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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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日系自動車、現地生産離陸へ

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 フィリピンで自動車生産が立ち上がり始めた。三菱自動車が工場の新ラインを稼働し、タイから輸入している小型車「ミラージュ」を現地生産に切り替える。トヨタ自動車とともに同国政府の自動車振興策の対象となり、年3万台の生産を目指す。東南アジア諸国連合(ASEAN)ではすでにタイやインドネシアに自動車産業が集積。関税ゼロの域内から流入する輸入車に対抗するには、部品産業の裾野を広げられるかが課題となる。

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 首都マニラ南部のラグナ州。三菱自動車の現地工場で、既存の製造ラインの溶接工程を分岐して設けたミラージュ用ラインの最終調整が進む。20~30年前に投入した商用バン「L300」など2車種を1日50台ほど組み立ててきたが、今後はミラージュに絞る。
 
 敷地内では約100億円を投じたプレス工場の建設も進む。今年末にも稼働する予定だ。当初はタイから輸入する屋根やボンネット、トランクなどの大型部品を成型し、重量ベースで車体の50%の部品を現地で調達する。三菱自動車フィリピンの西洋祐・第一副社長は「鋼板が既存車種より大幅に薄く、高い技術力が必要になる」と話す。
 
 外部調達も増やす。1次サプライヤーとして約30社を認定。現地工場を持つデンソーなど日系メーカーのほか、大型プラスチック部品のマンリー・プラスチックスや車体部品のバレリー・プロダクツ・マニファクチュアリングなど地場勢、約10社から調達する。
 
 日本の部品メーカーも誘致した。ブレーキチューブを手がける臼井国際産業(静岡県清水町)は現地で倉庫を借り、新たに生産拠点を設けた。日本から部品を運び、最終工程である曲げ作業を技術者3人で手がける。

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 フィリピンの新車販売市場は急拡大している。2016年は前年比25%増の40万2,461台で10年前の4倍となった。ただ、伸びたのは輸入車が中心で、現地生産車の比率は26%に低下した。ASEANでは2010年、フィリピンを含む先行6カ国の域内関税をほぼ撤廃した。このためタイなどから完成車が流れ込んだ。
 
 比政府は輸入車拡大に伴う貿易赤字の削減と雇用の受け皿となる工場誘致を狙い、2016年に自動車生産振興策を導入。現地調達比率などの条件を満たした3車種に最大270億ペソ(約610億円)の優遇措置を講じることを決めた。対象となったのが、三菱自のミラージュとトヨタ自動車の小型セダン「ヴィオス」だ。

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三菱自動車が建設中のプレス工場(フィリピン・ラグーナ州)

 トヨタの工場ではヴィオスとミニバン「イノーバ」を組み立てており、2018年半ばから優遇対象となる新型ヴィオスを生産する。タイ製の車体部品を内製に切り替えるため大型プレス機を導入。運転席と助手席の間のセンターコンソールなどの現地調達も増やす。
 
 もっともエンジンなど基幹部品も現地で調達できるタイと違い、フィリピンで生産できる部品は限られる。比貿易産業省によると、車1台の製造コストはフィリピンが約170万円でタイより20万円近く高い。輸入部品のコストが全体の49%を占め、7%にすぎないタイとの差を生んでいる。
 
 現状では輸送費や人件費を考慮しても完成車を輸入した方が割安だ。三菱自やトヨタは現地調達拡大によるコスト低減や、最終的に1台あたり約10万円となる補助金で差を埋める算段だ。トヨタ自動車フィリピンの鈴木知社長は「フィリピンで生産した方がコストが低くなるメドがたちつつある」と手応えを語る。

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 この取り組みは、同じく自動車生産で出遅れるベトナムにとっても参考となる。ASEAN経済共同体(AEC)発足でベトナムは2018年に域内関税が撤廃され、タイなどからの輸入車に市場が席巻される可能性がある。米フォード・モーターが撤退するなど生産が縮小したフィリピンの成否は試金石となりそうだ。
 
 ただ、先行きは楽観できない。優遇措置の条件の一つが6年間で20万台の生産。ヴィオスの2016年の販売台数はすでに3万台を超えるが、ミラージュの販売実績は約2万台で達成は容易ではない。三菱自は販売店を48店から2020年までに70店に増やして顧客を取り込む。
 
 政府の対応もちぐはぐさが目立つ。税収確保などを狙い、2018年に新車物品税を引き上げる予定。販売減も懸念され「何のための振興策なのか」との声が上がる。政府は将来の自動車輸出をもくろむが、業界とは同床異夢の様相も呈している。(日経新聞等より)





 世界の自動車の市場規模は、中国、米国、日本、ドイツが上位を占めるが、2020年代前半には東南アジア全体で日独を抜くとみられている。東南アジアでは日本メーカーが強いが、経済成長を見越して欧米のメーカーも力を入れており、今後は競争激化が予想される。

 三菱自の2017年3月期の世界販売92万1千台のうち、東南アジア諸国連合(ASEAN)は20万6千台と約2割を占める見込み。同地域で輸出もするタイ(生産能力42万4千台)やインドネシア(16万台)に次ぐ、重要拠点としてフィリピンの生産態勢を整え将来の輸出も視野にいれている。

 三菱自動車は今年、フィリピンで4万2,000台を現地生産する計画だ。2016年は前年比46%増の2万2,008台で、1998年のアジア通貨危機以降で最高を記録。政府の「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」プログラム認定車である小型車「ミラージュ」の生産を開始した今年はさらに2倍を生産し、3万台超で過去最高だった1996年超えを目指す

 自動車産業は裾野の広い産業。フィリピン国内での雇用促進や、日系部品メーカーの同国への進出を促進する効果を期待したい。












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