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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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専業主婦(第3号被保険者)は年金が優遇されて不公平か?

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 6月は1年間の中でも年金業務では非常に忙しい時期でした。なぜなら一部の受給者を除き、毎年1度6月に年金受給者全員に振込通知書というものを一斉送付するからです。大体毎年6月の7日あたりから10日くらいにかけて送付するので、その辺から年金事務所等はすごく忙しくなる。まあ、年金振込月である偶数月はいつも忙しいと思います。
 
 振込通知書は今年6月から来年4月までの支払い年金額を記載したもので、特に今年度は物価が0.1%下がった事で、若干年金額が下がりそれの問い合わせも多いでしょう。だから、何か他の件で年金についての相談がある場合は、この6月を避けて相談しに行くか、日や時間帯をずらしたほうが良いです。電話も混み合ってなかなか繋がらないと思いますから。
 
 なお、振込通知書は6月振込額から翌年4月振込額までの向こう1年間の年金額を記載していますが、途中何らかの原因で年金額が変更になる場合はその都度送付されます。合わせて支給額変更通知書等も送付されます。
 
 それでは本題です。今のサラリーマンや公務員等の厚生年金に加入してる被保険者を第2号被保険者といいますが、その人達の扶養に入っている人達を第3号被保険者といいます。今は約910万人くらいの第3号被保険者数です。
 
 去年10月から501人以上の企業や、今年度は501人未満でも一定の条件を満たせば年収を106万円未満に抑えないと厚生年金に加入しなければならなくなりましたが、とりあえず原則としては年収130万円未満(月収で言えば108,333円以内)に抑えないと第3号被保険者になれないから、130万円を超えないようにしなきゃとかそういう話が世間でよく話題になる。
 
 第3号被保険者になるのは何も専業主婦だけに限らず、主夫もなる事ができますが第3号被保険者の99%近くは女性。圧倒的に女性で占める。
 
 第3号被保険者である間は国民年金保険料(平成29年度国民年金保険料16,490)を支払わなくても支払ったものとして、65歳からの老齢基礎年金を貰う事ができます。なぜ、支払わなくても将来の老齢基礎年金が貰えるかというと第2号被保険者の保険料の中に第3号被保険者の年金分も含まれてるからです。でも、昔から「不公平だ!」とよく批判されてきた制度です。特に働く女性から。
 
 ただ、同じ「厚生年金世帯」で見たら不公平は生じてはいない。ちなみに、自営業者(第1号被保険者)のように「個人単位」で所得に関係無く個人で定額の保険料を支払う第1号被保険者ともよく比較されますが、「世帯単位」で所得に比例して厚生年金保険料を支払う第2号被保険者内で支える第3号被保険者を比較するのがそもそも間違いです。
 
 さて、厚生年金世帯で見て、例えば、夫が50万円の給与(実際は標準報酬月額を用いる)で30年間厚生年金でその間妻が20歳から60歳の間で専業主婦(第3号被保険者)の場合は。
 ・夫の老齢厚生年金は500,000円÷1000×5.481×360ヶ月=986,580
 ・夫の老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×360ヶ月=584,475
 ・妻の老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×360ヶ月=584,475
 
 夫婦の合計年金は夫の老齢厚生年金986,580+夫の老齢基礎年金584,475+妻の老齢基礎年金584,475=2,155,530円。
 
 逆に夫が30万円の給与で、妻が20万円の給与で両者とも厚生年金に加入して30年働いたとする。
 ・夫の老齢厚生年金→300,000円÷1000×5.481×360ヶ月=591,948
 ・夫の老齢基礎年金は779,300円÷480×360ヶ月=584,475
 
 ・妻の老齢厚生年金→200,000円÷1000×5.481×360ヶ月=394,632
 ・妻の老齢基礎年金は779,300円÷480×360ヶ月=584,475
 
 老後の夫婦の年金合計は夫の老齢厚生年金591,948+夫の老齢基礎年金584,475+妻の老齢厚生年金394,632+妻の老齢基礎年金584,475=2,155,530
 
 となり金額は一致する。なお、配偶者加給年金や振替加算はまた別制度なので、計算からは除いています。
 
 ※加給年金と振替加算(日本年金機構)
 
