フィリピン中央銀行(BSP)は6月21日、13年第1四半期(13年3月末)及び第1四半期(1~3月)の国際総合収支を発表した。
フィリピンの貿易収支は慢性的赤字にもかかわらず、赤字額を大幅に上回る海外フィリピン人就労者(OFW)送金により、経常収支は黒字というパターンが定着している。OFW送金の威力による経常収支の黒字継続がフィリピン経済の特色であり、ペソ高、株式市場の高パフォーマンスの大きな要因となっている。また、フィリピン格付けの投資適格への引き上げの大きな要素ともなっている。
[2013年第1四半期の国際総合収支動向]
経常収支の黒字は前年同期比8.8倍の34億0,800万米ドル、対GNI比、対GDP比は4.4%、5.3%でそれぞれ前年同期の0.6%、0.7%から急上昇した。貿易赤字が前年同期比43%縮小、サービス収支黒字が19%拡大した。さらに、海外フィリピン人就労者(OFW)送金が同6.2%増の56億4,900万米ドルに達し、貿易赤字の27億3,300万米ドルの2倍強となり、経常収支黒字の原動力となっている。
経常収支黒字の大幅拡大や金融収支赤字69%減少などにより、国際総合収支(BOP)の黒字は23.5%増の15億3,500万米ドルと二桁増加した。対GNI比、対GDP比は2.0%、2.4%でそれぞれ前年同期の1.8%、2.2%から上昇した。
国際総合収支拡大により、第1四半期末の外貨準備高(GIR)は前年同期末比10.3%増の840億米ドルに達した。これは輸入の11.9カ月分に相当する水準。また、原本ベース短期負債の約9.9倍、残存ベース短期負債の6.3倍に相当する水準である。
[国際総合収支発表について]
フィリピン中央銀行は国際収支(BOP)積み上げ方式統計に関して、2003年10月にそれまでの毎月発表から四半期毎の発表へ変更することを決定した。これは、統計内容の確認、モニター、調整を強化し、より精度の高い統計を発表することが目的である。
ただし、中央銀行は、毎月、純外貨準備高(NIR)の変動から算出した国際総合収支推計速報値を発表している。ちなみに、最新数値は、6月19日に発表された2013年5月及び年初5カ月間の速報値。それによると、年初5カ月間の黒字は前年同期比44.7%増の18億8,400万ドルであった。しかし、上記のような積み上げ方式の国際総合収支発表は四半期に1回のみである。
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的赤字であるものの、経常収支は2003年に黒字転換、その後黒字は拡大を続け、2009年には93億5,800万米ドルという史上最高の黒字を記録、対GNI比は4.2%、対GDP比は5.6%に達した。その後も高水準の黒字を維持している。
一方、国際総合収支は2005年以降黒字が定着、2010年に143億800万米ドル、対GNI比5.4%、対GDP比7.2%という史上最高の黒字を計上した。貿易収支の赤字をOFW送金が完全に埋め切り、経常収支や国際総合収支を黒字に維持するというパターンが定着している。
フィリピンのOFW送金の威力は凄くて、貿易赤字額の倍以上ある。この送金によって、旺盛な消費経済が成り立ち、経常黒字対GDP比率は5.3%(前年同期0.7%)の数字や、フィリピンの投資適格の格上げにも寄与している。言わば、OFW頼みのきらいがあるので、将来に向かってては、OFWだけでなく、国の産業を育成して国力の強化が必要ですね。