働いている時にもし、何らかの怪我や病気で働けなくなったらどうしようという不安は誰しも持つと思います。ただ、昔からかもしれませんが、仕事を休むっていうのはなかなかやり辛いですよね。会社の人は快く思う人はそうは居ないかもしれないし、休めたとしても自分自身を責めてしまう。休んで申し訳ないって思ってしまう。
特に現代は精神疾患で休む人が急増しました。まあ、デフレは続くわ、労働時間は際限なく長くなるわ、成果第一主義みたいに時代が変わっていったせいでもあるのでしょう。特に、精神疾患に対しては周りの理解を得るというのはどうしても偏見があり、とても難しい事です。
病気をこじらせまくった末に休職というものを経験した事がある人は、医師の説得により、休むという決断をして、会社に相談し所定の手続きをするだけでも相当なパワーが要りました。周りの理解があればだいぶ救われますが、休職に入ってからもどことなく休む事に対して申し訳なさというのは付きまとってしまうようですね。
というわけで、今回は休職した場合のお金の問題についてです。サラリーマンや公務員の間に業務外の傷病で休職すると、健康保険または共済組合から傷病手当金という給付がされます。残念ながら国民健康保険にはありません。もちろん勝手に支給されるわけじゃなくて申請が必要です。普通は会社が手続きしてくれます。
業務上や通勤途中の傷病は、労災保険から休業補償給付というのでカバーされる。業務上の傷病に健康保険を使ったらいけません。傷病手当金は休み始めてから、4日目から支給対象になります。3日間は必ず連続して休む必要があります。有休使って休んでいてもカウントに含まれます。
それで、支給は原則として支給開始日から最大1年6ヶ月間。休職途中で一旦復職できても、その期間も1年6ヶ月間の中に含まれます。だから、1年6ヶ月分貰えるという意味ではないです。支給開始日から1年6ヶ月経ってないなら、復職後にまた同じ傷病が悪化した等で休んだらその分は傷病手当金が支給されます。金額は直近12ヶ月間の平均給与(平均標準報酬月額)の3分の2が支給される。
例えば、この12ヶ月間の平均標準報酬月額が300,000円で120日休んだら、
300,000円÷30日÷3×2(ここで1円未満四捨五入)×120日=800,040円。
日数分支給されるけど毎日振り込まれるわけじゃない。申請は毎月やって毎月支給してもらってもいいし、数ヶ月分まとめて申請して支給してもらってもいい。ただ、会社によって傷病手当金の締め日と支払日があるから会社に要確認です。
健康保険組合とかに加入してる人は、上乗せ給付(付加給付という)として大体10~20%くらい手厚くなる。なお、傷病手当金は労務不能である事が必要です。労務不能だったかどうかは医師が、その期間を傷病手当金支給申請書に意見と労務不能で休んだ期間を記入する。
また、退職後も支給はされますが、条件があります。まず、退職日までの直近1年間に継続して健康保険の被保険者でないといけません。そして、もっと気を付けないといけないのは、退職日にわざわざご挨拶代わりに仕事をしてはいけない。退職日くらいは無理してでもちゃんと出社して…なんて事をしたら退職後の傷病手当金は支給されなくなってしまう。これは、退職後の傷病手当金は退職日において労務に服する事が出来ない事が条件だからです。退職後の大切な収入を失う事になるので、うっかり退職日に無理やり出勤して働いたら駄目です。
また、退職後になんだか調子が良くなってきてアルバイトをし始めたとしても、そこで傷病手当金は打ち切りとなり(労務不能の条件が無くなるから)、再度悪化して休み始めても支給されないので社会復帰は慎重にしてください。そして、休職期間は傷病手当金が出るといっても期間は1年6ヶ月。それ以降も傷病の状態が続くのであれば、障害年金の請求を考えましょう。
障害年金は必要書類集めたり、やっと請求出来ても支給決定まで3~4ヶ月はかかってしまうために傷病手当金を貰い終えてからではなく、貰ってる間に請求できるならそれがベストです。
