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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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年金と報酬月額

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 60歳以上で老齢厚生年金貰っている人(共済組合からの年金も)が、在職していると年金がカットされる事があります。在職というのは厚生年金加入している事を指します。その事でよく10月支払い年金額が変わる人がいます。それは9月に標準報酬月額が新しく適用される為です。
 
 その仕組みを見ていくと、用語に「標準報酬月額」とか「標準賞与額」というものがあります。たぶん、一般的にはなかなか知られていないと思いますが、サラリーマンとか公務員は常に関係してるものであり、年金を受給する際も超重要なものとなります。まあ、会社の総務の方にとってはよくご存知かと思います。
 
 年金を語る上では避けて通る事の出来ない内容ですので、おさらいです。さて、今の厚生年金保険料率は今月から0.354%上がり18.182%になります。18.182%を従業員と会社が半分(労使折半)して、9.091%ずつ保険料を支払います。

 実はこうやって厚生年金保険料は毎年9月に0.354%ずつ保険料が上がっているんです。じゃあ、今後毎年際限なく上がるのかというとそうではありません。平成16年から厚生年金保険料を0.354%ずつ上げていって、平成29年9月以降は18.3%の保険料率で固定します。

 国家公務員共済組合や地方公務員共済組合は平成30年9月に18.3%に。私学共済は平成39年9月に18.3%になって保険料統一されます。
 
 この保険料率は皆さんの給与や賞与に、そのまま保険料率を掛けて支払ってるんではなく、「標準報酬月額」というのを使います。これは、4月、5月、6月に支払われた報酬(賃金や手当や給与、俸給とかその他いかなる名称であるかを問わず、とにかく労働の対償として支払われるものは全て含む)だから、報酬っていうのは通勤手当(定期券とかも)とか社宅や、自社製品を現物給付されたものなんかも含むんです。
 
 なお、臨時で支払われるもの、3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与は報酬から除きます。この3ヶ月間で支払われた報酬を平均して、その金額を厚生年金保険料額表に当てはめて、その年の9月から翌年8月まで支払保険料を算出するのに使う金額を標準報酬月額といいます。
 
 ※厚生年金保険料額表(日本年金機構)
 
 ただし、仮に4月、5月、6月の報酬支払分に対しての支払基礎日数が17日間未満の場合は、その月の報酬は加えません。支払基礎日数っていうのは例えば、4月に給与支払ったけど、それが何日分に対して支払われたものかという事。例えば、毎月15日締めの当月25日払いなら、3月16日~4月15日の31日間の支払基礎日数で、4月25日給与支払い。まあ月給なら普通は暦日(30日とか31)で、日給とか時給制は労働日でカウントします。
 
 もし、4月,5月の支払基礎日数が16日分とかだと4、5月は平均に含めない。6月のみ使う。6月も含めないなら、保険者(協会けんぽとか)が決める。
 
 ※厚生年金保険料額表(日本年金機構)
 
 例えば4月に285,876円、5月に314,973円、6月に297,128円支払われたとして、平均すると299,325円になります。上のリンクの表に当てはめると、報酬平均が299,325円なら標準報酬月額は「300,000円」になります。
 
 ただし、4、5、6月の報酬がどんなに高かったとしても、9月に適用する厚生年金保険料の標準報酬月額は620,000円が限度額です。標準報酬月額は下限の1等級98,000円から上限620,000円までの「30等級」です。

 なお、今年の10月からちょっと変更になり週の勤務時間が20時間以上、従業員501人以上で月収88,000円以上で、1年以上の雇用を見込む等の条件を満たしている人は新たに厚生年金に加入する(約25万人程度が厚生年金加入予定)

 よって、この300,000円の標準報酬月額を元にして、今年9月から翌年8月までの保険料率を掛けて保険料を給与天引きしていきます。だから、支払給与が毎月変わろうが翌年8月までは、300,000円に厚生年金保険料率を掛けて保険料を天引きしていくわけです。この4、5、6月の報酬平均で、9月から新たな標準報酬月額を決める事を「定時決定」といいます(よく算定と呼ばれる)
 
 9月から保険料率が変わり、標準報酬月額も変わったりする月なんですが、いつからその保険料が引かれるかというと10月支給の給与からです。原則として、今月分の保険料は翌月給与から控除するからです。
 
 だから10月の給与明細見ると、「支払い保険料上がってる!」と、世間でよく言われるわけですね。それに4、5、6月に支払われた給与が高かった人は、必然的に高い保険料を支払う事になります。あんまり支払い保険料高くしたくないのであれば4、5、6月に貰う給料を低くする必要がありますが、高い保険料払ってるって事は将来の厚生年金額もその分高いって事なので一概には言えないですね。
 
 なぜこんな事して標準報酬月額を決めるかというと、毎月給与が変動する度に天引きする保険料額が違うと、事務処理が煩雑化してしまうため、向こう1年間の標準報酬月額を決めるわけです。
 
