三菱自動車は、フィリピン・ラグナ州にある米フォード・モーターからフィリピンの完成車工場を買収する。買収額は数10億~150億円とみられる。フォードが2012年12月に撤退した多目的スポーツ車(SUV)の工場を再利用、工場を新設する場合に比べ投資を半分程度に抑制する。三菱自はフィリピン、タイ、インドネシアでそれぞれ生産を増強し、東南アジアで中間層を中心に高まる自動車需要を取り込む。
三菱自はフィリピンに1972年に建設した年産3万台の既存工場を持つが、設備が老朽化しており新工場の建設計画を進めていた。米フォードが撤退したことを受け、マニラ近郊のラグナ州にある工場の設備と建屋、土地を買い取り、2015年1月より生産を始める。
三菱自が買収する工場の年産能力は約4万台とみられる。フィリピンの新車の自動車需要は年間約21万台にとどまるが、足元では経済発展に伴って中間所得層の拡大で今後の需要増が見込まれるため、新工場が不可欠と判断した。
新工場では、現地向けミニバン「アドベンチャー」やSUVの「モンテロ・スポーツ」やセダン、商用車等を生産し、将来的には生産能力を10万台まで増やしたい考えのようだ。
現在、三菱自は2013年にフィリピンで前年比約24%増の4万2,360台を販売し、トヨタ自動車に次ぐ2位(20.5%)の市場シェアを持つ。3位の韓国・現代自動車が迫っており、生産増強で引き離すようだ。
また、フィリピンを含む東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国の自動車市場は12年の約320万台から25年には約500万台に拡大する見通し。現在は日本勢が約8割のシェアを持つ独壇場だが、ここにきて独フォルクスワーゲン(VW)や現代などの海外勢が攻勢をかけている。
そして、三菱自の世界販売は13年度見通しで107万台。このうちフィリピンを含むASEAN域内は約25%を占める重点地域でシェアは約8%。VWや現代などの追撃をかわすためタイに第3工場を新設し年産能力を50万台に高めた。インドネシアでも新工場の建設を計画しアジアシフトを加速している。新たにフィリピンに新工場を取得し、東南アジア域内で生産の相互補完体制を充実する。
尚、フォードはフィリピンに加えオーストラリア工場の閉鎖を決めるなど不採算市場を撤退・縮小する一方、北米や中国で販売を増やすなど選択と集中を進めている。(Nikkei等より)
貿易自由化が進む東南アジア(アセアン)で自動車産業の明暗が分かれつつある。タイやインドネシアはトヨタ自動車などの増産により過去5年で国内生産を倍増させた。ベトナムでは韓国・現代自動車がエンジン生産を撤回しフィリピンも輸入車に押される。2015年の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の発足でモノづくりの国境は無くなり、「1つのアジア」を目指して自動車生産の大再編が始まりそうだ。
すでにフィリピンは輸入車に市場を席巻されている。ASEAN共同体の核となるASEAN自由貿易地域(AFTA)に先行して加わり、域内関税は2010年に撤廃された。2013年の新車販売は前年より15%増え、過去最高の約21万2千台で6割強を輸入車が占める。ここ15年間で輸入車は10倍になったが国産車は年5万~8万台程度だ。
フィリピンの自動車産業の生き残りを掛けて挽回ができるかは、市場が年50万台以上にならないと難しいようだ。