 それで、夫一人の給与(標準報酬月額)50万円で働いていたら厚生年金保険料(平成29年9月からの保険料率18.3%の半分の本人負担分9.15%で算出してます)は、毎月45,750円の負担になり、後者の共働きの世帯でいえば夫は30万円だから毎月の厚生年金保険料は27,450円で、妻は20万円だから厚生年金保険料は毎月18,300円の負担で27,450+18,300=45,750円となり、夫一人で50万円収入の世帯と保険料負担が一致する。
 
 なお、事業主は同じ保険料額を負担している。事業主と本人で厚生年金保険料を負担するから、第1号被保険者の定額の国民年金保険料よりも随分高い保険料を負担している。
 
 それなので、同じ厚生年金世帯でも入ってくる収入が同じだと負担も、支払われる年金も同じになるから不公平は生じてはいないです。

 だから、単に「私は保険料払ってるのにあの人は保険料支払わずに年金貰えるなんて許せない!」っていう感情的な事で批判が噴出しているが、それは違うのです。
 
 サラリーマンや公務員の扶養に入ってる人は、年金保険料を支払わなくていいわけですが、厚生年金に加入している人の扶養に入ってる妻は同時に健康保険の扶養に入って、妻だけでなく子供の分の健康保険料支払わなくても夫一人分の健康保険料のみ支払って3割負担(小学校入学前の子は2割)で医療が受けれるわけですが、健康保険の保険料免除されて医療が受けられるのはいいけど年金受けられるのはダメ!ってのもおかしな話であります。健康保険の部分についてはあんまり話題にならない。
 
 さて、第3号被保険者が出来たのは、昭和61年4月1日からでこの年から20歳から60歳までの日本国民全員を全て、強制的に国民年金に加入させることになって(昼間学生は平成34月から強制加入)、国民全員共通の基礎年金制度ができたんです。
 
 まあ、国民年金制度が出来て強制加入になったのは昭和36年4月1日からですが、昭和61年3月31日までのサラリーマンや公務員の扶養に入ってる20歳から60歳までの妻は国民年金には強制加入ではなく、加入してもしなくても構わない任意の加入でした。
 
 なぜなら厚生年金というのは、国民年金のように一人が所得に関係無く定額の保険料を支払って個人単位で与えられる年金ではなく、所得に比例して厚生年金保険料を支払って夫一人の厚生年金で夫婦二人の生活をカバーする「世帯単位」で面倒を見る年金だったから妻がわざわざ個人で国民年金に加入しなくても、老後は夫の厚生年金で面倒を見るから妻の国民年金加入は強制にはしなかったんです。夫が死亡しても遺族厚生年金として妻の生活保障がされますし。
 
 ただ、このままだと将来離婚した時は妻には何の年金も支払われないし、国民年金に加入していない場合は障害を負った時に障害年金も出ないというリスクを持っていました。だから、昭和61年4月1日からサラリーマンや公務員の妻であろうと強制的に国民年金に加入させて第3号被保険者として女性の年金権を確立させたんです。
 
 できた当初は世間もマスコミもとても評価して、批判も特別無かったんですが、ちょうど「男性はサラリーマンで妻は専業主婦」という世帯数よりも共働き世帯数が逆転した平成9年(1997)ごろから「第3号被保険者は優遇されてる!不公平だ!」って特に働く女性からの声が強くなってきました。
 
 今現在も「第3号被保険者は廃止しろ!」って声は多く、その為女性の雇用を増やして厚生年金に加入させる形で第3号被保険者を減らそうという動きが出てきました。確かに、厚生年金加入者を増やせば年金受給者を支える人数は増やせるし、第3号被保険者制度を無くしたいのなら方法はこれしかありません。
 
 ただ、半ば強引に第3号被保険者制度を廃止するのであれば900万人もの人達の保険料負担を一体どうするのかという問題もあります。記事の最初の方で計算した厚生年金世帯の年金額と保険料負担は一致するわけで、そんな中で第3号被保険者に年金保険料を負担させるとなると位置付けが難しくなる。
 
