三菱商事はフィリピン・マニラ市中心部で高層マンション群の開発に乗り出すようだ。財閥大手のアヤラグループと不動産開発の合弁会社を設立。30階を超える高層住宅を今後7年かけて4棟建設する計画だ。都市部で増えている中・高所得層向けで、合計千数百戸を供給する。総事業費は約400億円の見込み。両社は今後も高層住宅や物流施設の開発で連携する考えだ。
両社は合弁会社をこのほど設立し、マニラ市中心部に約3ヘクタールの開発用地を取得した。合弁会社の資本金は40億円程度とみられ、出資比率は三菱商事が40%、アヤラグループが60%。
合弁会社は1棟目となるマンションの販売活動を昨年11月中に開始した。着工は来年早々に予定しており2018年に完成する見通し。世帯収入が日本円で500万円前後の中・高所得層向けのマンションで、今後の販売動向を見ながら2棟目以降の建設スケジュールを調整するとの事。
国際通貨基金(IMF)の予測では、フィリピンの人口は15年に1億100万人と現在より400万人程度増える見通し。特に首都圏では中・高所得層の人口が増えており、マンション需要も今後増加するとみられている。アヤラグループは同国最大手の不動産開発会社を傘下に抱えており、三菱商事は今後も住宅開発事業などを共同展開したい考えだ。
一方、投資用不動産の販売などを手掛けるレーサム(東京都千代田区)は、マニラ首都圏マカティ市に現地法人を設立したようだ。アヤラ・コーポレーション傘下のアヤラ・ランドが同市で開発を進めるコンドミニアムなどの物件を仕入れ、日本の顧客に販売する。
マカティ市に設置した現地法人「レーサム・フィリピン」は資本金900万ペソ(約2,000万円)で、レーサムが全額出資する。日本人2人で業務を開始。アヤラ・ランドが開発する物件を購入し、不動産投資を計画する顧客に販売する。レーサムの担当者は、「現地調査などを実施した結果、アヤラ・ランドの物件が最も質が高く、メンテナンスも行き届いていると判断した」と説明。フィリピンのマクロ経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が堅調に推移していることも好材料として挙げた。
同社は1992年の設立。これまでは東京都の物件を中心に投資用不動産などを販売し、海外ではマレーシアやカンボジアで事業を展開してきた。フィリピンに加え、今後はミャンマーやベトナムへの進出も検討している。2013年3月期連結決算によると、経常利益は前期比89%増の21億2,800万円で、売上高は同86%増の153億5,300万円だった。
今年の6日、フィリピン下院で不動産バブルに陥る恐れがあるとして、政府に対応を求める決議案が提出されるほど、不動産市場の過熱を懸念しており、状況の把握や不動産融資に対する監視強化を求めているようだ。
だが、フィリピンの人口増加を見れば、国民の所得が向上して行き、また外国人の住宅購入が続けば、まだまだバブルにならないと思われる。どちらにしても質の良い住宅の提供が望まれる。