配偶者加給年金(老齢厚生年金に付く金額は390,100円。月額32,508円)が支給されなくなるタイミングをあらためて見ていきましょう!
配偶者加給年金付くかどうかで年金額が大きく変わってきます。年額390,100円は大きいですね。
配偶者加給年金は、原則として加給年金が支給される本人自身に、20年以上の厚生年金期間または20年以上の共済年金期間が無ければ付きません。
しかし、去年の10月の被用者年金一元化で本人自身に厚生年金期間と共済年金期間を合わせて20年分あって、65歳未満の生計維持している配偶者が居れば、配偶者加給年金が付くようになりました。
ただし、夫に配偶者加給年金が支給されてる時に、妻が20年分の厚生年金または共済年金を受給し始めると夫の配偶者加給年金は停止します。
逆に、一元化で厚生年金期間と共済年金期間合わせて20年分の年金を受給するようになっても、夫に付いてる配偶者加給年金が停止するようにもなりました。
つまり元々は、一元化前は例えば厚生年金期間14年と共済年金6年ある妻が居たとしても、夫の配偶者加給年金は妻が65歳になるまで停止にはならなかったんです。厚生年金なら厚生年金単独で20年満たしてないからです。
今回は一元化により、配偶者加給年金が支給されなくなる時期を4つの事例で見ていきます。
・事例①
昭和26年5月生まれの夫(今年65歳)で、厚生年金期間が30年、国民年金が10年ある人。
昭和31年11月生まれの妻(まだ59歳)で、厚生年金期間14年、共済年金6年、国民年金5年ある人。
妻は今年11月に60歳になり、年金請求により厚生年金14年分が支給され始めます。更に、62歳になった時に共済年金6年分の受給権も発生します。
※厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
女性の共済からの年金支給開始年齢は、男性の厚生年金支給開始年齢と同じ年齢です。
さて、妻は厚生年金期間と共済年金期間合わせて20年あり、60歳から厚生年金貰うようになりました。それで、妻が60歳になる今年11月で、夫の加給年金は停止になるかと言えば、実は60歳時点はまだ14年分の厚生年金だけしか受給しないので配偶者加給年金は停止しません。
それでは、妻が62歳になって6年分の共済年金の受給権を得た時はどうなるかと言えば、この時点が問題となります。
この場合は、合わせて20年分の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)を貰うことになるので、配偶者加給年金は妻が62歳を迎えた時(平成30年11月)の翌月から夫の配偶者加給年金は停止します。
一元化後に発生する共済年金は老齢厚生年金に名前が変わります。厚生年金期間と共済年金期間を合算するのは、一元化法施行後に受給権が発生した時です。
一元化法施行後に年金額を改定(65歳時、退職改定時、離婚時分割による標準報酬月額の改定時)っていうふうになっていますから。この原則で考えないとわからなくなってしまいます。
この場合は、夫は67歳の12月分から配偶者加給年金は停止になります。12月15日の年金支給分(10,11月分は支給)は通常に配偶者加給年金支給されます。
では次の場合はどうか。次はちょっと難しいので、気をつけてください。
・事例②
昭和26年5月生まれの夫(今年65歳)で、厚生年金期間が30年、国民年金が10年ある人。
昭和28年11月生まれ(今年63歳になる)の妻で、厚生年金期間14年、共済年金6年、国民年金5年ある人。
事例①の場合はまだ妻に年金が支給されていませんが、事例②は平成27年10月の被用者年金一元化前から、妻は既に14年分の厚生年金(60歳から)と6年分の共済年金(61歳から)を貰っています。
でもこの夫は問題無く来月分から加給年金(月額32,508円)が加算されます。共済年金14年分と厚生年金6年分の計20年分貰ってるのにです。
