厚生年金加入期間が20年以上ある人は、自分が65歳になった時に生計維持している65歳未満の配偶者が居れば、年金が65歳時に390,100円(月額32,508円)アップする場合があります。390,100円は「配偶者加給年金」と言います。
生計維持というと扶養されてるって意味で捉えがちですが、ちょっと年金に関しては違います。簡単に言えば住民票が同じ(事情により別居になってても良い)で、配偶者の前年収入が850万円未満なら生計維持されてると認められます。
人にもよりますが、だからできる事なら厚生年金期間を20年以上になるよう働いたほうがいいかもしれないですね。ちなみに共済組合期間が20年以上であったり、共済組合期間と厚生年金期間併せて20年以上ある場合でも構いません。
20年以上の厚生年金期間等がある人はそうやって65歳になると配偶者加給年金で年金が大幅に増えたりしますが、自分だけでなく配偶者自身にも厚生年金期間や共済組合期間が20年以上ある、もしくは厚生年金期間と共済組合期間併せて20年以上ある年金を貰い始めると配偶者加給年金が停止されてしまいます。
つまり、夫婦両者共に厚生年金期間が20年以上みたいな形だと原則として配偶者加給年金は停止してしまうわけです。
これは、配偶者が厚生年金期間20年以上もの年金貰うなら、配偶者加給年金付ける必要無いでしょうという考えです。ちなみに配偶者が障害年金貰えるようになっても配偶者加給年金は停止します。
ちょっと例で考えてみます。なお、65歳前から貰える老齢厚生年金は特別支給の老齢厚生年金と言いますが、この記事では老齢厚生年金に統一して話を進めます。一応夫が配偶者加給年金貰える場合で書いていますが、妻に置き換えてもらっても構いません。ただし、男性と女性では厚生年金の支給開始年齢が違うのでそこは気をつけてください。ちなみに共済組合は男女とも支給開始年齢は、男性の厚生年金の場合と同じです。
ア.昭和29年2月5日生まれの夫(来月63歳を迎える)。厚生年金期間250ヶ月、国民年金保険料納付済期間180ヶ月とします。この夫がちゃんと年金請求してるなら既に61歳(平成27年3月分から支給開始)から老齢厚生年金を受けています。夫が65歳になるのは平成31年2月。
イ.配偶者である妻は昭和35年5月12日生まれ(現在56歳)。厚生年金期間235ヶ月で国民年金保険料納付済期間100ヶ月とします。この妻が自分自身の厚生年金を受けるようになる時期は62歳になる時。妻が65歳になるのは平成37年5月。夫とは同居。
※厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)
さて、夫は厚生年金期間が20年以上あるので夫が65歳になる時(平成31年2月)の翌月から、配偶者加給年金が夫自身の老齢厚生年金に加算されるようになります。いつまで配偶者加給年金が付くかというと、妻が65歳になるまで。
だから、妻が65歳になるのが平成37年5月なのでこの平成37年5月分までは配偶者加給年金が貰える。ただし、この間までに離婚とか妻が亡くなる等しなければです。
※尚、離婚等して配偶者加給年金が消滅した後に65歳未満の配偶者と再婚しても、配偶者加給年金が復活する事は無い。配偶者加給年金が付くかどうかの判断をする時点である夫が65歳を迎える平成31年2月4日(誕生日の前日)時点で65歳未満の配偶者が居るかどうかで判断されます。
ただし、障害厚生年金2級以上の受給権者に付く配偶者加給年金は再婚しても再度付き始める(平成23年4月改正)。障害厚生年金に付く配偶者加給年金は390,100円ではなく224,500円です。金額が異なっているのは、老齢厚生年金には特別加算165,600円が上乗せされているからです。
さて、平成37年6月に配偶者加給年金は消滅。配偶者加給年金は妻自身が65歳になると通常は老齢基礎年金が支給される年齢だから消滅して役割を終える。いきなり390,100円(月額32,508円)もの年金が減ってしまう。だけど、妻が老齢基礎年金(満額なら780,100円)貰い始めるから、夫婦合わせての年金収入で見れば総額は上がる(妻の年金保険料納付状況によっては下がる事もある)ます。
ちなみに、妻は昭和41年4月1日以前生まれの人だから、平成37年6月以降は妻の老齢基礎年金に振替加算というものが加算される。
※振替加算額(日本年金機構)
振替加算は配偶者加給年金の置き土産みたいなもの。振替加算は妻自身の生年月日により、支給額(定額)は異なります。
