Quantcast
Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2208

成長持続の鍵はインフラ支出

$
0
0

 一昔前のフィリピンを知る人であれば、年6%超の高い経済成長を達成する今の姿をいぶかしがるかもしれない。元憲法起草委員で、アジア太平洋大学教授(経済学)のベルナルド・ビリエガス氏には、それでもなお物足りなく映る。「インフラが整えば、この国は10%の成長も可能だ」
 
 ビリエガス教授の強気の見方の背景はこうだ。フィリピンの経済成長は民間主導。世界に散らばるフィリピン人からの送金は年間3兆円を超え、受け取る家族らの消費は活発だ。さらに、コールセンターなどのビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業が発展したことで、所得水準が上昇。国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費が成長をけん引している。インフラ不足が解消されれば、鬼に金棒といった具合だ。
 
 だが現実はそう甘くはなさそうだ。フィリピン政府が5月末に発表した1~3月期の実質GDP成長率は、5.2%と3年ぶりの低水準に沈んだ。前期比では0.3%と、足踏み状態だった。この低さは市場予想を下回り、記者会見中のバリサカン国家経済開発庁長官の携帯電話にアキノ大統領が直接電話を掛けてきたほど衝撃的な数字だった。

 1~3月期はというと、中国の景気減速を背景に東南アジア全体で輸出の伸びが鈍っていた。フィリピンの輸出も前年同期比1%増と微増。もう1つの原因が、政府支出の減少だ。道路建設などが予定に間に合わず、公共事業への支出が約25%も減った。政府の2015年通年の成長率目標は7~8%だから、出だしが5%台では達成が困難。アキノ大統領が慌てたのもうなずける。
 
 その直後の6月3日。国賓として来日したアキノ大統領はインタビューで「インフラ関連の支出をGDPの5%まで増やす」と述べた。フィリピンの2014年のインフラ関連支出は約4,000億ペソ(約1兆円)と、GDPの3%程度にとどまっていた。これを2015年は4%、2016年には5%に増やすという。
 
 フィリピンでは人口の増加や経済成長に見合わないインフラの脆弱さが、経済成長のボトルネックになる懸念が強い。鉄道などの公共交通が少ないため渋滞が常態化し、首都圏への通勤に往復で5時間程度かかるケースもある。渋滞や通勤時間の拡大による経済的損失は計り知れない。
 
 アキノ政権は官民パートナーシップ(PPP)方式による道路や鉄道の整備を進めており、マニラ首都圏を中心に工事が進みつつある。5月には、比ルソン島の国有鉄道の延伸・補修工事について、アジア開発銀行(ADB)に助言を受けることを決定した。こうしたインフラ整備を着実に実行すれば、7%程度の経済成長は達成できるとの思いが政権中枢にはあるとみられ、1~3月の成長率発表後も、通年目標はなお据え置いている。
 
 遅いなりにもインフラ整備を進めようとしているアキノ大統領は、来年の6月の任期で退任する。大統領の再選は禁じられているため、来年からは新たなリーダーがアジア有数の成長国を導くことになる。

 ビリエガス教授は「誰が大統領になっても、民間主導で6~7%の成長は持続できる」と話すが、もしインフラ整備を少しも顧みない大統領であれば話は別だろう。ADBによると、フィリピンは2010年~2020年までに1,270億ドル(約15兆円)がインフラ整備に必要で、年間ではGDPの6.1%に相当する。ところがこれまでは2%程度しか拠出できていなかった。これまでの大統領がどれほどインフラへの関心が薄く、経済成長の好機を逃したかは想像に難くない。
 

 インフラ整備の大切さを知るアキノ大統領は支出を引き上げた。次の大統領は、少なくともこの流れを継承し、「アジアの病人」と言われた過去の時代に後戻りしないよう努力する必要があるだろう。(日経新聞等より)





 フィリピンの成長持続に欠かせないインフラ整備。経済だけでなく、庶民にも恩恵を被る政策は重要で、次の大統領も促進させて欲しいものだ。












Viewing all articles
Browse latest Browse all 2208

Trending Articles