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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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医療費や保育料の負担が変わる、住民税の意外な仕組み②

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 夕食を終えた筧家のリビング。幸子はパソコンを開いて、マネーセミナーの資料づくりを始めました。テーマは「意外と知らない住民税の仕組み」。恵は興味津々といった様子で、幸子のパソコンをのぞき込んでいます。お茶を飲んでいた良男が2人に話しかけてきました。
 
 筧(かけい)家の家族構成
  筧幸子(48):良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
  筧良男(52):機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
  筧恵(25):娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
  筧満(15):息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

 筧良男:所得税は年末調整や確定申告のときに意識するけど、住民税はなじみが薄いな。
 
 筧幸子:自分がどのくらい住民税を払っているのか知っておくのは大事よ。住民税額によって社会保障や福祉サービスをどのくらい受けられるか、自己負担額がいくらになるのか、違ってくることが結構あるのよ。
 
 筧恵:あ、確かに。例えば保育所の保育料とかね。会社の先輩のワーキングママによると、ママ友との会話の中で保育料の話が出てきて、そのママ友が払っている保育料を聞いて、相手の家の方が高収入だと分かったと言ってたわ。
 
 幸子:この前、住民税には「所得割」と「均等割」があると話したけど、保育料は住民税の所得割で決まるのよ。例えば、東京都世田谷区で1歳児を預ける場合、所得割が10万円の世帯は2万3,000円、20万円の世帯は2万9,700円よ。

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 良男:来年春から大学などの授業料や入学金を減免してもらえる高等教育無償化が始まるそうだけど、対象は基本的に住民税非課税世帯の子だそうだね。
 
 幸子:私が会社員向けのマネーセミナーで講師をするときは、離れて暮らす老親の収入を把握するようアドバイスするわね。住民税額によって払う医療費や将来受けるかもしれない介護サービスの自己負担額が変わることがあるのよ。
 
 恵:どういうこと?
 
 幸子:病院で治療を受けたときに窓口で払う自己負担額は70歳以上の場合、基本は1~2割なんだけど、「現役並み所得」がある人だけ3割なの。国民健康保険の加入者や、75歳以上が入る後期高齢者医療制度の加入者は、住民税の課税所得が145万円以上だと現役並みと見なされるのよ。

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 恵:課税所得が145万円というと、年収でいえばどのぐらいなのかしら。
 
 幸子:課税所得というのは収入から基礎控除や社会保険料控除などを引いたものなので、収入にすると約386万円ぐらいといわれているわね。
 
 恵:じゃあ住民税が非課税になるのは……。
 
 幸子:65歳以上のひとり暮らしの年金受給者の場合、年金収入が155万円以下なら住民税が非課税になるわね。払った医療費が高額になったとき、自己負担額が一定限度までで済む「高額療養費制度」や介護保険の「高額介護サービス費」には所得区分があって、課税所得によって自己負担額が変わるの。親が住民税を払っているかどうか確認しておきたいわ。
 
 恵:ふるさと納税をすると住民税や所得税が軽減されるのよね? それならふるさと納税をすれば医療や介護の自己負担額を減らせるんじゃない?
 
 幸子:残念。それは間違いよ。医療費や介護費の所得区分はふるさと納税分を控除する前の課税所得を基に決まるの。
 
 良男:年金暮らしの親といえば、国民健康保険や75歳以上なら後期高齢者医療制度に加入しているはずだけど、保険料は住民税と関係あるの?
 
 幸子:以前は住民税額を基に保険料を決める自治体もあったけど、いまは加入者の総所得を基に計算する方式に統一されたわ。総所得というのは年金収入だけでなく、不動産所得や配当所得などを合計したものね。国保の保険料は均等割と所得割の合計だけど、扶養家族という考え方がないので、均等割は加入者すべてが負担するのよ。

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 恵:均等割と所得割って住民税と似てるね。
 
 幸子:所得割は加入者の総所得金額から、基礎控除額33万円を引いた金額に、自治体が定めた保険料率を掛けて計算するの。住民税は総所得から基礎控除だけでなく扶養控除や配偶者控除なども差し引けるから、国保のほうが負担は大きいといえるわね。ただ、総所得が33万円以下などの低所得者世帯は均等割が最大7割減額されるのよ。
 
 恵:65歳以上の介護保険の保険料も住民税の課税・非課税で違ってくると聞いたことがあるな。住民税っていろんなことにかかわっているのね。
 
 幸子:年金生活者など高齢者が注意したいのは、株式の配当金や売却益が多額にあった年は総所得が膨らみ、翌年の住民税や保険料負担が重くなってしまう点ね。医療費の窓口負担も例年なら1割で済むところが、所得が増えて「現役並み」の区分になり、3割負担になることもあるわ。その年には高額療養費制度の自己負担限度額も上がってしまうので、大きな病気をして入院や通院が増えると、一時期に家計が圧迫される可能性もあるわね。
 
 良男:社会保険の負担や自治体による給付など、幅広い分野に住民税が関係してるんだな。
 
 幸子:10月の消費税増税に伴って幼児教育・保育の無償化や、恒久的な給付金である「年金生活者支援給付金」も創設されるのよ。この給付条件にも住民税非課税世帯かどうかがかかわっているわ。住民税は賦課課税なので、工夫をして負担を減らすということはできないけれど、社会保障や福祉サービスのいろんなところで顔を出すので、もっと意識してもいい税金だと思うわ。
 
 ※高齢の親、世帯分離で負担減も(社会保険労務士 井上大輔さん)
 会社を定年退職すると、健康保険については住んでいる自治体の国民健康保険に加入する、健保の任意継続制度を2年間利用するなどの選択肢があります。健保では配偶者を扶養に入れていた人も、国保に入ると加入者数に応じた保険料負担が発生します。前年の所得と加入者数から世帯ごとに保険料を計算するため、家族の所得も保険料に影響します。
 
 同居する親を健保の扶養に入れている人も注意が必要です。親が75歳になると扶養から外れて後期高齢者医療保険制度に加入します。同一世帯に所得が多い人がいると、親は保険料の減免が受けられないため、親だけを別の世帯に分けることがあります。親はほぼ年金収入だけになるので、住民税や保険料の負担を軽減できる場合があります。世帯分離は自治体で手続きをします。(日経新聞等より)





 前回①「住民税の時間差課税に注意」、今回は、②「意外と知らない住民税のしくみ」でしたが、次回は、③「住民税と所得税で課税方式分けて節税に」と続きます。

 おさらいの意味を込めて見て戴けたらと思います。












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