地域医療の矛盾が噴出している。発足から80年を迎えた国民健康保険(国保)は2018年度から一部の加入者の保険料が上がる見通しだ。過剰な病床も放置できなくなり、自治体間のきしみが生じている。住民に身近な地域医療が岐路に立っている。
兵庫県三木市で農業を営む60代の男性が悩んでいる。「保険料が1割も上がるなんて……」。同市では2018年度から国保の保険料が加入者平均で9%増える。この男性は家族の分と合わせて年間60万円程度を支払っているが、負担は6万円ほど増える見込みだ。なぜこのような負担増を求められるのか。国保の財政構造に理由が潜む。
三木市は国保財政の赤字を補うため、年間数億円の税金を投入してきた。同市のように一般会計から法定外の繰り入れをする自治体は約1,300。国は国保加入者以外の税金で穴埋めするいびつな構図をやめるよう求め始めた。
三木市は繰り入れを残すため、保険料の上昇幅は9%にとどまると見ることもできる。もし全廃すれば保険料は平均で20%も上がる。同市は「今後の引き上げについては未定」とするが、住民には「今回で終わるとは思えない」との懸念がくすぶる。
国保の慢性的な赤字の背景には高齢化や産業構造の変化に伴う加入者層の激変がある。1965年度には農林水産業とその他の自営業が加入者の7割を占めていたが、2015年度には両者の割合は計17%に低下。代わりに退職した高齢者を含む無職者や非正規労働者が全体の8割に迫る。
「今や国保は非正規と退職高齢者のための保険。低収入と高い医療費のダブルパンチだ」。ある自治体の担当者は嘆く。国保の課題は税金による穴埋めの解消だけではない。4月から運営主体が市町村から都道府県に移行したのに伴い、市町村間の保険料格差も難題になる。
奈良県は2024年度を目標に保険料水準の統一を目指している。県内には加入者が100人程度の村もあり、1人でも高額な医療を受けると保険料に跳ね返る。「水準を統一すれば高額医療の影響も吸収できる」と県の担当者は話す。奈良県の1人当たりの保険料格差は1.88倍。長野県のように3倍を超える自治体もあり、統一の道は険しい。
少子高齢化、地方の過疎化、・・・・・。根本的な問題が改善されない限り、こう言った状況になるのはこればかりでは無い。最後の手段である移民受け入れ国に成らざるを得ないのかと、嘆きたくなりますね。