格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションが今月1日、就航5周年を迎えた。国内LCC勢では一歩抜け出した感があるが、急成長したがゆえの変化と悩みもある。LCC間の競争は激しくなり、4月にはANAホールディングス(HD)の子会社となる。これまで通り成長を維持できるのか。「アジアのかけ橋」「空飛ぶ電車に」――。夢の実現に向けた6年目が始まる。
就航5周年の1日午前6時36分、搭乗口に集まった利用客に客室乗務員らが記念品を配った。旅行で友人と仙台に向かう大学生、西田菜摘さん(22)は「普段の旅行は大手航空会社を使うが今回は安いから」と初めてピーチ便を選んだ。「座席の狭さが気にならなかったら次もピーチにしようかな」と笑う。熊本に実家がある和歌山市内に住む大学生の宮崎友都さん(23)は関空からピーチ便で福岡や長崎を経由して帰省している。「電車みたいに使ってもらい、うれしい」と井上慎一最高経営責任者(CEO)。こんな利用者に支えられ、「日本航空史上、最速の事業展開」(井上CEO)を実現できた。
国内LCCのなかでいち早く営業黒字を達成するなど勝ち組となったピーチ。10年後のなりたい姿を問われると「北東アジアのリーディングLCC」と答えた。だがこの先はこれまでにない変化と課題が待ち構えている。
まずは競争環境の激化。「台湾線の単価が下がっている。当社だけでなく、競合他社もだ」。ピーチ幹部はこう打ち明ける。関西国際空港と台湾を結ぶ路線は直行便だけでピーチも含め6社が週約75便を飛ばし、価格競争が厳しくなっている。関空~成田線でも2月18日にバニラ・エアが参入。国内4社がすべてが競合する。井上CEOも「低運賃で潜在需要の掘り起こしにまい進してきたが価格競争が激化している」と認める。そのなかで「安値競争はしない。顧客には新しい価値を提供する」と強調する。この新しい価値を生み出すのが、ピーチのユニークな社風や人材だ。
「大手がやっていないことをやろう」「面白いか、面白くないか」。ピーチ創業時からのこだわりだ。これが評価され、いまでは18機で国内・国際合わせて27路線を運航するまでに成長した。だが、従業員数は約880人に膨らみ、事業立ち上げ時の苦労を知らない人も増えた。しかも一部の従業員を除き、ほぼ全員が中途入社。それでもピーチとして原点を保てるかが、第2の課題だ。3月8日には「ブランドデー」と題し、経営陣のスピーチも交えた社員同士の懇親会を開いた。今回で3回目で創業時のDNAを忘れないようにとの試み。成功に慢心せず、いかにとがったことをチャレンジし続けられるかが問われる。
第3のポイントは独自性と、これを生み出す従業員のモチベーションだ。「今のままでいいです。むしろ独自性に磨きをかけて下さい」。ANAホールディングスによるピーチ子会社化が発表された2月24日夕方。関空内にあるピーチ本社で、井上CEOやANAホールディングスの竹村滋幸取締役は集まった従業員にこう呼び掛けた。「子会社化でピーチはどうなるのか」。こんな質問に2人は繰り返し強調した。
ピーチはANAHDを筆頭株主に抱きながらも、路線や運賃は独自に決めてきた。副業OKの人事制度などもそうだ。社内の雰囲気や様子も違う。毎月1日はコーポレートカラーでもあるピンク色のものをつけて出社する。社内を見渡せば髪の毛を赤色に染めた客室乗務員やモヒカンの最高財務責任者(CFO)がいる。夏には2日間、社内でアイスクリームが食べ放題になる。「上下関係が厳しくなく、誰にでも意見を言えるのはこれまでの企業と違う」(国内企業と外資を渡り歩いてきた従業員)。こんな自由な雰囲気のなかで従業員は機内での外車販売や、「ウナギ味のナマズ」を使った機内食など話題を呼ぶ取り組みを実現。舞台裏での地道なコスト削減による低運賃と合わせ、低コストでメディアへの露出を増やし、顧客を囲い込んできた。ANAHDの片野坂真哉社長も24日の記者会見で「ピーチ成功の立役者はピーチの社員」と持ち上げた。
ANAHD子会社でも自由に独自サービスを手掛けることができるのか。「ピーチブランドの独自性を生かしながら成長をサポートしたい」と片野坂社長。人事やサービスなどには介入しないという。むしろ競争が激しくなるなかで、リスク管理や機体整備のノウハウ提供、機材の一括発注、乗員採用などで協力する考えだ。
ただこんな“いいとこ取り”ができるのは、ピーチが成長を続ければこそだ。ANAHDは4月、304億円を投じ、ピーチの株式約28%を国内外のファンドから買い増す。ピーチ株式の67%を握り、経営上の重要事項で拒否権を持つ株主はほかにいなくなる。競争環境が厳しくなるなかで利用者にも、株主にもピーチの新しい価値を提供しつづけられるか。緊張感がいや増す就航6年目に入る。(日経新聞等より)
ピーチは2017年3月1日(水)、就航5周年を迎えた。「日本とアジアのかけ橋」を目指す空飛ぶ電車をコンセプトに、関西空港を本拠点に2012年3月に就航し、累計搭乗者数は1,700万人以上となっています。
ピーチは、日本初の格安航空会社(LCC)として、首都圏よりアジアに1時間近い関西国際空港の利点を生かし、独自の経営モデルをベースに国内線、国際線を展開してきた。
就航8カ月後の2012年11月に、累計旅客数100万人、2014年4月に500万人、2015年8月には1,000万人を突破して、「最も成功している日本のLCC」との評価を受けている。日本の「LCC元年」とされた2012年は5%未満のLCCシェアが現在は10%超となり、さらにアジアからのインバウンド旅客数が首都圏の主要空港に比べ関西国際空港が飛躍的に増加し、インバウンド需要を牽引しています。
ANAの子会社にもなるので、バニラエア同様に関空からフィリピンのマニラやセブに飛んで欲しいものだ。