厚生労働省は、今の国会で法改正を目指す年金制度見直し案を自民党のプロジェクトチームに示した。年金抑制策「マクロ経済スライド」を物価下落時にも実施できるようにする改正に加え、基礎年金の保険料を納める期間を5年間延ばす見直しも断念した。将来の給付水準低下を食い止める改革の柱が、軒並み先送りされる。
公的年金の給付水準は、経済成長を見込んでも、約30年後には今より2~3割低くなると見込まれる。
焦点は、年金額の伸びを物価・賃金より低く抑える「マクロ経済スライド」を、デフレ時にも実施できるようにする改革だった。実施が遅れると将来世代の年金が目減りする。しかし今回、高齢者の反発を懸念する与党の理解が得られなかった。代替策として厚労省は、デフレ時に減額できなかった分を翌年度以降に繰り越し、インフレ時にまとめて抑制する考えを示した。
基礎年金の保険料の納付期間を5年延ばし、45年間とする改革も目指した。受け取る年金額を増やす狙いがある。ただ基礎年金の半分は国費。5年間延長で約40年後には1兆円強、国の負担が増える。財源確保の見通しがたたず、見送った。
結局、改革案に盛り込んだのは、①厚生年金の適用拡大(500人以下の企業のパート社員らについて労使が合意すれば加入を認める)。②国民年金に入る女性の産前・産後の保険料を免除し、財源として加入者の保険料を月約100円ずつ増やす等々といった小幅な見直しだけのようだ。(朝日新聞等より)
どの見直し案も受給者にとっては有り難く無いものだが、それをしないとより年金財政が悪くなる。できるだけ痛みが少ない方法で対処すべきところを、官僚は議員の顔色を窺い、議員は選挙が近くなると高齢者の反発を恐れて先送りとなる。困った国の見本のようだ。