリピンへの資本流入にも悪影響を与えた。その結果、第2四半期末の外貨準備高(GIR)は807億米ドル。2013年12月末の832億米ドルを3%下回った。これは輸入の11カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期対外負債の約8.4倍、残存ベース短期対外負債の6倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
中央銀行は、国際総合収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。
ただし中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、9月22日に発表された2014年8月及び年初8カ月間の速報値。それによると、8月は1億1,400万米ドルの黒字、年初8カ月間は35億3,000万米ドルの赤字であった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期ベースである。
[対外収支の長期的な動き]
国際総合収支は、2005年以降黒字が定着、2010年に143億800万米ドル、対GNI比5.4%、対GDP比7.2%という史上最高の黒字を計上した。 貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンが定着している。経常収支は2003年から11年連続の黒字となっている。長期的かつ継続的な統計が入手不可能であるが、手許数値比較では2013年の経常収支黒字は史上最高水準となっている。(フィリピン中央銀行発表等より)
フィリピンは、貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するという構造が定着している。これからは海外から投資を呼び込み、自国の産業を成長させ、1億人を超した自国民の生活基盤が整えて行く政策が必要だ。