いきなりですが、厚生労働省の簡易生命表によれば平均余命は、男性80.79歳、女性87.09歳です。パッと見ると、「まあそのくらい平均で生きれるって事」って捉えがちですが、平均余命っていうのは、下のHPを見ていただいたらわかるように、ある年齢の人があとどれくらい生きれるかの平均を推定したもので、男性の場合、例えば今70歳ならあと平均15年くらいは生きれる事を推定しています。女性なら今70歳ならあと平均19年くらい生きれる。
平均寿命は現在0歳の赤ちゃんがいつまで生きれるかって事で、つまり0歳の子の平均余命が平均寿命と同じと言えるわけです。だから平均余命と平均寿命はちょっと意味合いが異なります。
※平均余命(厚生労働省)
でも、健康寿命(平均余命から衰弱、病気、痴呆による介護期間を引いたもの)は、男性は71歳で女性は74歳くらい。まあいずれにせよ、女性は長生きですね。というわけで、先立つのは夫のほうが確率的には高いわけですが、仮に妻が先立つ場合の遺族年金を見てみましょう。
最初に寿命の話をしましたが、別に寿命の話がしたかったわけではなく、あくまで年金の話です。それにしても、夫が遺族年金受給者になる場合って実はそんなに多くはないです。
その原因としては、夫が遺族厚生年金貰う場合は妻が死亡時点で55歳以上じゃないと貰う権利が発生しないからです。共済組合からの遺族共済年金は55歳縛りは無かった。共済組合加入してる人は平成27年10月1日以降は被用者年金一元化により遺族厚生年金に統一されたので、この日以降の死亡の場合は遺族厚生年金として支給となります。しかも、受給するとなると60歳からしか支給開始しない。この辺は、父母や祖父母が貰う事になった場合も同じ。
そして、60歳から遺族厚生年金貰えるってなってもかなり年金額が低くて、結局夫自身の老齢年金もらった方がお得だったりして、遺族年金貰う機会が無かったりします。また、国民年金から支給される遺族基礎年金は、支給されるとすれば「子のある配偶者」、または、「子」の2通りの場合しか貰えない。
遺族基礎年金は55歳とかいう条件は無い。だけど平成26年4月改正までは、「子のある妻」、または、「子」にのみ支給だったから夫が遺族基礎年金を貰う余地はありませんでした。
子というのは、18歳年度末未満の子、または、障害等級1、2級(障害手帳の等級ではない)に該当する20歳未満の子を言います。
まあ、そんな夫が貰う場合が少ない遺族年金ですが、遺族年金請求する意味が無いかというと、今はそうとも言えない。
現在、老齢厚生年金の支給開始年齢が65歳に向かって引き上げられてる最中なので、60歳から貰える男性は居なくなります。例えば、今年60歳になった昭和31年4月2日以降生まれの男性の老齢厚生年金は62歳支給開始です。
※注意:65歳前から支給される老齢厚生年金を特別支給の老齢厚生年金といいますが、以下、老齢厚生年金に統一して話を進めます。
※厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
だから、夫自身の老齢厚生年金貰うまで無年金の空白が出来てしまうから、遺族年金額が少なくても請求するメリットが今後も高くなるでしょう。
また、老齢厚生年金貰いながら厚生年金に加入して、それなりに給与を貰うと老齢厚生年金がカットされるし、失業手当貰うようにしちゃうと65歳前の老齢厚生年金は全額支給停止になります。でも、遺族年金はそういう制限は無く、普通に貰える。そして非課税。この辺の制限無しは障害年金も同じです。
事例で説明します。
ア.昭和35年8月生まれの夫(今56歳)。
この人は支給開始年齢である64歳から老齢厚生年金を800,000円支給される予定とします。65歳からは老齢基礎年金600,000円も支給開始とします。
イ.妻は昭和40年2月生まれ(今52歳)で、今月厚生年金加入中に死亡。
厚生年金加入期間は、平成25年4月から死亡日の属する月の前月までの平成28年10月までとして47ヶ月。この間の平均給与は200,000円だったと仮定(平均標準報酬額)。
それ以外の年金記録はとりあえず22歳結婚時からずっと夫の扶養だったとします。(国民年金第3号被保険者としてずっと国民年金保険料納付済み)。子供は2人で23歳と16歳。16歳の子は平成12年6月生まれ。
それで、夫はいくらの遺族年金が貰えるのか。
(平均標準報酬額200,000円÷1000×5.481×47ヶ月)÷47ヶ月×300ヶ月÷4×3=246,645円(月額20,553円)
