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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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肉体疲労と頭の疲労は同じ!

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 「疲労大国」といわれる日本。「頑張って仕事や運動をすれば、ある程度疲れるのは当たり前」あるいは「休む間もないほど忙しいが、やり甲斐があるから、さほど疲れは感じない」などと思っている人も多いかもしれない。だが、睡眠時間を削るような働き方を続けていると、知らぬうちに疲れはたまる。結果、「寝てもなかなか疲れがとれない」という状態に陥るばかりか、免疫力の低下や、生活習慣病の発症につながることは多くの研究で知られている。
 
 長時間ジョギングをしたり、暑い中、営業で走り回ったり、四六時中座りっぱなしでデスク作業をするなどして「疲れた」と感じたとき、体の中のどこが最も疲れているか、考えたことはあるだろうか。
 
 「デスクワークだと脳だろうけど、運動の後なら、そりゃ筋肉でしょう」など、運動の場合とデスクワークの場合では疲れる部位は違うという意見が大半を占めそうだ。だが、実は、両者の疲れは同じで、どちらも「脳」の疲れだ、と東京疲労・睡眠クリニックの院長・梶本修身さんは話す。
 
 デスクワークが脳の疲れというのは理解できるが、運動による疲れが、筋肉ではなくて脳の疲れとは、一体どういうことなのだろうか。
 
 日本では1990年代から、国を挙げて疲労の謎を科学的に解明する研究が始まり、疲労の度合いを定量化する試みなどが進んできた。その一つ、梶本さんがリーダーを務めた産官学連携のプロジェクトで、96名の健康な人を対象に、運動時や、デスクワークなどの精神作業時に、どこにどのくらい疲労が生じているかを計測する負荷試験を行った。その結果、スクワットなどの筋肉をいためつけるような一部の激しい運動を除いて、自転車こぎやジョギングなどの有酸素運動を4時間やった程度では、筋肉はほとんどダメージを受けないという結果が出たのだという。
 
 では、体の中のどこが最も疲れるのかというと、答えは前述した通り「脳」。厳密にいえば、「脳の中にある自律神経の中枢」である、視床下部や前帯状回(ぜんたいじょうかい)と呼ばれる部位だ。
 
 自律神経は、呼吸や消化吸収、血液循環、心拍といったほとんどすべての生体活動を調整している神経系。体を活動的にする「交感神経」と、体を休息させる「副交感神経」の2系統がバランスをとりながら、呼吸や心拍なの生体活動を一定範囲内に安定させている。この自律神経の機能は、睡眠中でも安静にしているときでも、24時間、生命が続く限り働き続けている。
 
 そして、運動を始めると、自律神経の働きにより、数秒後には心拍が上がって、呼吸が速く大きくなり、やがて汗をかく。これを運動中休むことなくコントロールしているのが、脳の中にある中枢(視床下部や前帯状回)であり、だからこそ、運動をしたとき、脳は体のどの部分よりも疲れるのだ。
 
 「運動時に起こる疲れは、運動で酷使しているはずの筋肉の疲労ではなく、多くは脳疲労です。運動を続けていると自律神経に疲労がたまり、あたかも筋肉疲労を起こしたかのようなアラームを発して運動をやめさせようとします。それが筋肉の疲労として感じられるのです」(梶本さん)
 
 自律神経に蓄積される疲れの要因は、一言で言うと「細胞のサビ」だという。運動が激しくなると、自律神経の中枢での処理が増え、その結果、体内で活性酸素が発生する。これにより脳細胞が酸化ストレスにさらされ、自律神経の機能が低下する。この状態が「疲労」につながるわけだ。
 

 ■自律神経に蓄積される疲れの要因は「サビ」

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 「疲労が蓄積すると、頭痛、めまい、耳鳴り、ふらつき、血圧の変動などの症状が現れます。これらは、まさに自律神経がダメージを受けたときに起きる自律神経失調症の症状と一致します」と梶本さん。このことからも、疲労が自律神経のダメージにより生じていることが分かる。
 
 つまり、私たちが日常「体が疲れた」と感じるときは、実は「脳が疲れた」状態だったのだ。肉体疲労と精神疲労のメカニズムは同じ。体のどこに負担がかかっても、多くの場合、疲労するのは脳だということが、長年の疲労研究の成果によって分かっている。
 
 これらのように、脳内にある自律神経中枢に疲労を起こす直接の原因の大半は、活性酸素による細胞への酸化ストレスだ。
 
 「疲労を起こす原因のすべてが酸化ストレスというわけではありませんが、仕事や運動などで活動したときには、多くの酸素を取り込み、体内に大量の活性酸素が発生します。多くの健康な人の疲れには酸化ストレスが大きく関わっています」(梶本さん)
 
 ■疲労感のメカニズム
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 ただし、「疲労」と「疲労感」は別物で、活性酸素が直接的に脳に疲労感をもたらすわけではない。
 
 脳内に活性酸素が発生し、酸化ストレスがかかると、細胞から老廃物の一種が排泄される。この物質の増加がシグナルとなり、体内に「ファティーグ・ファクター(Fatigue Factor)」と呼ばれるタンパク質(以下、疲労因子FF)が増える。「活性酸素の攻撃を受けて疲労因子FFが増えてきた」という情報が脳に伝わって疲労感がもたらされるのだ。
 
 この疲労感は、「活性酸素の攻撃を受けて、自律神経が疲れてきたから休息をとって」という体からの警告だ。
 

 本来、人間の体には、疲労に対抗するシステムが備わっており、「疲労感」という警告が出ると疲労因子FFに対抗する疲労回復因子「ファティーグ・リカバー・ファクター(FatigueRecover Factor)」(以下、疲労回復因子FR)が発生し、酸化された細胞の修復を始める。