妻は昭和35年5月生まれだから上のリンクを見てみるとわかるように年額20,879円(平成28年度価額)。この振替加算は妻のものだから、途中離婚しようが、夫が死のうが生涯もらえる(一部例外除く。例外は記事の最後に記載)。
なお、妻が65歳になる前に離婚しちゃうと振替加算は付かない。だから離婚するなら65歳以降にしましょうみたいな話があったりするわけです(笑)
さて、記事の冒頭で配偶者自身にも厚生年金期間が240ヶ月あると、加給年金は支給されない(停止する)と言いました。上記の例の妻は235ヶ月の厚生年金期間があります。このままだったらいいんですが、また厚生年金加入したりして240ヶ月に到達してしまうとどうなるのか。
妻は昭和35年5月生まれで62歳から老齢厚生年金が貰えるようになります。妻が62歳になる年は、平成34年5月。もし、この平成34年5月以降も引き続き厚生年金に加入したり、また新たに厚生年金加入したりして、240ヶ月に到達するとどうなるのか。
老齢厚生年金は年金を貰う権利が発生する62歳(平成34年5月)の前月である4月までの期間235ヶ月で計算し、翌月6月分から年金が発生し支給を開始します。
※6月分から年金が発生するから、8月15日が初回支払い。年金は偶数月に前2ヶ月分を支払うもので、受給権が発生する月分の年金は貰えないです。
でも、平成34年5月以降も引き続き厚生年金に加入し続けた場合だと、平成34年9月で240ヶ月になっちゃいます。夫に付いている配偶者加給年金は停止してしまうのかというと、実は妻が厚生年金加入中に240ヶ月以上になっても夫の配偶者加給年金は停止しません。普通に加給年金貰えます。なぜなら、今現在、妻が貰っている老齢厚生年金は235ヶ月分だからです。
それじゃあ235ヶ月以降も厚生年金加入した分はいつ貰えるのかというと、それは妻が65歳になるか、妻が65歳になる前に退職して退職日から1ヶ月経過した日を迎えると年金が再計算されます(退職改定という)。退職日から1ヶ月経過しない間に再就職して厚生年金に加入すると再計算しない。
※尚、厚生年金は70歳まで加入できますが、65歳以降の厚生年金加入分は70歳到達時に再計算するか、70歳までに退職したなら退職した日から1ヶ月経過した日の属する月で再計算処理に入ります。
例えば妻が62歳になる平成34年5月以降も厚生年金に加入し、平成36年3月31日で退職した場合(この間23ヶ月加入)は1ヶ月経過した日である平成36年4月30日に年金額の再計算処理に入り、平成36年4月分の老齢厚生年金から235ヶ月に23ヶ月プラスした258ヶ月の老齢厚生年金を貰う事になります。つまり、この平成36年4月から夫の老齢厚生年金に付いている配偶者加給年金は停止する事になります。
でも、65歳前に退職してるから、妻はハローワーク行って雇用保険から失業手当が支給される場合があります。失業手当を貰うとなると、65歳前の老齢厚生年金は全額停止となります。もし仮に、4月にハローワークに失業手当の申し込み(正確には求職の申し込みという)をすると、5月分からの老齢厚生年金は全額停止します。
何が言いたいかというと、夫婦共に厚生年金期間が240ヶ月以上の老齢厚生年金を貰えて配偶者加給年金が停止されてしまうとしても、妻の老齢厚生年金が全額停止という状態になると、夫の停止されるはずの配偶者加給年金は停止解除となり、妻の老齢厚生年金が全額停止している間は配偶者加給年金が夫に支給され続けます。だから、妻が失業手当を貰っている間は夫の配偶者加給年金は支給されるわけです。
そして、妻が65歳になる平成37年5月の翌月である6月から、普通なら振替加算が加算されるものですが、妻自身に240ヶ月を超える厚生年金期間があるから振替加算は貰えないことになります。
※配偶者加給年金で言う配偶者は、必ずしも入籍してる必要はありません。事実婚関係が認められれば支給されます。また、遺族年金を配偶者が請求する場合も特に入籍してる必要はありません。まあ、入籍してないと相続等の他の面で不利になる事はありますが・・・・・。(MAG2NEWS等より)
配偶者加給年金は、配偶者が65歳になるまで貰えますから、若いほど長く貰えることになります。フィリピン在住者の人は、厚生年金の加入期間20年以下の若い嫁さんが多いようですから、厚生年金を貰っていたなら振替加算は加算されませんが、配偶者加給年金は長く受給できるようになりますね。