買いこんだ魚や肉。余ったら自宅の冷凍庫で保管、という人は多いだろう。問題はそれらを解凍して使う時だ。電子レンジだとべちゃべちゃになるなど、うまくいかないことが多い。短時間で上手に解凍するコツを調べてみた。
冷凍庫内に保管してある食材は、買い物ができなかった時やいざという時に威力を発揮する。だからこそなるべく早く使える状態にして、美味しく食べたい。
まずは、①室温での自然解凍と②冷蔵庫に移しての解凍、③水道水をかける流水解凍と④電子レンジを使う方法で、解凍に要した時間や状況を比較した。買ってきた冷凍の業務用ブリの切り身(各50g)を使った。自宅の冷凍庫内はマイナス18度、冷蔵庫は5度、室温は20度だった。
所要時間の短さでは当然ながら電子レンジに軍配が上がった。だが、解凍状況は好ましくない。自宅のレンジは「スチーム解凍」方式だった。皿の上に冷凍の切り身をのせ、メニューで解凍を選択、ボタンを押すと約4分で「チン」となった。取り出すと、切り身の半分が熱でうっすら白くなっていた。表面には液状の白い固まりも付着、皿には魚のエキス(ドリップ)が約5ccたまっていた。
電子レンジの解凍設定を「弱」に変更し、ふた付きの容器に切り身を入れて再チャレンジ。すると約2分で「チン」となったがまだ身は冷たく固い。もう一回チンすると、今度は表面に薄い氷の膜が残り、中身はべちょべちょ。漏れ出すエキスの量は倍増した。
豚肉の冷凍スライスでも試したが、結果はブリと大差ない。レンジの自動解凍だと肉の大半は熱で変色し、「弱」で試しても変色部分は多少残る。
所要時間でレンジの対極にあるのは冷蔵庫解凍だ。冷蔵庫に移して待つこと9時間前後。ようやく解凍できた。夕食用の食材として使うには、朝、移さなければならないので時間がかかりすぎる。
流水解凍と自然解凍はどうだろう。流水解凍は約20分で済んだが、絶えず水を流すのはもったいない。
自然解凍では普通の皿とアルミ製のトレーを用意。それにのせて解凍時間を計ると、結果に差が出て驚いた。アルミトレーは皿より20分ほど早く、約50分で解凍できた。これは、冷凍食品調理コンサルタントに「アルミは熱の伝導率が良い」と教えてもらい試した結果だった。
売っている冷凍食品は「急速凍結」してある。マイナス1~5度の「最大氷結晶生成温度帯」を短時間で通過させて凍結させる。冷凍でできる氷の結晶を小さくすることで、食材の組織の損傷を最小限にするためだ。解凍がうまくいかないと、さらに組織の破壊が進み、液体(ドリップ)として漏れ出す。ドリップは食材のうまみや栄養成分なので、少ない方がいい。
解凍に適した温度帯は0度前後。それに近いのが氷水というわけだ。氷水解凍では切り身を入れたビニール袋が浮かないようカップで重しをした。冷蔵庫解凍と同様に、ドリップの量も少ない。
「これから夏場にかけて室温は上昇する。自然解凍は衛生面や食材の変質という面で問題をはらむ」と言う。結局、流水解凍より時間と手間は多少かかるが、魚や肉をおいしく食べたいなら、氷水での解凍が一番いいようだ。
では解凍せずに直接、調理したらどうなるか。ガスレンジでブリを塩焼きと、フライパンに油をひきフタをして焼くソテーにしてみた。レンジのオート機能を使うと、塩焼きは表面はいい感じに焼けたが中身は冷たい。身の表面には白い液状のものがいくつも付着し、いかにもまずそう。一方、ソテーは中までよく火が通り、こちらはいけた。
「うまく解凍するためには、冷凍する段階でも注意が必要なのか」。改めて聞くと、熱伝導の観点から、解凍時だけでなく「冷凍する時もアルミトレーにのせておくといい」という。
「冷凍庫内での乾燥や酸化を防ぐためにも、食材をラップでくるんだり、袋に入れ中の空気を抜いたりして密閉状態にしてほしい」と、日本冷凍食品協会の担当者はアドバイスする。(日経新聞等より)
スーパーなどで売っている状態のまま、食品トレーに入れて冷凍庫に放り込むのは避けた方が良いのと、冷凍庫内の温度変化を防ぐためにも、開閉は必要最小限にすることのようだ。
冷凍技術も日進月歩で進んでいる。食品に加えると解凍後、うまみを上げられそうな物質も最近、登場したとか。それにしても、おいしく食べるにはやはりひと手間掛ける必要があるようだ。