都内の家電量販店。それはパソコン周辺機器コーナーの一角にひっそりと置かれていた。品ぞろえは1種類のみで税抜き2,790円。気をつけないと見逃してしまう。販売員が「季節柄よく聞かれるが、売り上げは多くない」と話すのが、電子申告に使うカードリーダーだ。
国税庁のアンケートによると、e―Taxを利用しない理由の筆頭は「カードリーダーにお金がかかる」。政府関係者も電子納税の普及を阻む「3千円の壁」と認める。
政府税制調査会は2017年に出した報告書で「税務手続きを行う者の増加や多様化が見込まれる」と指摘した。特定の企業に属さない働き方や副業が広がり、これから確定申告が必要な人は増えるはず。だが、手間をかけずに申告や納税をできるインフラが十分に整っているとは言いがたい。
政府の大きな誤算は2016年に本格導入したマイナンバーだ。12桁の番号をもとに税や社会保障の手続きを簡単にする姿を描いたが、肝心のマイナンバーカードの交付率は1割強にとどまる。都内で働く24歳の会社員は「カードを取得したが使う機会はない。身分証明は運転免許証で十分」。取得のメリットを感じにくいことが普及の壁だ。
政府は次回の2018年分確定申告からマイナンバーカードやカードリーダーがなくても電子申告できるようにするが、申告前に税務署に行ってIDとパスワードを交付してもらう必要がある。政府がマイナンバーカードの取得を促す方針を変えたわけではない。
海外は先を行く。スウェーデンは1947年に個人番号を導入。国税庁が集めた情報を申告書に記入して納税者に送り、簡単なチェックだけで申告が完了する仕組みを1995年に導入した。高い租税負担への理解を得るため、手続きを簡素にしてきた面がある。記入済み申告制度はエストニアなども採用している。
中央大学の森信茂樹教授はマイナンバーの自分専用サイト「マイナポータル」の活用を訴える。「納税者が年金支払額などの情報を入手し、申告書に転記できれば手間が省ける」という。
税務当局は課税逃れや脱税を封じ込めるのに熱心だ。だが、経済のグローバル化やデジタル化で意図せざる「納税難民」が生まれている。政府が率先して納税しやすい環境を整えるのが救う第一歩になる。(日経新聞等より)
日本の役所の処理し易い様式で自己申告しないと還付をしないと言う立場。国民のための立場に立たないものだから普及しないと思う。どうせ税金を使っているのだから、国民がメリットがあると感じる方法を考えろと言いたい。