乗客の搭乗は順調で、出発準備も整いつつあるようだ。時刻表に記された搭乗便の出発は11時20分。まだ20分あるので、定刻どおりに空港を発てるだろう。そんなことを考えていたら、隣の席にいた乗客が心配そうに呟いた。
「また出発が遅れるのかなあ。旅客機の運航って、列車とかに比べてかなり時間にルーズですよね。私が利用する便は、たいてい予定より遅れて離陸します」
時間にルーズ? はたしてそうだろうか。乗客はどうも、出発時刻というのが離陸する時間だと勘違いしているようだ。空港のタイムボードに表示された出発時刻は、じつは離陸する時間ではない。私たちが利用した11時20分発の搭乗便は、11時35分に離陸した。出発時間としては、これでほぼ定刻どおりである。
出発時刻とは、滑走を離れて飛び立つ時間ではなく、正しくは停留していた旅客機が動き始める時刻を指します。
スポット(駐機場)で旅客ターミナルに向かって正対して止まっている旅客機を出発させるには、滑走路の誘導路までトーイングカーでプッシュバックしなければならない。機体の周辺で作業に当たっていた整備士たちは、出発時刻の5分前になると旅客機に取り付けられていた安全装置を解除し、機体後方に移動を妨げるものがないこと、ドアがすべて閉じられロックされていることなどを確認し、ブロックアウト(前脚タイヤの輪留めの取り外し)を行う。これで出発準備は完了。より厳密にいうと、時刻表に書かれている出発時刻は、このブロックアウトタイムのことをいいます。
同様に到着時刻も、旅客機が目的地の空港にランディングした時間ではなく、滑走路に降り立った旅客機がそのまま旅客ターミナルに向かって地上走行し、マーシャラーの誘導にしたがってスポットに停止した時間を指します。
航空機を乗り始めた時に、出発時間がどの時の時間を指しているのか判らず、何故かイライラしていました。今は判っているので落ち着いて乗れています。(笑)