日本企業が手がける「日の丸航空機」の明暗が鮮明になっている。ホンダは小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」を2017年1~6月に24機を顧客に引き渡し、超小型機の分野で米セスナなどを上回り最多だったと発表した。一方で三菱重工業子会社によるジェット旅客機「MRJ」は苦戦が続いている。
全米航空機製造者協会(GAMA)の集計では、ホンダジェットは顧客への引き渡しが進んでおり、セスナやブラジル・エンブラエルの競合機種を上回った。ホンダジェットは乗員を含めて7人乗りの超小型機。航空業界で全く実績がなかったホンダが、約30年かけて機体とエンジンを開発した。主翼の上にエンジンを配置する独自の構造で、機内の空間が広い。最高速度や上昇性能、燃費も競合機に比べて優れている。
航空機子会社のホンダエアクラフトカンパニー(米ノースカロライナ州)が2015年12月に米連邦航空局(FAA)から安全性を証明する型式認証を取得。日本企業として前例がないなかで、約240万ページに及ぶ書類を作成して提出するなど膨大な作業をやり遂げた。
認証取得後に量産を始め、現在は月平均4機のペースで組み立てている。従業員の習熟度が徐々に高まっており、2019年3月期末には月6~7機体制に引き上げる計画。
北米や中南米、欧州に加えて、東南アジアでも販売代理店を構えて受注活動に乗り出したほか、今年4月には市場の成長が見込まれる中国でも機体を披露した。今後顧客への引き渡しを加速し、事業の黒字化をめざす。
一方、三菱重工が開発する初のジェット旅客機MRJは苦戦している。2015年に初飛行こそ果たしたものの、初号機の引き渡し時期は5度の延期の末に2020年半ばにずれこんだ。米ボーイングなどで航空機開発に精通した外国人エンジニアを大量に採用し、海外展開の前提となる米航空当局からの型式認証取得に全力を挙げている。
100席未満程度の「リージョナルジェット(RJ)」で格安航空会社(LCC)向けの需要をあてこむMRJに対し、富裕層や企業幹部向けのホンダジェットは用途も需要層も大きく異なる。1970年代に国産初のビジネスジェットを開発したのは、他ならぬ三菱重工。この時開発した「MU―300」は海外企業に譲渡されて現在は生産していないが、ノウハウはMRJに受け継がれている。
それだけに、5,000億円超の開発コストをつぎこんだとみられるMRJに失敗は許されない。エンブラエルがMRJと同クラスの次世代機を投入する時期が2021年に迫っており、これ以上の計画遅れは致命傷になりかねない。
ホンダジェットも事業化を決めた2006年時点では2010年に量産を始める計画だったが、リーマン・ショックなどの影響もあり2015年末にずれ込んだ。それでも開発責任者を変えずに作業を進め、早期の量産をめざした。開発体制が次々に変わったMRJも実用化で先行したホンダジェットから学ぶべきところがあるのかもしれない。(日経新聞等より)
ホンダジェットは最大7人乗りで、特許として認められたエンジンを主翼の上に配置した外観が特徴。価格は450万ドル(約4億9,000万円)。2015年12月から納入を始めており、北米や中南米、欧州を中心に100機を超える受注がある。2017年は年間50~55機の出荷を予定するが、今後は米国工場をフル稼働させ、年間80~100機まで生産能力を高めて、需要増に対応するとしている。三菱のMRJも頑張って欲しいものだ。