事例①はなぜ、妻が62歳になって、夫の加給年金が止まったかというと、共済年金分の老齢厚生年金の受給権発生により厚生年金と、この共済年金分が合算されて一つの老齢厚生年金となるタイミングが訪れるからです。
事例①の時に言った、厚生年金期間と共済年金期間を合算するのは、一元化法施行後に受給権が発生した時。一元化法施行後に年金額を改定(65歳時、退職改定時、離婚時分割による標準報酬月額の改定時)した時が、事例②にはまだ訪れていません。
だから事例②は、妻が65歳にならないと共済年金と厚生年金が合わさって一つの老齢厚生年金になるタイミングが訪れないから、共済年金14年分と厚生年金6年分の計20年分貰っていても夫の加給年金は止まらないわけです。
65歳を迎えた時に合算されてやっと一つの老齢厚生年金としての年金になります。なお、一つの老齢厚生年金となっても、共済年金期間分は今まで通り共済組合から、厚生年金期間分は今まで通り日本年金機構から支払われます。よって、夫の加給年金が消滅するのは、この妻が65歳を迎える平成30年11月の翌月分からとなります。
事例③
昭和25年5月生まれの夫(今月66歳)。最初の事例と同じく厚生年金期間が30年有り、国民年金10年で、平成27年10月からの一元化前の平成27年5月時点で65歳を迎えて既に配偶者加給年金受給中。
妻は平成31年11月生まれ。最初の事例①と同じく、厚生年金期間14年、共済年金期間6年、国民年金5年。
事例①の場合は妻の共済年金の受給権発生する62歳で、夫の配偶者加給年金の支給が停止しました。ですが、夫の配偶者加給年金が一元化前から付いてる為、期待権を確保(一元化が無かったならば妻に厚生年金期間、または、共済年金期間だけで20年以上無いから妻が65歳になるまで配偶者加給年金付き続けてくれるだろうという期待)する為、妻が65歳を迎えるまで配偶者加給年金は付き続けます。
だから妻が65歳を迎える平成33年11月を最後に、夫の配偶者加給年金は消滅します。
それで、妻が65歳になると夫の配偶者加給年金が無くなり、通常は妻の老齢基礎年金に振替加算44,900円(昭和41年4月1日以前生まれの人に生年月日に応じて加算)がプラスされる生年月日ですが、一元化後だし、65歳で本来の老齢厚生年金の受給権が発生して厚生年金期間と共済年金期間を合算して20年分になるので振替加算は支給されないです。この辺は気をつけましょう。
※振替加算額(日本年金機構)
事例④
昭和25年3月生まれの夫で、厚生年金期間が30年、国民年金が10年ある人。
昭和31年11月生まれの妻で、厚生年金期間5年、共済年金20年、国民年金5年ある人。
この夫婦の場合はどうかと言うと、夫は一元化前から配偶者加給年金は支給されています(平成27年4月分から)。事例③の夫には期待権の確保の為に妻が65歳になるまで付き続けました。しかし、この妻の場合は「元々、単独で共済年金期間が20年以上ある」から、妻が62歳を機に夫の配偶者加給年金は停止します。
配偶者自身に共済年金単独または厚生年金単独で20年以上あるから、一元化していようがしまいが、その単独20年分の年金貰い始めたら配偶者加給年金は止まるのは当然ですね。
どういう事例であるにせよ、配偶者が65歳になると配偶者加給年金390,100円も無くなってしまうから、「そんなに年金減らすとはけしからん」って思いがちではありますが、配偶者が65歳になると普通は配偶者自身に老齢基礎年金が支給され始めるので、夫婦の年金総額で見れば大体は増えてるもんなんです。
男性は、共済年金も厚生年金も年金支給開始年齢が同じですが、女性は厚生年金の受給権発生年齢と共済年金の受給権発生年齢が異なりますので気をつけましょう。
なお、加給年金は自動で付くわけではなく、年金請求の際等に戸籍謄本、世帯全員の住民票、配偶者の所得証明書が必要になります。
年金は必要に応じて都度改正されますから、損得が発生する場合がありますね。その損得を嘆くよりも、自分の年金を知ってちゃんと手続きをするのを忘れないことですね。