日本の年金制度は、現役世代が高齢者を支える仕組みになっています。仕組みができたのは現役世代が多く、高齢者が少ない時代でしたが、今では少子高齢化が進み、今後は一層高齢者の比率が高まっていくことが確実です。果たして今の若者が高齢者になった時に、年金を受け取れるのでしょうか?
年金制度自体が資金不足に陥った時には、政府が財政で助けてくれると期待されますが、頼みの政府も毎年の財政が大幅な赤字で、結果として巨額の借金を抱えています。
そこで、「若者は年金保険料を支払っても老後には年金が受け取れない」と考える人も少なくありません。今回は、この問題について考えてみましょう。
国民年金は全員が加入することになっているので、原則として誰でも65歳になれば毎月6万5,000円程度を受け取ることができます。ただし、払うべき年金保険料を支払わなかった場合は減額、もしくは年金ゼロになってしまいます。
サラリーマンの年金は、今少し手厚くなっています。夫がサラリーマンとして40年間平均的な収入で働き、妻が専業主婦の場合、夫婦2人で毎月22万円程度の年金を受け取れます。現役時代の所得が高い人ほど保険料も高く、老後の年金も多く受け取れます。
高齢者の年金受取額は、原則としてインフレになれば増加していくので、生活水準は一定に保たれることになっていますが、少子高齢化などの影響から、毎年0.9%ずつ増加幅が抑制されることになっています。これを「マクロ経済スライド」と呼びます。したがって、その分だけ年金が目減りすることになります。
さらに、5年ごとに見直しが行われるので、予想以上に少子高齢化が進んだ場合や経済成長率が予想以上に低下した場合などには、目減りのペースが早まることもあり得ます。
厚生労働省が2014年に発表した見通しでは、さまざまなケース分けが行われていますが、最も悲観的なケースでは、サラリーマン夫婦の年金額が2014年の21万8,000円から2055年には17万8,000円に減少するとされています。生活水準が2割程度低下する試算になっています。この試算には物価上昇は考慮されておらず、実際には物価の動きを勘案した年金額になります。
最も悲観的なケースでも、まだ前提条件が甘すぎるという人もいますが、年金が受け取れなくなるということではなさそうです。
ここからは予測です。万が一、厚生労働省の予測が大きく外れて年金がほとんど支払われないことになったと仮定してみましょう。政府は万難を排して年金の支払いを支援するはずです。なぜなら、年金が支払われないと、ほとんどの高齢者が生活保護を申請することになり、政府の財政はかえって悪化してしまうからです。
日本政府には、増税の余地が充分にあるので、最後の最後には大胆な増税が行われるでしょう。極端な話をすれば、相続税率を100%にすれば、高齢者の持っている資産は30年程度で国庫に入ります。日本では金融資産の多くは高齢者に保有されているので、それで十分な財政再建になるわけです。
もちろん、増税は相続税が良いのか所得税が良いのか消費税が良いのか、という点は充分な議論が必要ですが、何とかなりそうだ、というイメージはお持ちいただけたと思います。
これと異なる予想をしている人も多いことでしょう。そういう人々に対してのアドバイスは以下の様になります。
年金が受け取れないのなら、国民の多くが生活保護を申請し、それによって政府の財政が破綻します。
日本は世界一の債権国家なので、国としての破綻はなかなか無いでしょうから、年金を受け取れないと思う若者が多いがたぶん大丈夫でしょう。
現在は、国民年金の支給額は月額6万5,000円(年額約78万円)、サラリーマン夫婦の年金額は月額約22万円(年額約264万円)。原則としてインフレになれば「マクロ経済スライド」によって毎年0.9%づつの増加幅が抑制されて目減りしますが、物価上昇に伴って受取額は増えていきます。それに障害になれば障害年金、遺族になれば遺族年金になります。