エボラ出血熱の感染の拡大で、各国に混乱が広がっている。感染者の入国を防ぐため、空港などでの検査の強化に乗り出しているが、不法入国者をどう調べるのかなど課題は多い。流行国からの入国の禁止を求める声も出始めた。
米疾病対策センター(CDC)は15日、テキサス州の病院でエボラ出血熱に二次感染した看護師の女性が、症状を訴える前日に航空機に乗っていたことを明らかにした。CDCは同乗者132人の調査を始めた。米国の看護師組合は防護服の装備が不十分だったことを指摘する声明を発表したが、二次感染の原因は特定できていない。
女性が治療していたのは8日に亡くなったリベリア人の男性。西アフリカからのさらなる感染拡大を防ぐため、オバマ政権は空港での検疫の強化に乗り出しているが、下院外交委員会のロイス委員長(共和党)は15日、国務省に対し、ギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国からの米国ビザの発給停止を求める要望書を提出した。
14日から主要空港での問診や体温検査を始めた英国は、来週中にも国際列車ユーロスターが乗り入れる鉄道駅にも検査を広げる方針だ。ドイツの航空当局は感染が疑わしい乗客が機内で見つかれば、フランクフルトやミュンヘンなど隔離室のある4空港のいずれかに着陸させる方針を決めた。
ただ、エボラ熱は潜伏期間が最長3週間と長く、出入国時の検査で感染の恐れがある旅行者全員を見つけることは困難のようだ。
フランスでは「無料電話」を設け、発熱や嘔吐などエボラ熱と似た症状がある人らに対して、問い合わせに答える態勢を整えた。感染地域からの入国者に対しては、熱を毎日はかり、一定期間に38度以上になったら「疑い」とみなし、救急センターへすぐに連絡するよう求めている。
オーストリアでは、ザルツブルク市内で不法入国の疑いで拘束されたリベリア出身とみられる男性(15)が、警察の事情聴取に「母国でエボラ熱で亡くなった家族をみとり、自分で埋葬した」と話したため、急きょ病院に隔離された。
今年1月以降、12万人を超える難民が漂着したり、沖合で救助されたりしたイタリアでは、沿岸警備隊やイタリア海軍の艦船に医師が乗り込み、発熱検査や問診を実施している。フィリピン国軍は14日、リベリアに派遣している国連平和維持活動(PKO)の部隊145人を11月10日にも撤退させる方針を明らかにした。
国連安全保障理事会は15日、「今までのところ、国際社会は適切な対処に失敗している」とする報道官声明を出した。
米国やスペインでの二次感染を受け、日本の厚生労働省の担当者は「防護服などの取り扱いの教育や訓練をしていることが重要」と語る。感染者が日本で出た場合に備え、厚労省の研究班は10月から、治療にあたる指定医療機関を対象に研修をしている。
水際対策では、流行するアフリカの5カ国に滞在した人は、空港の検疫所に申告するよう機内放送をすべての航空会社に要請。8月12日~9月末で、約400人から申告があったという。
検疫所では必要に応じ医師が診察し、感染が疑われれば隔離措置をとる。現地で患者らとの接触があれば、朝夕2回、健康状態の報告を義務づけている。また、感染が疑われる患者が受診したら、すみやかに届けるよう自治体を通じて医療機関に要請している。
<エボラ出血熱>:エボラウイルスに感染することで発症する。潜伏期間は2~21日。感染すると発熱や頭痛、嘔吐、下痢などの症状が出て、歯ぐきや目、消化管から出血することもある。重症化すると多臓器不全で死亡する。致死率はウイルスの型によるが、25~90%。症状が出た患者の血液や体液、吐いた物、排泄物などに直接触れると、手の傷や粘膜などから感染する。空気感染はしない。(朝日新聞等より)
エボラ出血熱で世界各国が対応に追われて、世界の株価にも影響を及ぼしているようだ。フィリピンもPKOで各国に派遣しているが、ゴラン高原の事件よりリベリアに派遣した隊員が心配になる。
日本は歴史上アフリカの宗主国にはなっていないので、航空権益等は無く航空直行便はないのでまだ良いが、それがある欧州はエボラ出血熱に対して敏感に反応している。感染力が高く致死率も高いのに、治療薬が無いこの病気の恐ろしさに対しては当然のことだろう。