2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定(※後述)を前に、2017年(1~12月)の「医療、福祉事業」の倒産件数は250件にのぼり、介護保険法が施行された2000年以降で最多になった。調査対象の「医療、福祉事業」には、病院、医院、マッサージ業や鍼灸院などの療術業、老人福祉・介護事業などを含む。
このうち、業種別で最も多かったのが「老人福祉・介護事業」の111件で、件数を押し上げた。
また、「医療、福祉事業」の負債総額も2年連続で前年を上回ったが、全体では負債1億円未満の小・零細規模が8割超を占めるなど、小規模倒産が目立った。
高齢化社会の成長産業として注目される医療福祉業界だが、介護職員の人手不足が深刻化するなど、経営のかじ取りが難しさを増し、業界内では淘汰の動きが加速している。
2017年の「医療、福祉事業」倒産件数は、250件(前年比10.6%増、前年226件)に達し、6年連続で前年を上回るともに介護保険法が施行された2000年以降で最多になった。
2017年の負債総額は364億100万円(前年比18.7%増、前年306億4,500万円)になり2年連続で前年を上回った。
内訳では、負債10億円以上の大型倒産は9件(前年7件)と前年を上回ったが、倒産全体では負債1億円未満が212件(構成比84.8%)と8割を占め、前年比で18.4%増(前年179件)と小規模倒産が増勢をみせた。
業種別では、最多が「老人福祉・介護事業」の111件(前年比2.7%増、前年108件)で、介護保険法が施行された2000年以降で最多件数になった。
次いで、マッサージ業、整体院、整骨院、鍼灸院などを含む「療術業」が68件(同17.2%増、同58件)、「病院・医院」が27件(同12.9%減、同31件)、「障害者福祉事業」が23件(同109.0%増、同11件)など。
業種別で最多だった「老人福祉・介護事業」の内訳では、「訪問介護事業」の45件(前年48件)を筆頭にして、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が44件(同38件)、サービス付き高齢者住宅などを含む「その他の老人福祉・介護事業」が9件(同6件)、「有料老人ホーム」が6件(同11件)などだった。
「老人福祉・介護事業」倒産の原因別では、最も多かった販売不振(業績不振)が51件(前年比26.0%減、前年69件)と前年を下回ったのに対し、「事業上の失敗」が26件(同44.4%増、同18件)と増勢が目立った。
これは、安易な起業や本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が思惑通りに業績を上げられず経営に行き詰まったケースが多いとみられる。
「老人福祉・介護事業」倒産の地区別では、全国9地区のうち、近畿24件(前年23件)、中部14件(同9件)、北海道7件(同3件)、中国7件(同5件)、北陸4件(同2件)の5地区で前年を上回った。一方、九州12件(同16件)と東北2件(同9件)の2地区で減少し、関東39件(同39件)と四国2件(同2件)が前年同数だった。
医療、福祉事業の原因別では、最多が販売不振(業績不振)の137件(前年比2.1%減、前年140件)で、全体の過半数(構成比54.8%)を占めた。次いで、事業上の失敗が51件(前年比54.5%増、前年33件)、既往のシワ寄せ(赤字累積)が17件(同13.3%増、同15件)の順。
医療、福祉事業の形態別では、事業消滅型の破産が226件(前年比8.6%増、前年208件)と全体の9割(構成比90.4%)を占め、業績不振に陥った事業者の再建が難しいことを反映した。
また、再建型の民事再生法は17件(前年11件)と増加した。この17件の主な内訳では「病院・医院」が6件、「療術業」が5件、「老人福祉・介護事業」が4件など。「病院・医院」の中には、地元では大規模な総合病院を経営していた地方の有力病院もみられた。
医療、福祉事業の地区別では、全国9地区すべてで倒産が発生した。近畿の88件(前年65件)を筆頭にして、関東73件(同72件)、九州26件(同28件)、中部26件(同23件)、中国16件(同8件)、北海道8件(同9件)、北陸5件(同7件)、東北4件(同11件)、四国4件(同3件)の順。
前年より上回ったのは、関東・中部・近畿・中国・四国の5地区。これに対して減少は北海道・東北・北陸・九州の4地区だった。
東京商工リサーチの調査では、全国の医療、福祉事業者1万4,834社の2017年3月期決算は、「増収増益」企業の構成比が33.1%に対し、「減収減益」企業も同29.1%と拮抗した。
さらに、「減益」企業は51.4%と半数を超え、同業との競合や人手不足を補うための人件費上昇が収益悪化につながり、収益確保が難しいことが透けてみえる。
2018年度の診療・介護報酬の同時改定では、診療報酬が医師技術料などの「本体」部分を0.55%引き上げる一方で、「薬価」などの引き下げにより全体ではマイナス1%前後になる見通しになった。また、介護報酬は0.54%の引き上げに決定したが、通所介護での事業規模やサービス提供時間に応じた基本報酬の細分化など「給付適正化」も進められる方向である。
このように医療・福祉関連業界では、淘汰の動きに緩みがないことから、引き続き今後の動向から目を離せない。(Sankei-Biz等より)
日本はどんどんと少子高齢化に向かっているが、その手助けとなる「老人福祉・介護事業」の経営は厳しいようだ。日本の我が家の近くを散策してみると、「老人福祉・介護事業」の建物が知らない間にできており、そこの車も頻繁にみるようになった。
自分の子供への虐待がよくニュースになる日本、外国人を含めた対策を真剣に考えないと行けない時代になってきている。老後も安心できる国として政策を進めて欲しいものだ。