※注意:厚生年金加入中の死亡だから43ヶ月ではなく300ヶ月で計算する。ちなみに、中高齢寡婦加算585,100円は付かない。中高齢寡婦加算は女性だけに加算されるものです。・・・・・・これが夫には付かないから遺族厚生年金が低額になりがちというのもありますね。
また、18歳年度末未満の子が1人いるので、遺族基礎年金780,100円+子の加算金224,500円=1.004,600円(月額83,716円)も支給される。
なぜ、厚生年金加入中の死亡なのに、国民年金から遺族基礎年金が出るのかというと、厚生年金とか共済組合加入中は国民年金にも加入している状態だからです。
だからといって二重に保険料を支払っているわけではなく、厚生年金加入してるなら厚生年金保険料だけ支払う。国民年金から支給される年金には主に「基礎年金」という用語が付きます。
よって、夫は遺族厚生年金246,645円+遺族基礎年金780,100円+子の加算金224,500円=1,231,245円(月額102,603円)貰える。
「あれ?遺族厚生年金は60歳まで貰えない」って言ってなかった?と気付かれたかもしれませんが、18歳年度末未満の子が居て遺族基礎年金が支給される場合は例外として60歳前から貰えます。ただし、この16歳の子が高校卒業の18歳年度末(平成31年3月分→2019年3月分)までの支給となります。
だから下の子が高校卒業の翌月の平成31年4月分から遺族年金は全額無くなって、夫が60歳になるまで(平成32年8月)停止となり、平成32年9月分から遺族厚生年金246,645円(月額20,553円)は再度支給開始となります。
まあ、夫自身の老齢厚生年金は64歳からの支給なので、その間は遺族厚生年金を貰いつつ、64歳になる平成36年8月に年金事務所で、遺族厚生年金から夫自身の老齢厚生年金800,000円に切り替えると良いですね。
ちなみに65歳前に、このように老齢年金とか遺族年金のように複数の種類の年金の受給権を持っていても、男女とも一人一年金の原則があり、複数の年金を貰う事は出来ずどちらか一方しか受給できません。
同じ類の年金なら同時受給が出来ます。例えば、老齢厚生年金と老齢基礎年金、遺族厚生年金と遺族基礎年金、障害厚生年金と障害基礎年金とかです。
受給する年金の切り替えの手続きは選択申出書を年金事務所に出し、申し出た月の翌月から自分が選んだ年金を受給する事になります。申し出た月の翌月分から変わるので、手続きの時期に注意してください。
それで、65歳になると、夫は遺族厚生年金と老齢厚生年金、老齢基礎年金を併給する形になりますが、65歳以降の受給の仕方はまず夫自身の老齢厚生年金800,000円を先に貰った上で、もし遺族厚生年金が老齢厚生年金を超えればその差額が遺族厚生年金として支給されますが、遺族厚生年金は246,645円ですので遺族厚生年金を貰う事はできません。つまり、老齢厚生年金800,000円を超える遺族厚生年金額でなければ、遺族厚生年金は貰えない。
参考に、もう一つの計算式として、(遺族厚生年金246,645÷3×2)+(夫自身の老齢厚生年金800,000円÷2)=564,430円(←合算額が遺族厚生年金額)と算出する事も出来ますが、結局老齢厚生年金800,000円>遺族厚生年金564,430円になるので結果は同じです。
よって65歳以降は夫自身の老齢厚生年金800,000円+夫自身の老齢基礎年金600,000円の受給となります。
※追記:妻死亡時に仮に夫が55歳未満であった場合は、夫は遺族厚生年金を貰う権利は発生しません。事例の夫は18歳年度末未満の子がいるので、遺族基礎年金と子の加算金のみを夫が受給します。
しかし、遺族厚生年金は配偶者である夫には貰う権利自体が無いので、代わりに18歳年度末未満の子が遺族厚生年金を受給する事になるのでご留意下さい。
遺族厚生年金は、原則として死亡者から生計維持されてる配偶者、子(18歳年度末未満)、父母、孫(18歳年度末未満)、祖父母の順で、最優先順位者が受給する事になりますが、配偶者と子は同じ第一順位者。配偶者が受給してる間は子の遺族年金は停止してるだけです。配偶者や子が受給権を獲得すると、その時点で父母、孫、祖父母の順位者は権利が消滅します。(MAG2NEWS等より)
平均寿命や平均余命をみても男女差はあるのでこの確率は少ないが、ゼロでは無いので参考にしておいてください。まだ全てではないが男女平等が進んできています。でも、年金に関しては、逆に夫が不利になるものが所々に残っています。