フィリピンの町中を走る自動車や二輪車のナンバープレートは実に多彩。過去、政権が代わるたびにデザインを変えていたからだけではない。日本語やタイ語で表記されたものや、手書きで乱雑に書かれているものまである。
破れた手製のナンバープレートを付けて走る車(マニラ)
多くは正規プレートが交付されるまでの仮のものだ。プレートを発注した企業が関税を納めていないなどとして、政府は新規交付を1年以上中断している。そのため、販売店が独自に作成して提供するほか、所有者がどこからか調達することもある。仮プレートを付けた車や二輪車は数百万台に上るとみられる。
その仮プレートを巡り混乱が起きた。盗難車両に悪用されかねないとして陸運局が統一デザインを定め、2月に導入。車販売各社から準備が間に合わないと反発を受け、5月に延期した。すると新たな仮プレートがすぐに届かないとの懸念から一部で買い控えられ、4月には好調だった車販売にブレーキがかかった。
「官製不況だけは勘弁してほしい」。日系自動車メーカー幹部は漏らす。政府が昨年、車生産振興策を導入したのを機に、各社は販売強化に乗り出したところだけに、市場を冷え込ませる政策に不満の声が上がった。
行政機関の事務処理能力が低いフィリピンのなかでも陸運局の非効率さは目立つ。通常でも陸運局に申請してプレートが届くまで半年以上かかる。地元メディアによると新規交付が中断される前に、既に未処理の申請が100万件以上たまっていたという。
特に地方局は機器や人員に乏しく、パソコン持参で社員に作業を代行させる企業もある。はびこる汚職も背景にあり、処理を優先する代わりに受け取る賄賂は一種の“既得権益”で作業を迅速にする動機が働きにくい。まさにフィリピン行政が抱える問題の縮図だ。
車業界の働きかけを受け、陸運局は仮プレートのデザインを統一する方針を再び保留し、6月の車販売は2桁の伸び率に戻った。ドゥテルテ大統領は、施政方針演説で汚職撲滅と行政の効率化に強い決意を示した。今後、多彩なプレートが姿を消すのかが、フィリピンの行政処理能力の向上を示す指標になりそうだ。(日経新聞等より)
フィリピンで走っている車は、新車販売が伸びても古い車の廃車になるのが少ないようで、色とりどりで増えた分だけ交通渋滞の元になる。
せめて新車からは、新しいナンバープレートを付けて走って欲しいものだ。