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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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運動+乳製品で生活習慣病改善!

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 実は最近、私たちは、「インターバル速歩の後にコップ1~2杯分の牛乳に相当する乳製品を取ると、暑さに強い体になる」と乳製品が生活習慣病の予防・治療にも威力を発揮する可能性を明らかにしました。これまで、インターバル速歩を5カ月間実施すると、体力が最大20%向上し、それに比例して、高血圧、高血糖、肥満の症状が20%改善、医療費も20%節約されることを紹介しました。今回は、インターバル速歩の後に取る「コップ1~2杯分の乳製品」で、それらの効果の向上が期待できることが分かったのです。この最新の成果について、詳しく解説しましょう。
 
 私たちの体力は10歳加齢するごとに5~10%ずつ低下します。老人性筋萎縮症(サルコペニア)とよばれる加齢現象が主な原因です。それは、筋肉の中で自動車のエンジンの役割をするミトコンドリアが衰えるために起こります。エンジンはガソリンを燃やして車を走らせますが、ミトコンドリアは、ブドウ糖や脂肪酸を燃やして私たちが生きるエネルギーを作ります。車のエンジンは新しいうちは燃費も良く排ガスもきれいです。ところが、ポンコツになるとそうはいきません。ミトコンドリアも同じです。若いうちは排ガスを出しませんが、年を取ると排ガスを出すようになります。この“排ガス”は活性酸素と呼ばれる物質で、細胞や組織を損傷し、慢性炎症反応を引き起こします。その炎症が脂肪組織に起これば糖尿病、免疫細胞に起これば動脈硬化による高血圧症、脳細胞に起これば認知症やうつ病、がんの抑制遺伝子に影響が及べばがんになると考えられています。(図1

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図1:運動不足・肥満による慢性炎症が生活習慣病の根本原因。

 慢性炎症反応は、熱が出たり、体のどこかが痛くなったりするなどの自覚症状がないため、ほとんどの人は気がつきません。通常の臨床の場で使用される血液検査でも測定できません。でも、血液細胞の遺伝子の「メチル化」というものを調べると、慢性炎症の状態が測定できるのです。私たちのDNAは32億段の塩基対でできています。

 そのうち、体の中でさまざまな現象を起こす情報を持っている部分が遺伝子です。ある遺伝子が働くか働かないかは、その遺伝子の一部に「メチル基」が結合するかしないかで決まります。メチル基が結合すると遺伝子の「不活性化」が起こり、その遺伝子は働かなくなります。これがメチル化です。

 したがって、運動や食品摂取の前後で炎症が起きているかどうかを調べる場合は、炎症を引き起こす遺伝子「炎症促進遺伝子」のメチル化が起きているかどうかを測定すればいいわけです。炎症促進遺伝子がメチル化され、本来の働きをしな
くなれば、慢性炎症は起きなくなる、ということです。
 
 今回、私たちは、既に6カ月以上インターバル速歩トレーニングを実施し、筋力向上や生活習慣病の症状改善効果が頭打ちになった高齢女性37人(平均66歳)を対象に実験をしました。
 
 被験者を無作為に、下記の3グループに分け、5カ月間インターバル速歩トレーニングをしてもらいました。そして、その前後で、炎症促進遺伝子のメチル化と筋力を測定しました。

  (1)インターバル速歩のみを行う人=12人
  (2)インターバル速歩+運動後に少量の乳製品を摂取する人=12人
  (3)インターバル速歩+運動後により多くの乳製品を摂取する人=13人(注)

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25カ月間のインターバル速歩と乳製品摂取効果。乳製品1単位は、総カロリー60kcal、たんぱく質4.1g、炭水化物2.5g、脂質3.7gを含有する。グラフAは、乳製品の摂取量(なし、1単位、3単位)に比例して下肢筋力が増加していることを示す。グラフBは炎症反応の中心的役割を担う遺伝子であるNFKB1NFKB2遺伝子のメチル化が、乳製品の摂取量に比例して増加していることを示す(*P<0.05,***P<0.001 vs 「なし」群. P<0.05,††P<0.01 vs 1単位」摂取群)

 その結果、炎症反応を引き起こすのに中心的な役割を果たすとされているNFKB(エヌエフカッパービー)1、NFKB2遺伝子のメチル化は、乳製品を多く摂取したグループの人は、トレーニング前に比べそれぞれ平均29%、44%増加しましたが、インターバル速歩のみのグループでは変化せず、少量の乳製品摂取のグループはその中間の増加量でした(図2)。

 また、全遺伝子のメチル化を測定した結果、乳製品を多く摂取したグループはインターバル速歩のみのグループに比べ、NFKB遺伝子以外の炎症促進遺伝子群やがん関連遺伝子群のメチル化も進んでいることが明らかになりました。さらに、トレーニング後、乳製品を多く摂取したグループは筋力が平均8%増加しましたが、インターバル速歩のみのグループでは増加せず、少量摂取のグループはその中間の増加量でした。
 
 私たちは、既に「運動+乳製品摂取」によって動脈の壁が柔らかくなることも報告しているのですが、その他の生活習慣病の諸症状の改善も期待できることが分かったのです。

 炎症促進遺伝子が働かない理由は、インターバル速歩のような「ややきつい」と感じる運動直後には、筋肉内で筋線維などの合成が盛んになっています。そのタイミングで乳製品のようなアミノ酸を多く含んだ食品を摂取すると効率よく筋線維が合成され、筋肉が太くなります。新しい筋肉内には新しいミトコンドリアができますので、活性酸素などの「排ガス」を出しません。その結果、慢性炎症が抑えられると考えています。
 
 運動後の乳製品摂取は誰でもできます。ぜひ、試してください。
   ×   ×   ×
(注):少量の乳製品を摂取するグループ=市販の6Pプロセスチーズまたは4個パックヨーグルト、どちらか1個を摂取する。総カロリー60kcal、たんぱく質4.1g、炭水化物2.5g、脂質3.7gを含有▽より多い乳製品摂取のグループ=市販の6Pプロセスチーズ1個+4個パックヨーグルト2個を摂取する。総カロリー171kcal、たんぱく質12.3g、炭水化物9.4g、脂質9.4gを含有。(毎日新聞等より)





 確実に暑さが増す今の時期は、熱中症に注意が必要です。ウオーキングを楽しむ時には、ぜひ牛乳を取り入れてください。牛乳の苦手な人は、チーズ等の乳製品で摂取してみてください。












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