 厚生年金保険料だけでなく、健康保険料や介護保険料も、この標準報酬月額を元に保険料が徴収されます。
 
 なお、9月から翌年8月までの間に昇給したり降給したりする場合もあるかと思いますが、その場合は昇給降給した給与が3ヶ月続くと4ヶ月目に標準報酬月額が変更になります(随時改定または月変という)ただし、この変更は「基本給や諸手当」みたいな固定的賃金の昇給(または降給)した給与が3ヶ月連続した場合に適用されます。この随時改定は、昇給または降給により標準報酬月額が2等級以上変動し、3ヶ月間の支払基礎日数がすべて17日以上の場合に限ります。
 
 例えば300,000円の基本給だったのが、355,000円に昇給して、それが3ヶ月続くと4ヶ月目からは標準報酬月額が360,000円に上ります。1~6月の間に随時改定があるとその年の8月まで随時改定した標準報酬月額を適用、7~12月の間に随時改定した場合は来年の8月まで随時改定した標準報酬月額を適用します。
 
 とりあえず標準報酬月額の変更はこの定時決定と随時改定の二つが主なものです。まあ、細々とした例外はありますが、基本的にはこんな感じです。ちなみに入社したばっかりの人はどうなるかというと、1~5月の間に厚生年金の資格を取得するとその時の報酬をもとに標準報酬月額を適用してその年の8月まで適用します(資格取得時決定という)。6~12月の間に取得すると来年の8月まで標準報酬月額を適用します。
 
 そして賞与の扱いの場合は、支給された賞与の1,000円未満の端数を切り捨てたものを「標準賞与額」といいます。その標準賞与額にも、標準報酬月額に掛ける同じ保険料率を掛けて保険料を天引きします。この標準賞与額も将来の年金額に反映するものです。ただし、どんなに高い賞与でも、一回の支給につき最高150万円が標準賞与額の限度額となります。

 だから例えば12月に500万くらいボーナス出ても150万円を標準賞与額として年金額に反映させる。そして、皆さんが将来貰う老齢厚生年金や、万が一の場合の遺族厚生年金、障害厚生年金などの年金支給額に大きく影響するわけです。
 
 従って、「標準報酬月額」や「標準賞与額」というのは、将来の厚生年金を貰う上でとっても大切な記録なんです。だから、標準報酬月額や標準賞与額が高かった人は高い厚生年金貰えるし、標準報酬月額や標準賞与額が低かった人は低めの厚生年金支給になるわけです。よって、将来貰う厚生年金は人によって金額が様々になるわけです。
 
 というわけで9月には一斉に定時決定が行われ、標準報酬月額が変わる時期なので、老齢厚生年金貰いながら在職されてる方なんかは10月支給分の年金額(10月支給分は8、9月分)がよく変更になるわけです。

 例えば、標準報酬月額が高くて年金支払額が下げられてた人は9月からの標準報酬月額が下がると9月分の年金額が多くなったりしますから、10月支払いに影響します。
 
 ただ、時々何らかの理由で例えば10月年金支払いはいつも通りだったのに、後で過去に遡って給与を訂正されたりして9月の標準報酬月額が遡って訂正される事がありますが、9月の標準報酬月額が下がれば本来なら10月支払い分が増えて支払われるはずが、11月に差額分が支払われたり、逆に標準報酬月額が訂正により上がったりしたら10月支払い年金額を下げなければいけなかったのを年金を多めに支払った為に12月の年金支払い時に差額分を返済したりして低額になるという事もちょくちょくあるようです。
 
 過去の給与を訂正したり、届け出遅れ等で標準報酬月額が変更されて年金額がコロコロ変わったりするから、年金額の計算が大変でした。数ヶ月くらい前の訂正くらいならまだしも、だいぶ前のを訂正されたりすると年金額をかなり遡って訂正するので計算が大変になり、それに年金受給者の方もなぜこの年金額になるのか意味がわからないってなると思います。
 
 支給額が変わる場合は年金支払い月(この場合は10月)の10日前後に支給額変更通知書と振込通知書がまた届きますので確かめてください。
 
 ところで、遠い昔の低いままの標準報酬月額をそのまま年金額計算に使うと年金額が下がってしまいます。昔と今じゃ貨幣価値が違いますから。例えば、昭和30年代に20,000円の標準報酬月額だったとしたら、その20,000円をそのまま現在に使っちゃったら年金額が下がってしまいます。だから簡単に言うと、昔の標準報酬月額を現在貨幣価値に直します。これを「再評価」といいます。
 
 ※再評価率(日本年金機構)
 
 この昭和30年代の20,000円を再評価すると、およそ200,000円くらいの標準報酬月額にはなるでしょう。実際にはこの再評価した標準報酬月額を使って年金額に反映させます。(MAG2NEWS等より)





 細かな決め事は一杯ありますが総務以外の会社員は、仕組みだけでも理解していると、だいぶ年金等の理解度が違います。自分の年金なのですから少しぐらい興味を持つのも良いでしょうね。












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