傷病手当金がなぜ1年6ヶ月間なのかというと、障害年金が初めて病院にかかってから原則として1年6ヶ月経たないと請求出来ないからです。障害年金請求出来るまでは、健康保険から傷病手当金で生活保障をしましょうというわけです。
あと、傷病手当金と障害年金を同時受給という形になると障害年金の金額分が傷病手当金から引かれてしまうからです。なお、傷病手当金を貰う原因となった傷病と関係無い傷病なら同時受給は出来る。また、国民年金から支給される障害基礎年金のみ受給の人も傷病手当金と同時受給が出来る。
このように傷病で働く事が困難になった場合は社会保険からの給付があるわけですが、会社に在籍中に体調不良になりなかなか病院に行く機会もなく、仕事能率が落ちて、「これ以上迷惑をかけられない!」と思って退職に踏み切る人もいるかもしれません。それで、退職後に初めて病院にかかって療養に専念するとかですね。
でも、できれば会社に在籍してる時に病院に行ってもらいたいところであります。なぜなら、会社に居て厚生年金に加入してる時に初めて病院に行くのか、厚生年金から脱退した後の国民年金加入中に初めて病院に行くかで支給される障害年金の金額に大きく影響するからです。
そうなんです。初診日が厚生年金加入中なのか国民年金加入中なのかで支給される障害年金額が変わってくるから、初めて病院に行った日というのはものすごく大切なんです。
皆さんが何気なく、初めて病院に行った日というのは、障害年金を請求する上で極めて重要な日なんです。だから初診日の証明になりそうな資料は必ず保管しておきましょう。一応、転院しても病院側は5年間はカルテの保存義務があります。
特に、病気なのか自分でも気付きにくい精神疾患は、単に自分が頑張ってないからダメなんだと罪悪感に苛まれてしまい、病院に行くという行動を躊躇い、病院行くなら退職後に…なんて考えてしまうと思います。
というわけで、厚生年金加入中に初めて病院行ったのと国民年金加入中に初めて病院行ったのではどのくらい違うのか比べてみましょう。
なお、毎回言ってますが年金は保険なので、病気で初めて病院に行くという「保険事故」が発生する前に、過去にあまり未納が多いと障害年金請求自体が出来ない場合があります。だから、国民年金保険料を安易に未納にするのは非常に危険なので、せめて国民年金保険料の免除制度を活用しましょう。保険料免除は未納ではないですから。
ちなみに初診日の前日において、初診日の前々月までに年金保険料を納めなければならない期間がある場合は、その全体の期間の中で未納期間は3分の1以下でなければいけません。それか、初診日の前日において初診日の前々月までの直近1年間に滞納が無ければ請求可能です。普通は手っ取り早くこの直近1年間に滞納が無いかを見ます。仮に平成29年7月20日に初診日があったら、平成29年5月から平成28年6月までに滞納が無ければクリアです。こういう保険料の条件を、保険料納付要件といいます。
なお、初診日当日に過去の未納分を納めても遅い。保険だから、保険事故が起きる前に保険料の条件満たすっていう事です。だから、「初診日の前日において」なわけです。
というわけで事例(保険料納付要件は満たしてるものとする)。
①.昭和57年7月28日生まれの男性(今月35歳)。30歳の生計維持している妻と、7歳と4歳と1歳の子有り。会社在籍中に精神に異常をきたし病院に行く(後に躁うつ病の診断)。
会社は辞めたけど、初診日から1年6ヶ月が経って障害年金の請求に踏み切る(1年6ヶ月経った日を障害認定日という。この日の障害状態で障害年金の等級に該当するかどうかを見る。この日から3ヶ月以内の症状の診断書を書いてもらう)。
1年6ヶ月からだいぶ期間が経っていても、この3ヶ月以内の受診記録があり、診断書を書いてもらえるなら請求は可能。障害認定月の翌月から直近5年以内なら障害年金が遡って貰える。
