日本総務省は、国際電気通信連合(ITU)及びフィリピン科学技術省(DOST)と協力して、12月15日に、昨年大規模な台風被害を受けたフィリピン・セブ島において、災害対策用の移動式ICTユニットを用いた実証実験を行う共同プロジェクトを開始した。
このプロジェクトは2014年5月にITU、総務省、DOSTの3者で協力合意文書を締結、ITU-D(ITU電気通信開発部門)と総務省による防災分野における初の具体的協力案件となった。
移動式ICTユニット(MDRU)とは、東日本大震災での教訓を踏まえて、2011年度から総務省が日本電信電話(NTT)、NTTコミュニケーションズ、富士通、東北大学に委託して研究開発を行った、災害時に被災地へ搬入して通信を迅速に応急復旧させることが可能な通信設備である。
これまでの発表によると、このユニットは1時間以内にWiFiネットワークを構築し、被災地の人々が通話通信できる無線アクセスネットワークサービスを提供するとのことである。また、避難所の運営も効率的に支援する。
このユニットには、車載型やアタッシュケース型等があり、容易に被災地へ搬入することができるので、既存の通信設備が被災して使えない状況であっても、迅速に通信環境を構築し、通話やインターネットを利用することが可能となる。
このほど、セブ島サンレミジオ市の市庁舎等にこのユニットを設置して、Wi-Fiネットワークを利用した通話やデータ通信等を行う実証実験を開始し、2015年9月まで共同プロジェクトを実施する予定である。
そして、実証実験の結果を踏まえて、移動式ICTユニットの改良を進め、日本国内の防災関係機関への導入・普及を図ると共に、ITUと連携し、災害の多い諸外国への導入・普及に向けた活動を進めて行く方針である。(日本総務省報道資料等より)
NTTは、今年の1月に大規模災害時に短時間で公衆無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」による通信を実現する通信復旧支援装置を搭載したワゴン車「ICTカー」を開発を、富士通、東北大学などと協力して2年間取り組んできた研究開発プロジェクトの一環で、2月から高知県の南国市と黒潮町で自治体と住民の協力を得て実証実験を行っていた。実験の成果を踏まえ1~2年のうちに通信事業者や自治体向けに実用化したい考えのようだ。
2013年11月に発生した巨大台風ヨランダ(台風30号)で、甚大な被害を受けたフィリピン政府からも被災地でのICTカーの活用が打診されており、政府や関係省庁との調整が実り現地での実証実験に至ったようだ。
ICTカーから半径500mのエリアに設置した車載用ワイファイ基地局(4台収納)がそれぞれ半径100mのワイファイ通信エリアを確保し、避難所など4カ所でスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末で通話やデータ送受信できる。ICTカーを広域通信網と接続すれば、被災地以外の遠隔地とも通信できる。
タブレット端末のカメラで収集した被災者の基本データや顔写真などをデータベース化する「被災者データ収集システム」も搭載。迅速な安否確認に役立てることもできるようだ。ICTカーの車載バッテリーや太陽光発電で5日間運転できるなど、自立的な通信エリア確保に向いている。
ライフライン確保にも通信復旧は、災害時には大変重要なもので、台風被害が多いフィリピンでも必要なものだと思う。