40代から自覚が増えてくる「物忘れ」は、実は更年期によくある症状のひとつ。物忘れへの対策をとれば将来の認知症の予防にもなり、一挙両得です。脳によい生活の送り方を専門家に聞きました。
更年期の物忘れは、工夫次第で十分に対応可能だ。物忘れが多くなったと嘆くだけでなく、攻めのアクションを取ること。これが脳を元気にするコツといえそう。
「更年期の物忘れの中心は脳の『ワーキングメモリ』の機能の低下ですが、これは脳によい生活を送ることで比較的簡単に回復させることができます」と話すのはTVでもおなじみの脳科学者で人間性脳科学研究所所長の澤口俊之さん。
ワーキングメモリは「作業記憶」と呼ばれるもので、会話や料理、計算、予定などいろいろな作業や目的を遂行するために一時的に記憶したり、記憶を引き出したりする機能のこと。「その機能をできるだけ多く使うこと、そして運動や食事で脳を守り、鍛えることが重要。更年期の物忘れ対策も将来の認知症予防も、結局やるべきことは同じですから、脳にいい生活習慣を今から身に付けておくことをおすすめします」とのことです。
対策1:運動
体にも脳にも効果 ちょっときつめのウオーキングを
「物忘れ対策のイチ押しはこれ」と澤口さんが太鼓判を押すのが、ウオーキングなどの有酸素運動。
認知機能を改善させたり、認知症を予防したりすることがいくつもの研究から明らかになっています。ウオーキングで認知機能テストの点数がアップしたという報告もあります。
運動をすると体全体の血流がよくなり、脳を巡る血液量も増える。ワーキングメモリの中枢である「前頭前野」や記憶を司る海馬は、もともと血液量が特に多い場所なので、血流が低下すると老化も進みやすくなるそう。それを防ぐためにも、日常的な運動が欠かせないということだ。
いろいろな研究結果を総合的に判断すると、多少汗ばむくらいの早歩きを1回20分程度、週に3回以上続けるのが効果的。エアロビクスなどの有酸素運動でもOKだそうです。
また、日光を浴びて運動するとより効果的。光を浴びると、認知症の発症率を下げるビタミンDの合成が促されます。ビタミンDには、うつ病のリスクを下げる効果もあるので、日中の屋外でのウオーキングも時には必要なようだ。
対策2:食事
ビタミンDやベリー類、コーヒーは認知機能に効果あり
生活習慣病を防ぐようなバランスのよい食事が基本だが、個別の食品や栄養素の効果も明らかになっている。
近年の研究で認知機能への効果が確認されているのはコーヒー、ブルーベリーなどのベリー類、ビタミンDが代表的。
コーヒーはカフェインが脳によいそう。1日1杯以上飲むと、認知機能の低下が約半分に抑えられたという報告も。「飲む目安は1日1~3杯程度。ただし、甘くしすぎてはダメ。過剰な糖分はワーキングメモリの機能をを下げてしまうそうです。
イチゴやブルーベリーは、抗酸化作用が認知機能にプラスに働くそう。またビタミンDは不足すると認知機能の低下が早まるという報告がある。魚を積極的に食べたり、日光に当たったりしてビタミンDをしっかり補おう。
最新の研究では、腸内細菌と認知機能との関係も指摘されており、脳のためにも、腸内環境をよくしておくと良いそうだ。
対策3:会話
人と話す、孫の世話をする 孤独は脳の大敵
脳の機能を低下させないためには、脳を使うに限る。その代表がコミュニケーションだ。友人や家族との会話はとても重要。ワーキングメモリを存分に使いますから、脳も自然と活性化します。また、孫の面倒を見ることが女性の認知機能アップに貢献するという報告もあります。
ほかにも、本を読んだり、旅に出たり、いろいろな体験を積んだりすることも大切。これらは「認知的蓄え」と呼ばれ、多ければ多いほど認知症になりにくいともいわれている。
一方、よくないのは孤独。一人でぼーっとするのは脳の大敵。人間は社会的な動物ですから、人と交わるのが基本。人と直接話すのはもちろん、フェイスブックでたくさんの友人と交流したりすることも、脳にはよい刺激になるそうです。(日経新聞等より)
生活習慣や、ものの考え方ひとつで脳のストレスが増えてしまい、成長が妨げられるそうだ。そのためにも次の点を注意した方が良さそうだ。
①脳や体がお休みモードに入っていく遅い時間に食べる食事。
②人の悪口など、否定的な言葉を使ったとき、一番に聞こえるのは、自分の耳で、この「ネガティブワード」は、脳を鈍化させる。脳をいつまでも成長させたいなら、ネガティブな言動はできるだけ避ける。
③毎日決まりきったマンネリな生活では、脳が“慣れ”てしまい、働きが鈍化する。日常生活に変化を与えるだけでリフレッシュできる。
④肥満などの生活習慣病は、脳細胞が傷つく原因になるそうです。食生活に気をつけたりコンスタントに運動をしたりして、脳の成長を妨げないように気を付ける。
⑤日中、体を動かさないと、夜もいい睡眠が取れず、脳も休まらない。また、運動不足だと、運動を司る脳領域が活性化しないので、意識して体を動かす。
⑥女性の足首を立てて履くハイヒールは、足のほか肩や腰にもこりや痛み生む。痛みを感じるのは脳の思考系の領域。痛みが大きくなると、その分、判断力や思考力などが低下してしまうことを忘れずに。
⑦ゆっくり物事と向き合って考え、行動すると神経細胞の枝が伸び、各脳領域が連動して働くので、思慮の深さが育まれる。急ぎすぎていると感じたらペースダウンをする。
⑧いら立ちの原因はいろいろありますが、そのひとつが脳の同じ部位を酷使すること。脳内の血流が悪くなり、疲れから怒りっぽくなる場合があります。そんなときこそ深呼吸で気分転換をする。
⑨毎日の予定も、友人の電話番号も書いたり覚えたりせず、ケータイやスマホに頼り続けると次第に脳を使わなくなり、老化が進む。アナログな習慣も取り入れる。
⑩自分が心地よいこと、楽しいことを積極的に行うことで脳は成長していく。人の目を気にして、行動を制限すると脳は成長しにくくなるので「自分思考」を大切にしよう。
また、脳の神経細胞の数は、生まれたときが一番多く、年齢とともに減少しますが、脳細胞は、新しい刺激によって、年齢に関わらずどんどん発達します。そして、脳のネットワークが強化されると、脳は成長できるといいますね。