大切な老後資金を守り、増やすためにはどうすればいいのか。だれもが直面する悩ましすぎる10大テーマの一つである「定年後も働くなら、再雇用か、再就職か」--。
60歳の定年後も希望者全員を雇用する「高年齢者雇用安定法の改正」が2013年4月に施行され、もうすぐ5年が経つ。高齢者の就業者数は13年連続右肩上がりで、2016年には過去最高の770万人を記録。統計にもよるが、再雇用を望む高齢者は6~8割にのぼる。
これまで企業にヒアリングしてきたところ、定年後の給料は定年前の6~7割程度になるケースが多く見られた。大企業の場合、再雇用で子会社に行き、給料が5割減になることもある。法的には最低賃金をクリアしていれば問題ないのだが、あまり下げてしまうと本人の士気が下がってしまうため、この水準になっている。
定年時の賃金を10割とした場合の比率。企業規模別に見ると、従業員1,000人以上の企業は、6割未満が51.5%と半分を超える
賃金だけではなく、仕事内容も変わる。かつては管理職だったとしても、異動先では補佐や補助の役職に割り当てられて、一線からはずれることは少なくない。いくつか訪問した企業でも、若手社員を引っ張ってバリバリ仕事をしている人には出会わなかった。
それでは再就職はどうかといえば、こちらの現実はさらに厳しい。ハローワークに行って55歳以上の就職支援を確認すると、警備、清掃、ケアスタッフ、業務アシスタントなどの募集が目につく。体力のある世代とは異なり、シニアは最低賃金に近い採用になる。現在、東京都の最低賃金は時給958円、地域によっては同730円台という状況で、新天地で活躍する夢を描くのはかなり難しいだろう。
もし再就職を考えているのであれば、定年後に動くのではなく、定年前から人脈を築いたり、職業技術を磨いたりするなど、準備しておく必要がある。それでも大企業で働いていた人が、その後、中小企業に行ったとしても活躍できるとはかぎらない。中小企業は社長やオーナーの個性が色濃く出ている職場風土や就業ルールであることが多い。大企業で稟議書作成や社内調整が得意だったとしても、再就職先では社長のトップダウンで物事を進めていて、力を発揮できない場合もあるのだ。
まったく新しい環境で一から仕事を覚えることは、高齢者には大きなリスクである。カルチャーが違うことを理解して、そこに挑戦できる若い発想と心意気がある人は馴染めるかもしれないが、そうでないと「こんなはずじゃなかった」と後悔の日々を送りかねない。そう考えると、それまでの賃金や仕事の内容から変わるというストレスがあったとしても、再就職よりも再雇用が無難と言えるのではないだろうか。
再雇用で減額の幅が大きかったときは、差額を埋め合わせる制度「高年齢雇用継続給付金」を利用したい。60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金の61%以下まで落ちた場合、65歳の誕生月まで月賃金の15%、61%超~75%未満でも一定の割合で支給される。退職後に失業保険を受けた人が再就職した場合、一定の要件をクリアすれば、「高年齢再就職給付金」として、2年間、最大で賃金の15%が支給されることもある。
やりがいと給与の両立は難しい。自分が60歳になったとき、どのような状況に置かれているか。30~40代の早い時期から仕事、家族、貯金などを想定して考えておくべきだろう。(Sankei-Biz等より)
30~40代の早い時期から仕事、家族、貯金などを想定して定年後のことを考えている人は本当に稀だと思う。年金に関してもピンと来ない時期なので当人にとっては難しいが、人生80年や100年と言われるので、頭の片隅には置いておかざるを得ないですね。