蚊が媒介する感染症といえばマラリアやデング熱が有名だが、日本では、「蚊に刺されたくらいで慌てなくても大丈夫」というのが常識だった。しかし、海外渡航歴のない20代の男女3人が8月28日にデング熱に感染していることが判明し、今(9月1日現在)では、22名にのぼりまだ増えるという事態に変わりつつある。最初の3人は都内の学校に通う同級生で、都立代々木公園(東京都渋谷区)でダンスの練習をしていてデングウイルスを保有する蚊に刺されたとみられている。
日本では、戦時中の1942年~45年に神戸、大阪、広島、呉、佐世保、長崎などで約20万人が感染する大流行があって以来、69年ぶりの国内感染例という。実は昨年8月、日本へ渡航したドイツ人が帰国後にデング熱を発症しており、デング熱の国内感染もあり得ると見られていた。
デング熱は、ヒトスジシマ蚊(ヤブ蚊と呼ばれこともある)、ネッタイシマ蚊によって媒介されるウイルス感染症。ネッタイシマ蚊は今のところ日本では生息が確認されていないが、ヒトスジシマ蚊は北海道と青森以外の全国各地に分布している。この夏も、ほとんどの人が1回以上はこのヒトスジシマ蚊に刺されているに違いない。
最初の感染者3人が一緒に行動していただけに、空気感染もあり得るのかと勘違いしがちだが、インフルエンザのように人から人へ感染することはなく、発症するのはデングウイルスを保有する蚊に刺されたときだけ。万が一、家族が感染したとしても、感染者を刺した蚊に刺されなければ大丈夫というわけだ。
日本では聞き慣れない病気であるものの、世界的にはマラリアに次いで多い昆虫媒介感染症で、東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸島、アフリカ、オーストラリアなど全世界で毎年約1億人の感染者が出ている。
これまであまり注目されていなかったが、日本でもインドネシア、フィリピン、マレーシア、タイなどで感染し帰国する例は年々増えており、国立感染症研究所によると、2013年には249人の日本人がデング熱に感染した。今回は3人とも海外渡航歴のない感染者だったため、日本でも、デングウイルスが広がっている恐れが出てきたようだ。
症状は、3~7日の潜伏期間のあと、38度以上の突然の発熱、頭痛、目の奥の痛み、関節痛、吐き気・嘔吐で、インフルエンザなど多くのウイルス感染症と同じ。胸の辺りや手足に発疹が出たり、食欲不振、腹痛、便秘を伴ったりする人もいる。
「デング」はスペイン語の「denguero」(英語でdandy)が語源とされ、背中の辺りの激痛にのけ反る姿がダンディな人が気取って歩く姿に似ていることからその名がつけられたという。まったく症状が出ない人もいる一方で、かなりの激痛に苦しむ人もいるようだ。
さらに怖いのは、平熱に戻りかけたときに、血小板が減少し胸水や腹水がたまったり鼻出血・消化管出血を起こしたりする「デング出血熱」を発症することだ。ちなみに、アフリカで感染が多数の死者を出しているエボラ出血熱とはまったく別モノなので、混同しないように注意していただきたい。
2010~13年の4年間に海外渡航後、日本で感染が確認された825人のうちデング出血熱を発症したのは37人(4.5%)。重症例ではショック症状を起こし、適切な治療が行われないと死に至るケースもある。感染者が爆発的に多いフィリピンでは昨年、感染者16万6107人のうち528人が亡くなっている。
デング熱には特効薬やワクチンはなく、治療は対症療法が中心。多くの感染者は1週間前後で回復するが、現時点では、とにかく蚊に刺されないようにするのが一番だ。感染の危険性が高いのは、人と蚊の多い都会の公園や草地である。ヒトスジシマ蚊は場所によっては11月まで生息し続ける。
屋外では長袖長ズボンで靴下を履いて肌の露出を避け、虫除けスプレーで防御するのが良い。ランニングやウォーキングのときにはタオルなどを巻いて首の露出も防ぐのもよいだろう。バルコニーや庭に、蚊が卵を産みつける水の入ったバケツ、空き缶、空き瓶などを放置しないように注意し蚊を増やさないことも大切。
フィリピンに滞在していると、デング熱のニュースを耳にするので、庭が少し広い我が家の対策としては、蚊に咬まれないことなので電気蚊取り器を使うとか、LED電球に交換する等のほかに、水溜りを作らないのが効果的なようだ。
また、10円玉のような銅で造られたものは、水に浸けて置くと銅イオンが出て蚊の繁殖を抑制するとも聞く。それを試すのも良さそうだ。その他としては、体力が無い子供たちが重症化するようなので、普段から体力を付けるようにするのが良さそうだ。
日本でもインターネットで売るようになってきた上記写真の「電撃蚊取り器」。フィリピンでは前から売られていたこの電撃蚊取り器は、中国製なのですぐに使えなくなるが、蚊がよく取れて人によってはストレス解消にもなるようです。