支払いの99%は現金か小切手。銀行口座を持つ成人の割合も約3割。少し前まで決済分野で大きく出遅れていたフィリピンで、携帯電話による支払いや送金が浸透しつつある。サービスの主要な担い手の一人が、米国でのベンチャー投資を経て約5年前にフィリピンに渡ってきたロン・ホース氏だ。
「次の20~30年の経済成長の中心はアジアだ」。そう考えたホース氏は起業前、東南アジア各国を訪れ、現地の多くの起業家や投資家に意見を聞いた。その上で各国の市場としての魅力を評価したところ、全ての評価項目で高い順位になったのがフィリピンだったという。「経済成長率が高く、英語を話す若年人口が多い。運営コストが安い点もスタートアップにとっては重要だった」。フィリピンには一人も知り合いがいなかったが、携帯電話を使った決済の仕組みを導入すれば、銀行口座を持たない巨大な消費者層を取り込めると考えた。
それから5年。ホース氏が最高経営責任者(CEO)を務めるコインズは、200万人を超える顧客に個人間の送金や各種の支払い、インターネットでの買い物ができる基盤を提供している。消費者はセブンイレブンの店舗など3万を超える拠点で入金ができる。銀行口座を持たない国民が多い国ならではのビジネスモデルを確立した。
こうしたサービスは現金依存からの脱却を狙う中央銀行の方針とも合致する。「全ての人が銀行口座か、ノンバンクの提供する電子決済を利用できるようにしたい。銀行だけでなく、認可されたノンバンクも決済システムの一部だ」(フィリピン中央銀行のネストル・エスペニリャ総裁)。コインズも中銀から送金業務などの認可を受けている。
コインズは既にタイに進出しているほか、銀行による決済が十分浸透していない他の東南アジアの国の進出も視野に入れる。「6億4,000万人の東南アジアのすべての人々が直接金融サービスを利用できるようにしたい」(ホース氏)。中国のアリババ集団などアジアの大手企業も東南アジアを次の有望市場と位置づける。商機にさとい起業家や企業が、アジアの決済の風景を急速に変えつつある。(日経新聞等より)
フィリピンでは、口座維持費用が掛かる銀行口座を持つ成人の人は約3割と少ないので、送金や支払いは携帯で行うことが多い。ただ、所得が上がり国民に銀行口座を持たせるように、口座維持手数料の掛からない口座が持てるように改善されつつあるようだ。そして、フィリピンも貯蓄をするような人が増えてきている。