フィリピンで日系製造業の進出や拠点拡張が相次いでいる。タイやインドネシアなどに製造業が集積する一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)で最も日本に近いフィリピンはこれまで素通りされてきた。だが、周辺国に比べた賃金の低さと治安など環境の改善で潮目が変わりつつある。フィリピンは製造業大国になれるのか。
スマートフォン(スマホ)向け部品を製造する後藤電子(山形県)は5月、マニラ北郊のクラーク経済特区で新工場を稼働する。約1千人を雇用し、カメラ駆動用ボイスコイルモーターを製造する。同社は中国に工場を持つが、人件費の高騰などを受けてフィリピン進出を決めた。
セイコーエプソンは、マニラ郊外にあるプリンターとプロジェクターの工場を拡張している。従業員は現在の1万2,500人から2万人まで増やす計画だ。エプソン現地法人の羽片忠明社長は「英語が堪能で、優秀な若い社員を安定して確保しやすい」と語る。
急激に都市化が進むマニラ首都圏とは違い、地方は賃金が安く、最低賃金は日給335ペソ(約900円)程度にとどまる。フィリピンは人口が1億人を突破し、平均年齢が23歳とASEAN主要国で最も若い。産業が少ないため完全失業率は7%近く、地方では安価な労働力が確保しやすい。
通貨ペソの対ドル相場は比較的安定し、インフレ率も3%程度と高くない。年間の賃金上昇率は数%にとどまり、将来の急上昇も見込みにくい。人口は毎年2%増え、年間100万人もの新規雇用が必要とされている。
フィリピンが敬遠されてきた理由の一つは過去の治安の悪さだ。ある工業団地の担当者は「昔の危険なイメージがこびりついている」と漏らす。最近も工業団地の視察の際、防弾ガラスの車を要求する経営者もいたという。だが実際は、アキノ政権になってから政治は安定。昨年にミンダナオ島の和平が前進するなど治安も改善した。「政治や治安は他国と比べて悪くはない」(ある大手製造業の担当者)
中国をはじめ日本企業が進出した国・地域は賃金が急上昇している。東南アジアでもインドネシア、ベトナム、カンボジアでは最低賃金の年間上昇率は2~3割に達する。それと比べて好条件がそろうフィリピン。製造業で躍進する日も近いかもしれない。(日経新聞等より)
フィリピンは、政治・経済・治安・インフラ等の問題で敬遠されてきましたが、やっとここに来て解消されつつあります。まだまだ、アセアン域内で見ても、日本企業の進出数が少なく遅れをとっていますが、これから徐々に改善されて行きそうです。