日本では街にはおしゃれなカフェが軒を連ね、老若男女が集う光景が当たり前になった。だが、今どきのコーヒー事情は日進月歩。その最先端は「フォースウエーブコーヒー」と呼ばれるという。一体、どんなものなのだろうか。
2015年に米国から日本初上陸し、東京・清澄白河(江東区)にオープンするや人気を博した「ブルーボトルコーヒー」を代表格とする、「サードウエーブコーヒー」という言葉を聞いたことのある人も多いだろう。フォースウエーブとは、それに次ぐ「第4の波」の意味。当然、その前には第1、第2の波があった。
コーヒーの生産・流通・加工技術が確立され、安価な大量生産のコーヒーが世界中に普及した時代が「ファーストウエーブ」。20世紀初頭にインスタントコーヒーが開発されて以降、大半の時期がこの段階だった。
1990年代になると、「スターバックスコーヒー」をはじめ、香ばしさと苦みを強く出した深煎りコーヒーをミルクやクリームとともに味わう“シアトル系コーヒー”が支持されるようになり、カフェラテやエスプレッソなど、多様な飲み方が広まる。これが「セカンドウエーブ」だ。
そして2010年代には前出の「サードウエーブ」が本格化する。中煎り・浅煎りで、果実のような香りや酸味など、豆本来の持ち味を引き出す志向が強まった。豆の生産国を問うにとどまらず、地域、農場、さらに区画単位と細かく“産地”を絞り込む「シングルオリジン」という概念も出現。その結果、最先端のサードウエーブ店が扱う銘柄には、例えば「ガリードゲイシャ ウォッシュト ママ・カタ エル・アレナル」と、何かの呪文のようなものもある(ちなみにこの銘柄呼称は、頭から生産者名、品種名、精製方法、農場名、区画名を表す)。
サードウエーブの中で、特に品質や食品安全性が高いものは「スペシャルティコーヒー」とも呼ぶ。銘柄ごとに特色があるが、正直、素人目には難解だ。日本のスペシャルティコーヒーブームの火付け役となった「丸山珈琲」(本店・軽井沢)の鈴木樹(みき)・販売企画ディレクターは、こういう時代こそ“プロ”の出番だと説く。「ワインにおけるソムリエのように、バリスタに希望を伝え、それに合ったコーヒーを勧めてもらうのが、一番の方法です」
バリスタとは、コーヒー店員のオシャレな呼び名ではない。本来はコーヒーに関する技術と知識を豊富に持った人材を指す。その名バリスタとして、日本人で初めて世界バリスタチャンピオンシップに出場した横山千尋氏は、昨年あたりから広がってきたという「第4の波」についてこう話す。
「米国や北欧で興隆したサードウエーブには、酸味が強いなど日本人の好みに合わないものも多く、『もっと自分たちにとっておいしいコーヒーがあるはず』という思いが高まりました。そして日本人の優秀な味覚が、独自の『フォースウエーブ』を生んだのです」
フォースウエーブとは、特定の豆や飲み方などを指すわけではない。選択肢が無数に増えた中で、企業や店が提供する味やスタイルをただ“選ぶ”のでなく、人それぞれの尺度で「こういうコーヒーが飲みたい」と主体的に追求する。そういう“ムーブメント”がフォースウエーブだという。
「僕らプロは、お客様とコミュニケーションをしてベストな一杯を出していくけれど、自分が飲みたい味を探した結果、たどりつくのがサードウエーブになることもあるし、納得できるのであれば、それがコンビニコーヒーであってもいいと思います」(横山氏)
コーヒー好きならば、誰しも“こだわりの一杯”があるはずだ。ただ昨今は、根拠のない値付けや、「これがうまい」という情報に惑わされがちだった。フォースウエーブとは、コーヒーを楽しむ本来の姿に帰るということかもしれない。
「お客様がどんなコーヒーを飲みたいか、時には顔色や態度から見いだしていかなければいけないことも。こうした文化がある場所、つまりマスターと客の間にコミュニケーションのある、昔ながらの喫茶店が、今後重要な役割を果たすかもしれません」(同)
上質な一杯を自宅で楽しむための“コーヒー家電”も進化を遂げている。情報サイト「オールアバウト」の家電ガイドでIT・家電ジャーナリストの安蔵(あんぞう)靖志氏に聞いてみた。
「『豆から挽けるコーヒーメーカー』(無印良品)は、全自動タイプながら均一の大きさに豆を挽ける高性能なミルを搭載し人気です。焙煎機『ザ・ロースト』(パナソニック)は、ユーザーに頒布される生豆に対応し、プロ焙煎士による焙煎プログラムがスマホに送られるので、ベストな焙煎ができます。60度から96度まで1度単位で湯温を調節できる電気湯沸かし器『V60温度調整付きパワーケトル・ヴォーノ』(ハリオ)といった製品もあります」
これらにプロのワザを組み合わせれば鬼に金棒だ。前出・鈴木氏に秘訣(ひけつ)を聞いた。もちろん厳密なマニュアル化は難しいが、自分だけの一杯を淹(い)れる参考にしてほしい。
(1)新鮮な豆を使う 豆にも鮮度がある。普段は冷凍し、使う分だけ取り出す。
(2)豆を計量する 味のブレを抑えるため、毎回計量する。丸山珈琲では1杯分を17グラムの豆で淹れている。
(3)湯は2度に分けて注ぐ 挽いた豆に湯が触れると炭酸ガスが出て湯と混ざりにくくなる。初めに少し注いでガスを抜き、その後残りを注ぐ。湯は基本的に、中・浅煎りは沸騰したものでいいが、深煎りは90度前後で淹れると苦みを抑えられる。
(4)抽出時間は正確に (2)と同様。丸山珈琲ではフレンチプレスでの抽出時間を4分と設定している。
理想のコーヒーを追い求める気持ち。プロが淹れた一杯に込められた、おいしいコーヒーを飲んでほしいという気持ち。フォースウエーブは最先端にして、最も人間味あふれるコーヒーなのだ。(サンデー毎日等より)
フィリピンでは40年前でも喫茶店らしき店はあった。ただ、熱いお湯をカップに入れて、インスタントコーヒーの瓶を合わせて持ってくるのが多かった。バコロドでもスタバや韓国系のコーヒー店があり偶に行くが、殆どは家で飲む方が美味しいので家で淹れて飲んでいる。コーヒーは自分の好きなものでゆっくりと嗜みたいものだ。