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Channel: フィリピン・ネグロス島(主にバコロド)の話
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日本の新鮮で安い野菜の輸出へ

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 博多湾に浮かぶ福岡市東区の人工島(アイランドシティ)で2月、九州最大の取引量を誇る新青果市場が開場し、取引が始まった。
 
 かんしょやキャベツ、大根、白菜、イチゴ……。真新しい倉庫から野菜や果物が入った段ボール箱がフォークリフトで次々と運び出され、トレーラーに載ったコンテナに詰め込まれた。
 
 箱には「輸出」と書かれたシール。コンテナは博多港で船に積み込まれる。向かう先は香港だ。数日後に荷揚げされ、スーパーの売り場に並ぶ。
 
 輸出を担うのは、昨夏に設立された九州農水産物直販(福岡市)。九州の農産物輸出を拡大しようと、地元財界の九州経済連合会が主導し、JA宮崎経済連やJR九州などが出資して発足した輸出商社だ。そこの羽田正治社長は「国内の人口が減る中で農業を持続させるには海外への輸出が不可欠。アジアに近い地の利がある九州は、アジアの食料庫にもなれる」と意気込む。
 
 香港のスーパーと契約し、昨秋に輸出を始めた。博多港から週に1便ほどのペースで香港へ運び、「九州市場直送」の看板を掲げた青果売り場の常設コーナーで約30品目を売る。
 
 韓国産やマレーシア産の安い野菜も並ぶなか、九州産は品質が良く、果物やかんしょ、ホウレン草などは仕入れるたびに売り切れる人気という。4店舗で始めたが、現在は16店舗に拡大。今秋にはシンガポールへの輸出も予定する。
 
 傷みやすい葉物野菜や果物を輸出するには、短時間で運べる航空便を使うしかなかった。運賃が船便の約10~30倍と高く、店頭価格も高くなるのが難点で、販路はこれまで富裕層向けに限られていた。「輸出拡大にはボリュームゾーンの中間層が手の届く値段にする必要があり、運賃を抑えられる船便を使うことを考えた」と羽田社長は話す。
 
 青果物は、収穫後も酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す「呼吸」を続ける。その際に糖分が失われ、時間の経過とともに品質が落ちる。どうすれば、時間がかかる船便でも鮮度を落とさず運べるか――。仕入れや輸送を任されている卸売会社の福岡大同青果(福岡市)は、海運大手の日本郵船(東京)に相談した。
 
 同社は青い状態のアボカドやバナナを船便で運ぶのに使われる「CAコンテナ」に着目した。通常の冷凍コンテナに、室内の空気の成分を調整する機能をつけたもので、室温を下げると同時に、窒素が8割弱、酸素が約2割を占める空気の成分を、窒素9割以上、酸素と二酸化炭素約5%ずつの比率に変えられる。
 
 こうすることで青果物の呼吸を抑えて「冬眠状態」にし、2週間程度は鮮度を保つ。運賃は航空便の10分の1程度に抑えられる。
 
 たとえば、イチゴの「あまおう」。国内で1パック600~700円するものを航空便で送ると、香港での販売価格は約2千円になる。CAコンテナで運べば1千円ほどに抑えられる。
 
 ただ、問題もあった。鮮度が落ちやすい葉物野菜やイチゴを運ぶには、アボカドやバナナより早く「冬眠状態」にさせる必要があり、既存のCAコンテナはそのまま使えなかった。葉物野菜などをCAコンテナで輸出した例もなかった。
 
 荷主にとっても船会社にとっても初めての挑戦を、空調機器メーカー最大手のダイキン工業(大阪市)が技術面で支えた。
 
 ダイキンはCAの機能を備えた倉庫を40年前につくっていた。農産物を運ぶコンテナに関する相談が増えてきたため、3年前に研究を再開。ゼオライトという鉱石に空気中の窒素だけを吸着させ、コンテナ内に窒素だけを送り込んで青果物の呼吸を抑える技術を確立した。その際に使う小型ポンプは医療用酸素ポンプの技術を転用してつくった。
 
 葉物野菜などを運ぶにはコンテナ内の湿度を高く保つ必要もある。主力のエアコン「うるるとさらら」の技術を生かし、空気を冷やしながら湿度を保つ装置も開発。自前の技術をフル活用して新型のCAコンテナをつくり上げた。低温事業本部の水谷和秀グループリーダーは、「様々な部署の力を借りて完成にこぎ着けた」と胸を張る。
 
 日本郵船の研究開発子会社のMTI(東京)はCAコンテナを輸出拡大を支える「切り札」に育てようと、農業関係者に活用を提案するコンサルティングを展開している。各地で実証試験を繰り返し、作物に応じた最適な温度や湿度、酸素濃度の研究もしている。
 
 港に置いたCAコンテナで青果物を貯蔵する試験を茨城・栃木・群馬3県と昨年度に開始。シンガポールやマレーシアに運んで品質も確認した。「結果は上々」(茨城県農林水産部)で、5月15日からタイに茨城県産メロンの輸出を始めた。東京都や愛知県豊橋市とも試験を重ねる。環太平洋経済連携協定(TPP)が署名を終え、輸出拡大の機運が高まる中、自治体からの問い合わせも相次ぐ。
 
 長崎ちゃんぽんのリンガーハット(東京)は昨年末からCAコンテナで週に1便、タイの4店舗にキャベツを送っている。現地で調達した食材とは「野菜から出る甘みが違う」(広報)といい、今後国産のタマネギなども送る方針だ。JA全農も全国のJAから農産物を集めてCAコンテナでアジアに輸出する計画で、7月にモモをシンガポールにテスト輸送する予定だ。
 
 MTIの田村健次取締役は、「今は香港やタイ、シンガポールが主な輸出先だが、技術が進歩すれば中東や欧州にも運べる」と夢を描く。(朝日新聞等より)





 外国に居ても品質の良い日本の野菜が、手ごろな価格で購入できるというのは有り難い。関係者の努力に敬意を表したい。そして、フィリピンにも届くことも願いたいものだ。












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