筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「インナーマッスル」。最近、重要性が語られることが増えていますが、どう鍛えればいいのでしょうか。
インナーマッスルは、一般的に「外から触れない筋肉」と定義されています。その中でもエクササイズの分野でインナーマッスルと言うと、体の深いところにあり、姿勢の維持や関節のポジショニングのための筋肉を指します。
最初は肩の外旋筋群というインナーマッスルが注目されました。これは、野球のピッチャーがボールを投げる時に使う内旋筋と逆の働きをする筋肉。肩を内旋する動作では、大胸筋と広背筋という上半身の大きな筋肉が共同して働いているので、ものすごく強い力が発揮されます。その分、肩に負担がかかるので、肩関節が抜けたりしないように外旋筋群が関節をしっかりと支えているのです。
その外旋筋群が弱くなってくると、投げるたびに肩のポジションがズレて、最終的に肩を壊してしまう。そこでピッチャーがチューブを引っ張ったりして、外旋筋群のインナーマッスルを鍛えはじめた。それが1990年代のはじめの頃です。
その後、骨盤周辺の大腰筋、腸骨筋、脊柱起立筋(多裂筋)、中臀筋などのインナーマッスルがクローズアップされてきました。姿勢や関節のポジションニングをしっかりと保つことで、健康状態を良くしましょうというムーブメントですね。
インナーマッスルがしっかり働くと、安静時の代謝も増えることになり、太りにくい体質になって脂肪も落ちやすくなる。そこで「痩せる」というキーワードが出てきて、世間に広まったという側面もあります。
インナーマッスルは、姿勢を正すためにずっと使われているので、日常の中で活動している時間がとても長い筋肉でもあります。立っているだけでも、使われているわけですからね。しかし、本人が意識しにくい筋肉なので、鍛えるのも難しい。
私もジムに行ってトレーニングしていますが、筋肉を鍛えると聞くと、量を増やしてパンパンに大きくするというイメージを持たれる方も多いかと思います。しかし、インナーマッスルのトレーニングは、単純に筋肉量を増やすというものではありません。
筋肉に負荷をかけ刺激を入れるため、強化するという意味では同じですが、インナーマッスルを鍛えることで期待する効果は、インナーマッスルを活性化させ、体の動きをコントロールすることです。つまりインナーマッスルは、カラダの動きを安定させるために鍛えるのです。
インナーマッスルが働き、カラダが安定することでトレーニング効果も最大限に高めることできるので、理想の体作りには必須項目ですね。