アジアの航空業界でパイロット不足が顕在化している。世界中でパイロット不足が叫ばれる中、アジア・太平洋地域の旅行需要は今後20年で現在の2倍に伸びることが予想される。こうした旺盛な航空需要に対応するためには増便が欠かせず、航空各社はパイロットの確保に頭を抱えている。
アジアの航空各社は旅行ブームを起爆剤に、航空機を追加で導入するなど事業拡大に奔走している。同時に、各社はパイロットの人員拡充を急いでいるものの、旅行需要の伸びに追いついておらず、各国でパイロットの数が不足する事態に陥っている。
世界で最も急速に成長する航空市場であるインドも例外ではない。インド最大の格安航空会社(LCC)インディゴでは2月上旬から毎日数十便もの欠航が続いている。航空業界関係者の間ではパイロット不足が原因ではないかとの見方が広がっている。
インディゴは2月13日に49便の欠航を発表し、3月末まで1日約30便を欠航。同社は欠航の理由に「悪天候」や「空港の規制」を挙げた。しかし、ある業界関係者は、欠航の背景には急速な事業拡大にパイロットの数が追い付いていないことがあると指摘されている。
インド航空市場の覇権争いに勝ち抜きたいインディゴは、この4カ月間で欧州エアバスの小型機「A320ファミリー」を19機導入した。コンサルティングなどを手掛けるアジア太平洋航空センター(CAPA)インディアによると、インディゴは2019年度(19年4月~20年3月)に少なくとも40機を新規に導入するという。
もっとも、航空機を追加導入すれば、航空機を操縦するパイロットも追加する必要がある。タイ・チェンマイ在勤の航空コンサルタント、モハン・ランガナタン氏はインディゴの事業拡大戦略について「パイロットを確保せずに無計画に航空機を増やせば、コストが増加するだけだ」と手厳しい。
一方、台湾の航空大手チャイナエアライン(中華航空)ではストライキという形でパイロット不足の問題が表面化した。中華航空のパイロットは待遇や人員増といった労働条件の改善を求め、2月8~14日の間にストライキを実施した。同社の広報担当によると、ストにより同社の運航便のうち60便以上が欠航を余儀なくされたという。ストは中国の旅行ブームがピークを迎える春節(旧正月)連休期間に重なり、数千人もの乗客に影響が及んだ。
中華航空のパイロットは以前から長距離便の人員不足で過重労働を強いられており、労働組合は企業側にパイロットの労働環境や待遇の改善を要求した。同社の試算によると、ストにより8日からの3日間で約7,800万台湾元(約2億8,240万円)の損失が出たという。
米航空機大手ボーイングは今後20年の新造機の納入数はアジア・太平洋地域が世界全体の40%を占め、同地域で約25万人の新規パイロットが必要になると予想している。アジアの航空各社にとってパイロットの確保は喫緊の課題と言えそうだ。(Sankei-Biz等より)
格安航空会社が増え、既存航空会社と競争や棲み分けに忙しい航空業界。世界中で搭乗客数が増えている。その対応は航空機だけを増やしても、パイロットだけでなく、優秀な整備士の確保が保てなければ、安全な飛行はできない。航空会社はそれらの確保が喫緊の課題であるのは間違いないようだ。