 
疲労回復の方法は「睡眠」しかない!?
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寝ているときが疲労回復因子FRによる修復が損傷を上回る唯一のチャンスなので、疲疲を感じたら、休んで疲労を回復させなければならない。

 日中、活動を続けているときは疲労因子FFが出続けるため、疲労回復因子FRの修復が追いつかない。一方、夜間の睡眠中は、脳も自律神経も働きが抑えられるため、疲労回復因子FRによる修復が損傷を上回り、疲労が回復できる。
 
 したがって、疲れを感じたときは、睡眠をとることが大事だ。逆に、睡眠不足が慢性化すると、疲労因子FFに対して疲労回復因子FRの修復が追いつかなくなり、疲労が残って蓄積していくことになる。
 
 ちなみに、「疲労感」のアラームを無視して、あるいは、達成感や、やり甲斐などによって「疲労感」がマスキングされることによって、休む間もなく忙しく働き続けると、最悪の場合「過労死」ということになりかねないので要注意のようだ。
 
 話を疲労因子、疲労回復因子の話に戻すと、疲労回復因子FRの反応性には個人差がある。疲れていても6時間ほど熟睡すれば翌日疲れがとれる人はFRの反応性が高く、10時間寝ても疲れがとれないような人は反応性が低いと考えられる。また、加齢によっても疲労回復因子FRの反応性は低下するという。
 
 睡眠不足、加齢や、それに伴う睡眠の質の低下などによって、酸化ストレスによる細胞の損傷が睡眠で修復されにくい人は、疲れが残りやすく、慢性疲労に陥りやすい。そして、こうした疲労の蓄積が、すなわち老化につながる。
 
 疲れて荒れた肌をケアせずに放置すると、シミやシワができるように、脳の中の疲れもその都度ケアをしていかないと、老化を加速し、ひいては寿命をも左右することになるというわけだ。
 
 「老化を心配するなら、まず質の良い睡眠で、日々の疲れをしっかり解消することが先決です」との事。
 
 なかなか疲労が解消できない場合は、疲労専門のクリニックなどにお世話になるのが一策だが、そうした病院ではどのような検査を行っているのだろうか。梶本さんのクリニックでは慢性疲労を訴える人に対し、まずは次のような検査を行って疲労度を調べ、治療の方向性を探っていくという。
 
 ① 簡易型PSG(ポリソムノグラフィー)検査 ~睡眠の質を調べる
 睡眠に問題がありそうな場合は、まずは「簡易型PSG(ポリソムノグラフィー)」という検査で睡眠の質を調べる。かつて一泊入院して睡眠中の呼吸や酸素飽和度を調べていた終夜睡眠ポリグラフ検査が自宅で簡単に測れるようになった(健康保険適用で3,000円程度)。
 
 この検査で、睡眠時の無呼吸・低呼吸や低酸素状態のほか、いびきをかいている、いびきまでいかないが眠りが浅い、などの問題を判別することができるようだ。
 
 特に、男性は大きないびきで気づかれることが多いが、女性の場合、もともと肺活量が少ないので、寝息くらいの音でも実際に測定してみると酸素飽和度が減少している場合も少なくない。
 
 「女性の場合、貧血と低血圧を合併していることもあります。その場合、もともと血液で運べる酸素量が少ないですから、睡眠中も心臓や自律神経は相当頑張らなければなりません。男性より重症化しやすい可能性がありますから、いびきの音で判断するのではなく、睡眠の質をきちんと調べてみることをおすすめします」との事。
 
 ② 自律神経機能検査 ~自律神経のポテンシャルを調べる
 指先のセンサーから心拍・脈拍を計測してその変動を解析する機器に、約2分間、左右の人差し指を差し込み、交感神経と副交感神経の働きの比率や、自律神経機能を測定する。もともと持っている自律神経のポテンシャルを見るのに役立つ。
 
 「自律神経の機能には個人差があります。また、同じ人でもこの検査をしてみると、年齢を重ねるほど自律神経の機能が低下するといった相関がはっきりと分かります」(梶本さん)
 
 ③ ヒトヘルペスウイルス量の測定 ~疲労の蓄積度を調べる

 外からは分かりにくい疲労の度合いを客観的に証明する指標として、必要な場合には「ヒトヘルペスウイルス量」を測定する検査を行うこともある。

 
 疲労因子FFが長期間増加していることを、体内に潜んでいるヒトヘルペスウイルス(6型、7型)が感知すると、唾液や皮膚などに出現する。この性質に着目して、唾液中のヒトヘルペスウイルス量を調べると、疲労の蓄積度が分かる。
 
 「実際に疲労を起こすのは疲労因子FFですが、これは鋭敏すぎて、ちょっとしたことですぐに数値が変動するので臨床には向きません。ヒトヘルペスウイルスは、FFが増えすぎると体外へ逃げ出そうとして、唾液中の値が上がってきます。FFの反応をモニタリングしているようなものなので、ある期間の疲労度を見るのに適しています」との事。
 
 「慢性疲労を訴える人の中には、いびきなど睡眠に問題を抱えている人が多い」と梶本さんは指摘する。日中の食事や環境などに注意することで疲労を起こしにくくする方法もいくつかあるが、疲労因子FFと疲労回復因子FRのメカニズムからも分かるように、疲労回復を左右する最大の要素は「睡眠の質」と言う事だ。(日経グッデイ等より)





 昔から、「寝る子は育つ」と言われているが、子供だけでなく誰にでも言えることのようだ。充分な睡眠を取りましょう。












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