厚生労働省は2019年度にも国民年金の保険料(現在は月額1万5,590円)を月額100円程度引き上げる方針だ。自営業やパートで働く女性が出産する際に産前と産後の保険料を免除する制度を同年度にも導入する財源に充てる。国民年金の保険料は2017年度まで毎年引き上げた後は固定することになっていたが、追加負担が発生することになる。
国民年金は公的年金制度の一つ。会社員らが入る厚生年金の保険料が給与から天引きされるのに対し、加入者が自ら納める必要がある。
安倍晋三政権が掲げる「出生率1.8」の実現に向け、厚労省は国民年金に加入している女性が出産する際に、産前産後の4カ月間は保険料を納めなくても済むようにする方針。所得制限は設けず、年間約20万人が対象になる見込みだ。
厚労省によると、国民年金の加入者(第1号被保険者)は2014年3月時点で1,805万人。近年はパートやアルバイトなど所得の低い女性が増えており、出産で働けなくなる期間の負担軽減が課題になっていた。
厚労省は3月にも通常国会に国民年金法改正案の提出を目指す。制度導入にかかる費用は年間で約100億円になる見通し。この分は国民年金の保険料を月100円程度引き上げて捻出する。厚生年金の会社員や、夫が会社員の専業主婦(国民年金の第3号被保険者)の負担は変わらない。
国民年金には低所得者を対象にした保険料の免除制度がある。免除対象になると保険料を納めない期間も年金加入期間に算入されるものの、年金額は減額される。産前産後の軽減策では、納めなくても将来の年金額が減らないようにする。
会社員らが入る厚生年金では、産前産後の休業中の保険料を免除する制度を導入済み。自営業者らの国民年金でも足並みをそろえ、子どもを産みやすい環境を整える。
厚生労働省は、2014年度に高齢者などが受給した公的年金の総額が53兆4,000億円で過去最高だったと発表した。前年度に比べ1.1%増えた。高齢化で受給者数が増えたことが主因。一方で支え手の現役世代は減っている。
公的年金は順次厚生年金に統合されるものもあるが、国民年金と厚生年金、共済組合、福祉年金の4つがある。受給者数は6,988万人で2.8%増えた。保険料を払う公的年金の加入者は6,713万人で0.1%減った。
2014年度の1人当たりの支給平均月額は国民年金が5万4,000円。厚生年金は14万8,000円だった。
厚生年金の積立金は136兆7,000億円で前年度から10兆円以上増えた。運用環境が好調で3年連続増えた。ただ受給者と支え手のバランスは崩れており、厚生年金の加入対象範囲をパート労働者などへ広げる取り組みがされて行く。まだまだ少子高齢化が進んでいるのでその対策は急務なようだ。