 またサラリーマンの扶養に入っていれば第3号被保険者になると同時に健康保険料支払わずに医療を3割負担で受けれる健康保険はどうするんだろう?っていう面もあります。あらたにこちらも保険料を個別に負担させるのかと言うことのなります。
 
 しかし、未だ第3号被保険者の大半を占める女性の不利な雇用環境(女性が出産育児で退職した後の不利な再就職や低賃金)、そして不利な社会慣行(女性が家事育児介護を行う事)が多いので第3号被保険者制度を廃止しようというのはあまり良い事とは思っていません。
 
 昭和50年から一人の女性が一生の間で産む子の数を表す合計特殊出生率は2.0を切り、平成17年の1.26を底に今は1.46です。若干回復傾向ではあります。
 
 夫は朝から晩まで働きに出て、会社の命令一つで単身赴任や海外赴任をさせられ、いろんな世帯が母子家庭のようになり、この上女性もどんどん雇用を促す事により、少子化の中、子供も孤立しますます家庭がバラバラになっていくんじゃないでしょうか。企業や女性の力は強くなりましたが、弱くなったのは男性と家庭の力といったところです。企業の力が強くなった裏側には活力の源である家庭の犠牲があったわけです。
 
 今の年金受給者を支える為にも雇用促進するのは結構な事ですが、これから年金を貰う人達は今の子供が支える事になるわけで、今年8月からは約64万人の無年金者を救済する為に年金受給資格期間を25年から10年に短縮して無年金者を無くそうと年間650億くらいの財源を使うようです。
 
 前年の1年間の年金支給額が57兆円程だったのでそれに比べたら随分低い金額ではありますが、受給資格期間を短縮したところで根本的な年金問題の解決にはなりません。「今更何やってんの?!」って思いますが、まあ、既に決まってしまったから仕方ないですね。
 
 ちなみに一部を除き(国民年金に強制加入になる20歳前から障害をお持ちの人へ20歳以降支給される障害基礎年金等)、社会保険は福祉ではありません。毎回言ってるけど保険なんです。
 
 保険は自助努力の精神で成り立つものです。「天は自ら助くる者を助く」って昔からの言葉がありますが、社会保険も自ら助くる者を助くわけです。
 
 年金強制加入になる20歳から最大加入できる70歳まで50年間あるわけで(厚生年金は20歳未満でも加入対象になる)。年金は20歳から60歳までは強制加入ですが、10年年金を認めるという事は、30年未納を事実上認める事になります。10年加入すればもう年金に加入しなくていいと勘違いしてくる人も増えるでしょう。
 
 今更そんなところに財源を使うくらいなら、根本的な問題である少子高齢化問題や、または待機児童問題、子育て支援、あと介護みたいなところにお金を使ったほうが良かったのではないでしょうか。将来も発生する年金受給者を支える子供世代に財源を使わなくてどこに使うっていうんでしょうね。
 
 今の日本人口は1億2千万人程ですが、2050年には1億人を切り、2100年には5,000万人を切る見通しになっています。また、今の高齢化率は27.3%程もありますが、2060年以降は高齢化率は40%になり以後、40%ちょっとで推移していく見通しが立てられています。
 
 年金問題は、少子高齢化問題とは切り離す事はできません。少子高齢化問題は高齢化の目安となる65歳以上人口比率が7%になった昭和45年から言われていた事であり、今後も本当にこの問題が解決されるのかはわかりませんが、今更一時しのぎの目先の問題に国の財源を使うのではなく問題の本質の部分に使えばいいのにと思うわけであります。
 
 まあ、人口が少なくなりすぎるのも問題ですが、、人口が逆に2億も3億にもなるとそれはそれでまた難しい問題が出てきそうですね。(MAG2NEWS等より)





 第3号被保険者は年金の優遇が無いように計算されているのが分かったと思います。ただ、細かな点では相違があるようです。

 なお、年金は人それぞれでの違いが多く、一般的に説明されても理解しにくいと思います。年金の説明を受けても、自分の条件に当て嵌まる人は少ないと考えますので、疑問があれば日本年金機構等に相談された方が良いでしょう。












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