常石造船(広島県福山市)が、内航船の建造を計画している。現在はフィリピン法人のあるセブ島周辺で、第2造船所として候補地を調査しており、来年前半をめどに事業化の最終判断を行う。7,000以上の島が点在するフィリピンの内航船は中古船が主体。加えて、人口が1億人を超え増加率も高いことから、国内輸送の需要を取り込むのが狙いだ。フィリピンに次ぐ東南アジア域内拠点の開設も別途、検討しているようだ。
常石造船の河野健二専務が、構想を明らかにした。現時点では事業化調査(FS)などは行っていないが、「来年前半までには事業化するかの判断をして、2016~17年には内航船を建造したい」と話した。20億円規模の投資を想定しているが、まだ検討中の段階。「市場調査を行い、ニーズがあるか確認する」と述べた。
候補地としては、セブ州バランバンに置く現地法人、ツネイシ・ヘビー・インダストリー・セブ(THI)の近くに置くのが現実的という。具体的にはネグロス島やボホール島といったセブ島周辺のを想定している。フィリピンでは今後、人口ボーナスが続き、現在の約1億人から2050年には1億5,000万人に達する見通し。燃料や食料品など日用品の需要拡大も見込まれる。
常石造船は主に大型ばら積み船の建造に従事。ただ、フェリーを含む小型船のノウハウを現在は持っていないことから、今後は人材育成や開発ノウハウが求められる。
フィリピンでは内航船の座礁や沈没事故が頻発。今月に入っても、13日にミンダナオ島の沖合でフェリーが沈没し8人が死亡。14日はマニラ湾近くで貨物船が沈没した。内航船の多くが中古船に頼っている現状から、海運業界では安全性の確保が求められている。
常石造船は東南アジア諸国での旺盛な需要から、フィリピンに次ぐ域内拠点開設も検討している。河野専務は「ミャンマーかベトナムなどが候補地として考え得る」とコメント。地場企業との合弁で造船所または修理ドッグの建設を検討していることを明らかにした。
同社は現在、日本以外ではフィリピンのほか中国などで造船事業を展開。中国では合弁相手と運営で問題が生じたことから、独資で事業を展開している。
常石造船はフィリピンでこれまで約600億円を投資。1994年の設立から20年間で6,000億円以上の累計売上高となっている。今年は計21隻のばら積み船を建造する予定で、年末までに累計建造数は193隻に達する見込みだ。(NNA等より)
常石造船のフィリピンの製造子会社、ツネイシ・ヘビー・インダストリーズ(セブ島バランバン、THI)が、9月末で設立20周年を迎える。中国や韓国との競争が激しい造船業界の中で、常石は汎用(はんよう)船の製造拠点を海外に置くことで生き残りを図る戦略を取っている。当初はコスト削減を狙って進出したが、工場従業員を多数育成した結果、人手不足が深刻化する日本国内の工場への人材供給基地にまで成長しているようだ。