日立製作所は2月末に、同社の持つインフラ関連技術などを紹介するため、マニラ首都圏マカティ市で「日立ソーシャルイノベーション・フォーラム」を開催した。昨年に続く2回目で、フィリピンで根強い「家電の日立」というイメージを「インフラの日立」へ転換するのが狙い。ワンストップでインフラ開発を手掛ける事業者としての地位確立を目指す。フォーラムには、銀行や不動産開発、電力、通信業などからフィリピン人を中心に250人以上が参加した。
東南アジア事業を統括する日立アジアの清水光彦・フィリピン支店長は会見で、日本の政府開発援助(ODA)が充てられる環境配慮型都市「クラーク・グリーン・シティー(CGC)」の開発や南北通勤鉄道(マニラ市トトゥバン~ブラカン州マロロス、延長38キロメートル)計画への参加意欲を見せ、日立が提供できる技術について説明した。ただ、現時点で事業は具体化していないため、サプライヤーとして詳細な計画が発表されるのを待っている状態という。
日立アジアの紺野篤志ゼネラルマネジャーは、CGCの開発に日立が持つエネルギー管理とモビリティー(人の移動)に関する技術の導入が可能と強調した。
エネルギー管理は、一つのビルだけではなく、街全体で電力の需要と供給を管理、ビル間で電力を融通し、電気不足や不必要な発電を回避する技術。千葉県の「柏の葉スマートシティ」で既に導入されている。モビリティーは、電車が到着する場所にエレベーターを配置し、タイミングを合わせて動かすなどし、時間の無駄なくシームレスに人を移動させる技術。現在は試行錯誤の段階だが、CGCのようなゼロからの街は、既に出来上がっている街よりも導入が容易と期待をにじませた。
南北通勤鉄道計画に関しては、「車体、鉄道の信号・制御システムなど土木工事以外の技術を何でも提供できる」と話した。
日立は、2018年までの中期経営計画で、売上高の海外比率を55%に引き上げる目標を掲げている。2016年3月期連結決算は、売上高が10兆343億円で、うち海外は48%の4兆8,027億円だった。(NNA等より)
日本の企業は、日本の少子高齢化、人口減を見据えて、海外事業に力を入れている。今では、日本で家電部門を持つ数少ない日立も例外ではないようだ。