梅雨が明けて本格的な夏の到来だ。今年は猛暑なので、熱中症には十分に注意したい。今回は、熱中症と関わりの深い「水」について取り上げる。水はヒトの体の最大の構成要素であり、生命維持に不可欠な成分だ。その水と汗のことを知れば、熱中症対策が見えてくる。子どもや高齢者が熱中症になりやすい原因も、体内の水分量が関係していた!
日本体育協会の『熱中症予防のための運動指針』によると、気温が31℃以上では運動は「厳重警戒」、35℃以上では「原則中止」となっている。日本の夏は31℃を超える日は珍しくない。果たして競技は可能なのか。選手はもちろん、見物客の熱中症対策は急務だろう。
熱中症予防のための運動指針
日本体育協会HPより抜粋、※同じ気温でも湿度が高ければ、1ランク厳しい環境条件の注意が必要。
運動中の熱中症には、大量に汗をかいたときに水だけを補給することにより、血中のミネラル濃度が低下して起こる「熱けいれん」、発汗による脱水と皮膚血管の拡張により脱力感、倦怠感、めまいなどの症状が出る「熱疲労」、体温上昇のために脳機能の異常をきたし、意識障害などがみられる「熱射病」がある。
熱中症は気温が高いほどリスクが高くなる。また、運動強度が高いほど筋肉での熱産生が多くなるため、リスクが上がる。つまり、真夏にマラソンなどの運動を行うことは非常にリスキーというわけだ。
ところが、気温や運動強度がそんなに高くなくても熱中症は起こる。梅雨の合間に突然気温が上がった日や、梅雨明け後の蒸し暑い日は熱中症が起こりやすい。これは、まだ体が暑さに慣れていないため、上手に発汗できないことが原因だ。
私たちは、気温や体温が高くなると汗をかく。汗の水分が皮膚上で蒸発するときに熱が奪われ、体温が下がるのだ。つまり、汗をかかないと体に熱がこもってしまうため、熱中症になりやすくなる。
特に、普段運動をしていない人は、汗をかく習慣がないため熱中症になりやすい。暑さに慣れることを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」というが、「やや暑い」環境の下、「ややきつい」と感じる強度で、30分程度の運動(ウォーキングなど)を毎日続けると、2週間程度で暑熱順化が完成するといわれる。
肥満解消や生活習慣病予防のために運動を始めようと思っている人は多いだろう。しかし、今の時期に運動を始めるならば、いきなりの激しい運動は御法度。“まずは暑熱順化から”と肝に銘じよう。
私たちは汗をかくことで体温調節をしているが、汗をかくと水と一緒にナトリウムをはじめ、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが失われる。
「大量に汗をかいたときに水だけを大量に補給すると、“水中毒”と呼ばれる状態を引き起こします。これは、体液のミネラル濃度が薄まることが原因で、吐き気や嘔吐、けいれんなどが起こったり、ひどい場合は命を落とすこともあります。激しい運動をする場合は、ミネラルを含むスポーツドリンクを利用したほうがいいでしょう」との事。
また、一度に大量の水分をとっても吸収できる量は決まっているため、こまめに飲むことが大切だ。環境条件によっても変化するが、運動中は15~20分ごとに200~250mLの水分摂取休憩をとると体温の上昇が抑えられるという。
ちなみに、運動中の水分は5~10℃の冷たいものが適している。冷たい水分は深部体温を下げる。また、胃に留まる時間が短いため、小腸に素早く到達して吸収されるためだ。
水はヒトの体の最大の構成要素であり、生命維持に不可欠な成分。「栄養素の代謝をはじめ、体内での生理化学反応は体液中で行われます。つまり、水は生体に化学反応の場を与えているといえます。水なしでは生命活動に必要な反応が起こり得ません」と言います。
汗が体温調節に役立っていることは前述したが、「水は主に血液の成分として、栄養素や酸素などの物質を溶かし込み、全身に運ぶ役割を担っています。一方で、生体内で生じた老廃物や炭酸ガスを細胞から運び去り、尿として排泄する役目も果たしています。」そして、体内に含まれる水の割合は以下の通り。
