フィリピンは、2015年も新車販売台数が前年に続いて過去最高を更新した。フィリピン自動車工業会(CAMPI)によると、2015年の新車販売台数は前年比23%増の28万8,609台となり、同工業会の販売目標27万2,000台も達成した。好調な国内経済とメーカーによる新モデルの投入などが要因だ。政府は今年から生産に対する優遇策を開始、今後は自動車産業の育成を本格化させたい考えだ。現地紙ビジネス・ワールドなどが報じた。
2015年の販売内訳は、乗用車が前年比28.9%増の11万6,381台、商用車が同19.2%増の17万2,229台だった。メーカー別のシェア(台数ベース)はトヨタ・モーター・フィリピンズが約40%、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズが約20%と2強を形成、以下、フォード・モーターやいすゞフィリピンズ、ホンダ・カーズ・フィリピンズなどが続いた。
CAMPIのグティエレス会長は「2014年からの勢いを維持し、過去最高を更新することができた」とし、好調な経済を背景に消費者の所得が増加したことや、新モデルの投入が活発だったこと、ローンの好条件が1年間続いたことなどが要因と分析した。
ただし、販売が過去最高を大幅に更新した一方、自動車生産は2015年1~10月で8万3,874台と、タイの160万台、インドネシアの110万台に大きく差を付けられている状況が続いている。フィリピン政府は今後、産業近代化のためにも自動車産業の育成を図りたい考えだ。
同国政府は、部品などの裾野産業を含めた自動車産業の底上げのため、今年から新しい自動車生産の優遇策(CARS)を施行した。CARSは、6年間で各20万台を生産する3車種を対象に、政府が270億ペソ(約670億円)の支援を行う措置で、政府は20万人の新規雇用や国内総生産(GDP)の1.7%押し上げなどの効果も期待している。
CARSによって最低でも年に約10万台の生産が確約されることから、地場部品メーカーなどは需要増や技術向上につながるとみる。フィリピン部品製造者協会(PPMA)の幹部は、生産が2014年の8万8,000台から倍増する可能性があるとし、「外資との合弁や技術移転などの機会も劇的に増える」と述べた。
CAMPIは2016年の販売について、フィリピン経済は好調を維持し、所得の増加傾向も続くとしながらも、為替相場や大統領選挙など流動的な要素もあると指摘。前年比8~10%程度の伸び率になると予想した。
フィリピンの投資委員会(BOI)は、自動車産業振興策の柱となる「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」の申請を今年の1月15日から受け付け始めた。優遇策の適用を希望する自動車メーカーなどは、60日以内に申請書を提出する。
関係省庁(財務省・運輸通信省・科学技術省による委員会、技術教育技能開発庁(TESDA)、産業開発審議会(IDC)、国家競争力評議会(NCC)等)が審査後、6月までに通過企業を決定する予定だ。
フィリピンでは約7万人が自動車部品メーカーで働いているが、この支援額で3車種を対象に6年間で計270億ペソ(約660億円)。貿易産業省はCARSのプログラムによって20万人の雇用創出、12億米ドル(約1,400億円)の投資、92億米ドルの売上高を目指している。
フィリピンの2015年新車自動車販売台数は、フィリピン自動車工業会(CAMPI)の約28万8,609台と非加盟分を含めた総販売台数は32万4,000台になるようだ。