経済学に「財政的幼児虐待」という言葉がある。世代間格差を研究する米国の研究者が使って広まった言葉で、若い世代やこれから生まれてくる子どもほど、とてつもない借金を背負わされる、という意味だ。
かつては税金や保険料を納める働き手がたくさんいたから、お年寄りの老後を支えることもできた。1950年には65歳以上の高齢者1人に対し、現役世代(15~64歳)は12人いた。それが、今は2.5人しかいない。その分、若者に負担が重くのしかかる。
年金や医療、介護などに支払う保険料に対し、受け取れる年金やサービスには、世代間でどれほどの差があるのだろうか。
学習院大の鈴木亘教授(社会保障論)の試算がある。会社員の夫が平均的収入で40年間働き、妻が専業主婦の世帯をモデルにすると、一生を通じて損得を計算すると。1940年生まれは4,930万円、1945年生まれは、3,370万円、1950年生まれは2,150万円、1955年生まれは1,260万円、1960年生まれは610万円の「得」になるが、1965年生まれで差し引きゼロ。それ以降は損となり、1980年生まれは1,680万円、1995年生まれは2,920万円、2010年生まれは3,650万円の「損」になる。祖父母と孫世代で8千万円以上の差になる。
若い世代の負担はそれだけではない。国は膨らむ社会保障費をまかなうために、1,030兆円もの借金を重ねている。これも、将来世代に回されるツケだ。
高齢化は昔からわかっていたことだ。「現役世代が高齢者を支える今の仕送り方式から、自分で老後に備える積み立て方式に変えるなどで、政策で対応できた」(鈴木氏)はずだが、後手に回っている。
若い世代に負担が偏る背景には、若者の政治への関心の低さがあるかもしれない。総務省によると、昨年末の衆院選の投票率は、20代の32.6%に対し、60代は68.3%。いきおい、政治家は高齢者に痛みの少ない政策を選びがちだ。鈴木氏は「若者がお任せ民主主義を続けていると、自分たちがどんどん損する方向にものごとが決まっていく」と警告する。
格差は同じ世代の中にもある。生活保護の受給者209万人(2012年)のうち、60代以上が半数を占める。高齢者がみな裕福、というわけではないのだ。
こうした世代内の格差は、教育を通じて子の世代に引き継がれやすい、と指摘される。親の年収が高いほど、全国学力調査の正答率が高く、4年制大学への進学率も高いとの研究報告もある。放っておけば世代間で連鎖し、「格差の固定化」につながりかねない。(朝日新聞等より)
どんな方法を取っても、不平不満が出て来るものと思うが、先が読めないし、人の寿命が解らなかったが、今の状況を見れば、社会保障の世代間格差は酷いようだ。
1940年生まれと比較すると、10歳違うと2,780万円、20歳違うと4,320万円、30歳違うと4,890万円、40歳違うと6,610万円、50歳違うと7,550万円、60歳違うと8,170万円。これは、少子高齢化と言えども異常値だろう。
頭が良いと言われる官僚が考えてこの程度なのだから、生まれた世代が悪いと済まされる話では無いと思う。