グローバル化が進み、海外移住が珍しくなくなってきた。ある調査では海外旅行や退職をしたときに、そう考える人が多いという。今回は海外移住の際の税務上の注意点を取り上げる。
まず問題になるのはビザの取得。国によってさまざまで、新興国は人を呼び込みたいため要件が緩い傾向がある。一方、人の流入を制限している先進国などは要件が厳しい。移住先として人気のあるマレーシア、フィリピンを例に、最も有名で取得しやすいビザを紹介しよう。
マレーシアでのロングステイにはMM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)が最適だ。50歳未満の人は約1,250万円以上(1リンギット=25円で換算)の財産証明と月額約25万円以上の収入証明、50歳以上の人は約875万円以上の財産証明と月額約25万円以上の収入証明が要件となる。
フィリピンではSRRV(Special Resident Retiree's Visa)クラシックが取得しやすい。国が指定する銀行に口座を開設し、50歳以上の人は約220万円(1ドル=110円で換算)、50歳未満の人は約550万円の米ドル定期預金を6カ月以上行うことが要件となる。
ビザを取得したら、次は日本側での手続きだ。税金面では1月1日から移住する日までの分を確定申告しなければならない。申告方法は、(1)出国の日までにその年の確定申告書を提出する(2)申告を代理で行う納税管理人の届け出をし、納税管理人が翌年の2月15日から3月15日の間に申告する-という2通りがある。また住民票は、海外転出の届け出をして住民票を抜いてしまうか、住民票は抜かないままの状態にしておくか、どちらも可能だ。抜かない状態だと住民税は発生するものの、国民健康保険に加入し続けることができる。
次に移住後の注意点をあげる。日本では居住者と判定されると、海外すべてで上げた所得が課税対象になる。183日以上海外にいれば非居住者になると思っている人は多いが、それは間違い。所得税法で居住者とは「国内に住所を有するか、1年以上居所を有する個人」で、それ以外の個人を非居住者と規定している。居所とは相当期間、継続して住んでいる場所を指す。
つまり、住所がなくても生活実態から総合的に居住者か非居住者かを判断される。とくに企業オーナーは気を付けてほしい。自ら給与や役職などを決定できるため、形式よりも実態を厳しく見られる。海外に住所を有し、1年の大半を海外で過ごしていても、家族が日本にいる場合や、役員に入っている日本の会社から給与を受け取っている場合などは、生活実態は日本にあると判断されかねない。
移住するときの注意はもちろん、移住後のフォローもしっかりと行う必要がある。(Sankei-Biz等より)
なお、フィリピンのSRRV(Special Resident Retiree's Visa)は、追加されて種類が以前より増えています。
①SRRVスマイル・・・35歳以上一律2万ドル(預託金の投資転換は不可)。
②SRRVヒューマンタッチ・・・35歳以上一律1万ドル(預託金の投資転換は不可)。
介護や療養を必要とする人が対象。月額1500ドル以上の年金を受給し、健康保険
などの医療保険加入が必要。
③SRRVクラッシック・・・50歳以上2万ドル(2007年以前は5万ドル)。50歳未満
5万ドル(2007年以前は7万5千ドル)。50歳以上の年金受給者は1万ドルで
預託金の投資転換は可。但し5万ドル以上。
詳しくは、フィリピン大使館・商務部等にお問合せください。
海外滞在や移住には、いろいろな方法があります。よく考えて行動して問題のおきないように、楽しく過ごしたいですね。