障害年金が発生するのは1年6ヶ月経った日の属する月の翌月分から(傷病の状態によっては1年6ヶ月待つ必要がない場合もある)。
障害認定日の属する月までの平均給与(平均標準報酬額)は350,000円で、過去の厚生年金期間は120ヶ月。
障害等級2級の審査結果(診断書は年金機構専用の診断書を医師に書いてもらわなければならない。病院専用のは不可)。
まず、障害厚生年金→350,000円÷1000×5.481×300ヶ月=575,505円
※注意:障害厚生年金は厚生年金期間が300ヶ月に満たない場合は300ヶ月で計算する。
ちなみに2級以上は国民年金から障害基礎年金779,300円(定額)も支給される(1級だったら1.25倍の974,125円。障害厚生年金も1.25倍にする)。
なぜ国民年金からも支給されるかというと、くどいようですが20歳から60歳になるまでの厚生年金期間や公務員期間とかは同時に国民年金にも加入してるからです。
そして、65歳未満の生計を維持している配偶者が居るから障害厚生年金に配偶者加給年金224,300円が加算され、18歳年度末未満の子が3人居るから障害基礎年金に子3人分の子の加算224,300円×2人+74,800円×1人(3人目以降は74,800円)=523,400円が付く。
よって、障害年金総額は(障害厚生年金575,505円+配偶者加給年金224,300円)+(障害基礎年金779,300円+子の加算金523,400円)=2,102,505円(月額175,208円)
一方、退職後の国民年金のみの加入中に初めて病院に行って上記と同じく障害等級2級になった場合は、障害基礎年金779,300円+子の加算金523,400円=1,302,700円(月額108,558円)となる。
なお、障害年金が支給され始めた後は1~5年間隔で定期的に診断書の提出が求められますが(永久に治らないと判断されれば定期的な診断書提出は不要の人もいる。つまり一生障害年金が支給される)、その結果障害等級が2級より下がって3級相当になった場合は、障害厚生年金貰ってた場合は今回の事例の男性なら584,500円(最低保障)のみ(3級は障害基礎年金やその他配偶者加給年金等の加算も無くなる)となり、障害基礎年金のみだった人は0円になる。
上記の事例のように大きな違いが出てくるので、初診日には気をつけましょう。
約200万人程の障害年金受給者が居る中で、7割くらいの人は障害基礎年金のみの受給者となっています。
障害年金はこの傷病じゃないと貰えないとかそういうものではなく、その傷病で「いかに日常生活に支障が出ているのか」という部分が重要視されます。だから日頃、日常生活で困っている事等は医師にしっかり伝える事が大切になってきます。
そして、障害年金を請求する場合は原則として1年6ヶ月経った日から3ヶ月以内の診断書を取ってもらいますが、その病状が障害年金支給に該当しなくても、その後悪化した場合は事後重症請求という形を取ります(診断書は請求日以前3ヶ月以内の現症のもの)。大体、障害年金請求は事後重症請求が多いようです。事後重症請求は必ずしも初診日から1年6ヶ月の認定日請求はしておく必要は無いですが、初診日は必ず必要です。
なお、1年6ヶ月経った日から3ヶ月以内の診断書を取って請求する障害認定日請求は請求が遅れても過去に遡って年金が支給されますが、事後重症請求は請求した月の翌月からの障害年金支給になるので早めに請求する事が重要になってきます。
ちなみに、障害年金請求は65歳になると原則として請求不可。特に事後重症請求は65歳(65歳誕生日の前日)になると完全に請求不可になる。障害年金を検討される場合はまずは年金事務所に相談か、社会保険労務士に相談するのが良いでしょうね。(MAG2NEWS等より)
※障害年金(日本年金機構)
自分の寿命が分からないように、何時傷病や障害を受けるかは分かりません。このような事を知っていれば、憂いも少しは安らぐかも知れないですね。