国営だった仙台空港が民営化され、7月1日で1年経った。国際線の就航が増え、利用者が上向く成果が出ている。民営化の「試金石」の成功で、ほかの空港でも追随する動きが加速しているが、同じやり方が通用するかはまだ見通せない。
国際線の就航便は週7便増えて17便、今後も就航・増便が続く予定だ。仙台空港の運営企業・仙台国際空港が、民営化1周年を前に披露した成果。
2016年度(国営だった2016年4~6月含む)の営業損益は、1億円の赤字だった。新たに駐車場の収支を加えるなどしたため単純に比較はできないが、前年度の11億円の赤字から大きく改善した。国際線利用者が22万人と、4割近く伸びたことが大きい。
国内線も含めた利用者は計316万人で、2020年度に410万人に増やす目標も「現実味を帯びてきた実感がある」と岩井卓也社長は自信をのぞかせる。
同社は東京急行電鉄グループを中心に、前田建設工業、豊田通商が出資。昨年7月から、滑走路とターミナルビルの30年間の運営を約80億円で引き受けた。
まず取り組んだのが航空便の誘致だ。地元自治体や経済界が航空会社に「陳情」していたのを、民間流の「営業」に切り替えた。
自らの強みを「立地と鉄道へのアクセス」と分析。外国人に人気のある東京と北海道の中間にあって「どちらにも新幹線ですぐに行ける」と、アジアの格安航空会社(LCC)に理詰めで売り込んだ。4月には、新規就航時や搭乗率の減少時に着陸料を割り引く制度も新設した。
就航後も、東北の観光地の広告やツアーの企画を支援するなどして、乗客を増やすよう努める。
東急出身の土田博志・航空営業グループ長は「いかに人に使ってもらえるかを考えるのは鉄道と同じ」と話す。沿線を開発して乗客を増やしてきた鉄道会社の手法の応用と言える。
ターミナルビルでは駅ビル開発の経験を生かした。カフェを新設し、今後も飲食店などの誘致を進める方針。展望施設も無料にし、周辺でジョギングを楽しむ人向けの更衣室を設けた。ビルの収入を増やし、それを元手に着陸料をさらに値引きし、航空便の誘致につなげる好循環をめざす。
国内には97空港があり、多くは経営が厳しいとされる。このため政府は、世界各地で成功例があった民営化を国内でも進めるため、2013年に民活空港運営法を施行。仙台は国営の地方空港で初めて民営化され、今後の試金石になると見られていた。
すでに高松や福岡のほか、県営の静岡などで民営化が決まり、運営企業を探している段階だ。北海道では国、道、市の運営する計7空港を一括して民営化する予定。いずれも、滑走路とともにターミナルビルの運営も民間に委ねる手法で、昨春には関西・大阪(伊丹)でも採用された。
企業側の関心も高い。清水建設は、滑走路の保全や修理などでゼネコンのノウハウを活用できるとし、「空港経営をぜひやりたい」(東出公一郎副社長)。三菱地所は「商業施設として着目している」(片山浩常務)といい、ターミナルビルの開発で収益を出せるとみる。
航空・旅行業界向けのシステムを手がけるアマデウス(スペイン)も「空港の魅力を高める取り組みを支えるチャンス」(日本法人の竹村章美社長)だと期待する。
ただ、周辺の人口減が加速していたり、交通の便が悪かったりする空港は「経営改善のしようがない」(大手不動産幹部)との見方も多い。民営化が国内空港の運営の「切り札」になるとは言い切れない。(朝日新聞等より)
狭い日本の国土に97もある空港。その殆どが赤字のため国も民営化を急いでいる。その試金石でもあった仙台空港が健闘している。
空港は騒音問題があり、街の中心部から離れているので、集客を考えないと上手く行かない。道路にある「道の駅」のように、「空の駅」化が第一歩のようだ。