2015年の外国為替市場が幕を明けた。市場参加者の間では今年も円安の流れが続くという声は多いものの、単純に昨年後半のような円安局面が続くと見込む向きは少ないようだ。今後予想される円安の要因について、すでにそれなりに織り込んでしまったとの見方もある。日本経済がどこまで円安を許容できるのか、という大きな問題も影響する。円相場は遠からずどこかで均衡点をみつけるのか、それとも、ずるずると下げていくのか。日本経済の行方も左右する運命の1年となりそうだ。
2000年以降の円相場(東京市場)の月ごとの値幅を調べてみたところ、昨年前半の値動きは極めて小さかったことが裏づけられた。最も小さい値幅だったのは、2011年12月の70銭だが、昨年6月(1円56銭)はそれに次ぐ小ささだった。全180カ月のなかで値幅の小さい順から数えて2、4、9、13番目の月が昨年2~7月に集中しており、いかに膠着感が強かったかがわかる。
一方、年後半は10月(5円76銭)、11月(5円70銭)が値動きの大きい順から数えて30、31番目に食い込むなど、一方的な円安が変動幅の急拡大をもたらした。その後、昨年末にかけて1ドル=120円を下回る水準に入ると、円売り・ドル買いの勢いは鈍った。
元財務官である国際協力銀行の渡辺博史総裁は、昨年12月下旬時点で「120円前後はやや下がりすぎ」との見方を示していた。利上げの準備に入った米連邦準備理事会(FRB)と、積極的な金融緩和の手綱を緩めるわけにはいかない日銀。円安の根っこには、そんな日米の金融緩和姿勢の違いがある。もっとも昨年後半の急激な円安の過程で、FRBの利上げ路線そのものはおおむね相場に織り込まれてしまったというわけだ。
しかも、原油安が米国のインフレ率を鈍らせる要因に働く。FRBのイエレン議長にとっては、雇用の「質」をはじめ、経済の足腰が金融の正常化に耐えられるほどしっかりしてきているのかどうか、じっくりと見極められる時間的な余裕が生まれたともいえる。
ここで、日米金利差(長期国債利回りの日米差)をみてみると、2年債でみた金利差は拡大基調が続いている。さすがに遅くとも年内のどこかでは利上げが見込まれるという流れのなかで、償還までの期間が短い米2年債の利回りには自然と上昇圧力がかかってくる。日本の2年債利回りはマイナス圏に突っ込んできた。
一方、10年債では違った風景が広がる。日本の金利は過去最低圏にまで下がっているが、米国の金利もなかなか上昇軌道に乗らず、金利差が拡大する状況にはなっていない。米長期国債への資金流入が続くなかで、米株価も堅調を維持する。潤沢なマネーを背景にした、ぬるま湯のような「金融相場」がまだ続いている。「業績相場」への脱皮に向けては、金融市場の混乱をある程度は覚悟する必要があるかもしれない。だとすれば、昨年後半のような一本調子の円安・ドル高は期待しにくい、という見方も成り立つようだ。
日本経済がどこまで円安を許容できるのか、という点も、相場の均衡点を探るうえで大きなポイントになるだろう。
2014年は円安の痛みが意識された1年だった。今年こそ輸出の数量が増え始め、「円安→輸出増→生産増→賃金上昇→消費増」という好循環が本格起動するのかどうか。ここがアベノミクスの命運を握る。このメカニズムが動き出さないまま、さらなる円安に向けた流れが強まった場合、「円買い介入」の是非も含め、円安を食い止めるべきだという議論が強まってもおかしくはない。その場合、企業収益の拡大のエンジンを円安以外の何に求めるのか、という問題も生じる。
米国の米連邦準備理事会(FRB)が、量的緩和の終了を決めたことで、日銀は動かないとみられていたが、間髪を入れず予想外の金融緩和を決めたことで、市場に衝撃を与え一段の円安になった。これにより、フィリピンでも円安ペソ高となり、老後を海外で滞在している人たちも影響が出た。
「円安→輸出増→生産増→賃金上昇→消費増」という好循環が起動しても、すでに生産設備を海外に移しており、どれほど効果が有るか解らない。下手をすれば、円安によるマイナス効果で出て、日本国内でも生活が圧迫されるかも知れないですね。