体重当たりの水分量
新生児 | 80% |
乳児 | 70% |
幼児 | 65% |
成人男性 | 60% |
成人女性 | 55% |
高齢者 | 50~55% |
環境省『熱中症環境保健マニュアル2014』より
子どもは体の水分量が多い。それは、成長期は物質代謝が盛んなため、そのための場となる水が多量に必要になるためです。成長が進むにつれ、また、老いるにつれて水分の割合は減少します。
水分の割合は個人差も大きい。例えば、体脂肪が多いと水分の割合は小さくなります。これは、脂肪組織に水分が非常に少ないためで、男性に比べて女性の水分割合が小さいのはこのためだ。
体内の水分の絶対量が少なく、かつ割合が大きく、代謝が活発な乳幼児は、暑い中で汗や蒸発によって水分が失われると容易に脱水症状を起こすので注意が必要だ。また、高齢者は体内の水分量が少ない上に、のどの乾きを自覚しにくいので、のどが渇いていなくても積極的に水を飲む必要があるようだ。
ヒトが体内で利用する水は、飲料水、食事中の水分、代謝水(糖質、たんぱく質、脂質が体内で分解され、燃焼するときに生じる水分)からなる。一方、水の体外への排泄は尿・便、不感蒸泄(皮膚や呼気からの蒸発)を通じて行われる。
水分の摂取量と排泄量の目安(体重70kgの人が穏やかな環境で普通の生活をしている場合)
摂取(ml/日)
· 飲料水:1200mL
· 食物中の水分:1000mL
· 代謝水:300mL 合計2.5L
·
排泄(ml/日)
尿・便:1600mL
· 呼吸や汗:900mL 合計2.5L
· 環境省『熱中症環境保健マニュアル2014』より
通常、摂取と排泄は量的に釣り合っています。健康な人の場合、のどが乾いたときに水を飲めばOKですが、食事からの水分量が少ない人は飲料水を多く飲まなければいけませんし、スポーツで汗をかいた場合は摂取量を増やす必要があります。
水の必要量は生活活動レベルが低い集団で1日2.3~2.5L程度、高い集団で1日3.3~3.5L程度と推定されています。しかし、その必要量を性別、年齢、身体活動レベル別に算定するための根拠が十分ではないため、『日本人の食事摂取基準2015年版』では水の摂取基準は示されていません。
ちなみにドイツでは、栄養疫学研究(観察研究)によって、成人(18歳以上)では年齢にかかわらず、目安量は男性1日2,910mL、女性1日2,265mLとなっているという。
水の摂取源は、欧米諸国では食物由来がおよそ20~30%、飲料水がおよそ70~80%と報告されています。しかし、日本人の場合、水分含有量が多いごはんを主食とし、ごはんにみそ汁を添えたり、麺類を汁とともに食べたりするため、パンを主食としている欧米諸国よりも食物由来の水分の割合が高くなると予想されます。
また、発汗量は気候とも関係します。これらの理由から、欧米諸国の水分摂取目安量を日本人がそのまま利用するのは難しいようだ。
現状、日本には水の摂取基準はないが、厚生労働省では『健康のために水を飲もう』推進運動を行っていて、熱中症や脳梗塞などの予防のために、「目覚めの1杯」と「寝る前の1杯」で、今よりもあと2杯多く水を飲むことをすすめている。
仕事の後や運動後のビールは最高においしいが、水分補給という意味ではNGだ。アルコールを含む飲料は利尿作用があり、飲んだ量よりも尿が多く出てしまうので脱水になりやすい。カフェインを含むものも同様ですが、通常の水分補給には緑茶などは利用してもいいでしょう。
水分補給のポイントをまとめると下記のようになる。
水分補給のポイント
・のどが渇く前にこまめに飲む。
・大量に汗をかいたらミネラルも補給する。
・1日1.2L程度の水を飲む。(水分が少ない食事の日は多めに)
・起床時、就寝前にコップ1杯の水を飲む。
・ビールで水分補給はNG。
上手な水分補給で猛暑を乗り切ってください。(日経グッデイ等より)
若い頃若さにかまけて3日連続の暑い日差しの中でのゴルフ等、いろいろやって来たが、今思えば若気の到りでも、身体に無茶なことをしていたのだと思う。やはり今後の健康のためには、身体を労わらないと駄目なようです。