三菱自動車は、今年11月末までに米国での生産から撤退すると発表した。記者会見した相川哲郎社長は「今の生産規模では経済合理性がない」と話した。欧米先進国での生産をやめ、新興国から輸出することで生産コストを下げ、経営再建から成長への本格的なギアチェンジを目指す。ただ、為替相場の変動にさらされるリスクも大きい。
米国でつくっていたスポーツ用多目的車(SUV)「アウトランダー・スポーツ」(日本名RVR)の生産は名古屋製作所岡崎工場(愛知県岡崎市)に移す。イリノイ州にある米国唯一の工場は売却を目指す。相川社長は「米国市場が好調で、売却先が探しやすいことも(生産撤退の)理由だ」と説明した。
同工場は2000年に22万2千台を生産したが、無理な安売りなどが影響してブランド力が低下し、米国での販売が低迷。2012年からは生産を1車種に絞り、ロシアや中東へも輸出してきた。ただ、ロシア経済の減速で2014年度の生産台数は6万4千台まで減少した。
三菱は2000年にあったリコール隠し問題を機に経営が悪化。2004年からは三菱グループ各社の支援を受けて経営再建を進めてきた。経営効率化のためコストが高い先進国での生産から撤退を進め、2008年にはオーストラリア、2012年にはオランダでの生産をやめた。
2013年ごろからは海外での投資を東南アジアに集中させる方針を打ち出した。フィリピンでは3万台だった生産能力を10万台まで伸ばすほか、インドネシアでは年16万台の生産能力を持つ工場を建設中で、2017年の稼働を目指す。ただ、市場が大きい欧米で現地生産しないと、為替変動のリスクに直接さらされることになる。相川社長も「(為替は)常につきまとう問題だ」と認めた。
三菱自動車は、日本と新興国に生産を集約する。(朝日新聞等より)
三菱自動車は、欧米市場の拠点であったオランダ工場を2012年に売却し、米イリノイ州の今年中に撤退する。これは成熟市場の欧米での現地生産から撤退し、成長市場に経営資源を集中させて採算向上を目指す、日本で初めての自動車大手となった。
成長市場であるアジアには、タイ(2014年度:35.4万台)、中国(同6.9万台)、フィリピン(1.6万台)に工場があるが、フィリピンの自動車産業育成優遇策をも利用して10万台の生産増強を図り、インドネシアに建設中の16万台の工場を立ち上げる方針のようだ。