内閣府は29日、自宅に半年以上閉じこもっている「ひきこもり」の40~64歳が、全国で推計61万3千人いるとの調査結果を発表した。7割以上が男性で、ひきこもりの期間は7年以上が半数を占めた。15~39歳の推計54万1千人を上回り、ひきこもりの高齢化、長期化が鮮明になった。中高年層を対象にしたひきこもりの調査は初めて。
内閣府はひきこもりを、自室や家からほとんど出ない状態に加え、趣味の用事や近所のコンビニ以外に外出しない状態が6カ月以上続く場合と定義している。専業主婦・主夫は過去の同種調査では含めなかったが、今回は家族以外との接触が少ない人はひきこもりに含めた。
調査は2018年12月、全国で無作為に抽出した40~64歳の男女5,000人に訪問で実施。3,248人(65%)から回答を得た。結果に人口データを掛け合わせ、全体の人数を推計した。
ひきこもりに該当したのは回答者の1.45%。ひきこもりになった年齢は「60~64歳」が17%で最も多かった。きっかけも「退職」が最多で、「人間関係」や「病気」が続いた。
ひきこもり期間を11の選択肢を用意して尋ねたところ最多は「3~5年」で21%。7年以上となる人が合計で約5割を占め、「30年以上」も6%いた。初めてひきこもりになった年齢は20~24歳(13%)から60~64歳(17%)まで年齢層に大きな偏りはなかった。
子供の頃からひきこもりの状態が続いているケースに加え、定年退職をきっかけに社会との接点を失ったケースがあることがうかがえる。内閣府の担当者は「従来の若者のひきこもりを対象にした支援策とは違った支援の仕方が必要だ」と指摘している。
普段自宅で何をしているかの設問では「テレビを見る」や「インターネット」などの回答が、ひきこもりでない人より少なかった。悩み事の相談相手を尋ねた設問では「誰にも相談しない」という回答が4割を超えた。
調査時期の違いなどはあるものの、内閣府では15~39歳も合わせた引きこもりの総数は100万人を超えるとみている。
内閣府は従来、ひきこもりを若者特有の現象とみて39歳までを調査対象にしていた。今回初めて中高年層を調査したことについて、内閣府の担当者は「40歳以上にもひきこもりがいると国が公認することで、支援が必要なのは若者だけでないという認識を広げたい」と話している。(日経新聞等より)
ひきこもりは青少年・若年期の問題と考えられていたが、その長期化・高年齢化が課題となる状況が浮き彫りとなった。単純比較はできないが、その結果に基づく推計数は、若年層を上回っており、60歳以上の人でもひきこもりになるのだと、ショックを受けた。
中高年のひきこもりが社会問題化してこなかったのは、国による調査がなされなかった影響が大きい。全国の自治体や研究者から、ひきこもりの半数が40歳以上という調査結果が次々と出ていたにもかかわらず、国は放置してきた結果だと思う。
こうした国の姿勢は「ひきこもりは青少年の問題」という先入観を広げることにもつながったと思われその責任は重い。
今回の調査をきっかけに、中高年の当事者のニーズを丁寧にくみ取った就労支援に加え、当事者や経験者らが集まって緩やかに経験を共有できる居場所を全国だけでなく、海外滞在を含めてつくることが必要だ。
もしかしたら、フィリピンを含めた発展途上国では、自分を取り戻せる何かを掴めるかも知れないですね。