フィリピンで大学入学前の基礎教育期間を、これまでの10年から「世界標準」の12年に延長する制度改革が、今年6月の新学期から全面的に導入された。学力向上への期待が高まる一方、家計への負担から中退者増加も予想され、不安を抱えた船出となった。
フィリピンでは従来「小学校6年、高校4年」が基礎教育期間で、日本の高校2年生に相当する年次で大学に進学し、20歳で大卒者となっていた。教育省のヘスス・マテオ次官は「人材の国際競争力を確保するためにも、世界標準に合わせる必要があった」と教育内容の充実が狙いと説明する。
改革はアキノ前大統領が主導。2013年に新法が成立し、幼稚園最終年と「小学校6年、中学校4年、高校2年」が、公立校であれば授業料無償の義務教育となった。
しかし、制服や一部の教材、交通費などは自己負担。国民の半数が「自分は貧困層」と称する同国では、家業手伝いなどの理由で中退者も多く、政府統計によると義務教育を修了できない生徒は25%を超える。基礎教育期間の延長で、中退者のさらなる増加も予想される。
「本当なら私はもう大学1年になっていたのに」。マニラの公立マグサイサイ高校に新設された「11年生」のアンビー・レセギスさん(16)は戸惑いも見せる。大学を出て働き始めるのも2年遅れるため「両親は困っている」と話す。
約5,000人が在籍する同校では以前から教室不足が深刻だったが、学年増で早朝、午前、午後の3シフトで授業を回すようになった。ルイス・タガユン校長は「都市部では交代制での授業が当たり前になってしまっている」と設備や教員の不足を嘆く。
フィリピンの人口約1億のうち4割強が18歳未満。11年生学級を新設できなかった公立高も多い。政府は私立高に通わざるを得なくなった生徒らの授業料を無償化するため補助金も支出。マテオ次官によると、教育省の今年の予算は10年比約2.5倍の4,330億ペソ(約9,093億円)に急増した。
対応に追われているのは大学も同じだ。移行期の今年、大学に進む新入生は原則「ゼロ」。国立フィリピン大には例年、全国から約1万3,000人が入学するが、今年は一部の高校で先行試験導入された12年制経験者の約1,500人にとどまった。
「2年間も新入生が来なければ、教員らの雇用を確保できない」(私立サムソン大のシクスト・カイプノ副学長)と高等部を新設する私立大もある。
一方、大学教員にとっては比較的余裕ができる2年間となるため、政府は教員らに修士・博士課程への挑戦を奨励し、学費も補助。移行期を有効活用して、教員の質向上を狙っている。(Sankei-Biz等より)
フィリピンの「K12」、高校は教室や先生の確保。大学は新入生が入ってこないなど混乱もあるようだ。
子供にとっては教育が充実して良いことだが、自己負担の分もあるので、家計が圧迫されて中退者が増えるのが懸念される。