ANAホールディングス傘下のバニラ・エアなどアジア太平洋の格安航空会社(LCC)8社は、航空連合「バリューアライアンス」を設立すると正式発表した。各社が他の加盟社の航空券も販売し、複数の便を乗り継ぐ旅客を取り込む。個別に成長を追求してきた各社がLCCで世界初の広域連携に乗り出す背景には、急成長する「メガLCC」の存在がある。
「ほかのどのLCC勢力よりも多くの目的地を網羅する」。シンガポールで開いた航空連合の設立式で、シンガポール航空系LCC、スクートのキャンベル・ウィルソン最高経営責任者(CEO)は胸を張った。
セブ・パシフィック航空(フィリピン)やノックエア(タイ)も参加する連合の機材は合計174機。160都市以上に就航し、世界の3分の1の地域をカバーする。
各社は今秋から順次、自社のウェブサイトで加盟社の航空券の販売を始める。加盟社の便を乗り継ぐ航空券の購入が1度でできるようになる。
新たな連合に加盟する各社は低価格を強みに成長を続ける一方、便を乗り継いで目的地に向かう出張客や複数都市を周遊する旅行客の取り込みでは後れを取っていた。
航空各社は原則として本拠地とする国を出発地か到着地とする便しか運航できない。このため「スターアライアンス」などの既存の連合では各国の大手が連携し、各空港での発着時間を調整したり、他の加盟社の座席も販売したりして乗り継ぎ客を取り込んできた。
最近は単独で広域の輸送網を築く「メガLCC」も台頭。乗り継ぎ客も取り込み、他社の脅威となっている。マレーシアのエアアジアはタイやインドネシアでもLCCを設立し、マレーシア発着以外の路線も運航。オーストラリア発祥のジェットスターもベトナムやシンガポール、日本でLCCを設立し、各国を拠点に路線を広げている。
ジェットスターはグループで乗り継ぎしやすい路線や発着時間を協議し、販売を一本化。LCC各社に出資する豪カンタスグループが運航機材を一括調達し、コストも抑制している。グループの保有機材は約120機と大手航空に匹敵する。
バニラなど8社が新たな航空連合を設立したのは、大手やメガLCCがネットワークを武器に旅客を囲い込むことに危機感を強めているためだ。セブ・パシフィックのマイケル・スーチ最高顧問は「我々はそれぞれが自国で強い販売力を持ちつつ、連携相手の販売網を利用して海外で顧客を拡大する」と語った。
新連合の協力範囲は現状では予約・販売に限られる。乗り継ぎで手荷物を積み替え、最終目的地まで預かる「スルーバゲージ」は規制や空港インフラの問題でまだ全面的に導入できないという。
この「バリューアライアンス」には、フィリピンのセブパシフィック航空、韓国のチェジュ航空、タイのノックエアとノックスクート、シンガポールのスクートとタイガーエア・シンガポール、オーストラリアのタイガーエア・オーストラリア、日本のバニラエアが参画している。今後の連携を期待したい。
また、香港エクスプレスと中国の雲南祥鵬航空(ラッキーエア)、ウルムチエア、西部航空(WestAir)の格安航空会社(LCC)4社による世界初のアライアンス「U-FLY」も、バニラエアやスクートなどが結成した世界最大の「バリューアライアンス」の結成を歓迎している。 「U-FLY」は、結成時は67機、就航地が85地点で、「U-FLY」は2020年に200機体制になると見込んでいます。